記憶力と目が悪い子息
驚きました。
一年以上お会いしなかった間に、婚約者様は私のことをすっかり忘れ果てておいででした。
ショックで言葉に出来ず佇んでいる私に気が付いたスコット公爵様から、「バーバラ嬢、一年会わない間に随分と綺麗になったね」と、お褒めにあずかりました。スコット公爵様から出た名前によって、私が誰なのか漸く気付かれた婚約者様は更に
「はぁ~~~~~~? お前があの『豚』か? 変わり過ぎだろ? なにか変なもんでも食べたんじゃないだろうな?」
婚約者様は私が拾い食いでもすると思っているのでしょうか?
「それともあれか? 今、女の間で流行している『魔法のサプリメント』というやつか?」
なにやら盛大な誤解をされていらっしゃいます。
確かに、最近、痩せることで定評にある「魔法のサプリメント」です。豆のような大きさの粒状のもの。1粒飲むだけで劇的な効果があると評判ですが……。
「あんなものに頼るなど、貴様は努力をせん女だな!」
いえいえ。努力で得たものですよ?
「まったく。それでも前よりはマシになったようだから、その心意気に免じてやろう… <<バキッ!!!>> …」
そうして再び始まる壮絶な親子喧嘩。
一年前の再現再びです。
「お前は <<ドカッ!>> いったい何様のつもりだ? <<ドカッ!>> ああ? <<ドカッ!>> バーバラ嬢が <<ドカッ!>> お前の不要な言葉のせいで <<ドカッ!>> 過酷な体重減量に励んでいると <<ドカッ!>> 何度も何度も話しただろう <<ドカドカッ!>> 何が薬に頼っただと? <<ドカッ!>> お前の耳はなんだ? <<ドカドカッ!>> 飾りか? <<ドカドカドカッ!>> ん?」
一年前以上にボロボロにされた婚約者様は、公爵様の
平謝りする公爵様には申し訳ありませんが、どうやら婚約者様は記憶力と目が大層お悪いように思われるので、
「お父様にお伝えすれば、直ぐにでもいい病院を紹介してくださいます。私から病状を伝えておきましょうか?」
と聞いみたところ、
「い、いや、公爵家にも主治医がいるから大丈夫だよ」
と断られてしまいましたわ。
よく考えれば、公爵家が懇意にしている医師らもおりますものね。主治医もいらっしゃるでしょうし。婚約者同士といえども伯爵家が口出しすることではありません。かえって失礼な事を口走ってしまいましたわ。いけません。反省しなければ。
けれど……公爵様は何故か震えていらっしゃいました。
どうしたのでしょう。
冷え性なのでしょうか?
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