第57話 理想郷
バースは焦っていた
あとは自らが3710を乗っ取ればいいだけの計画が再び狂い、最悪の状況となっていた。
最も強い魔力の増幅器が手に入れば終わりだったのに、出来なくなった。
「何故、あんなものに!!」
魔法袋の中身が少なくては『操るための装置』がどう足掻いても発動しない、今の状況を古い例えでするならばスマホを持っていない人間にメッセージは送れない状況である。
「だが、それもここまでだ」
3710の国に親しい二つの国を争わせた、大量に人が死ねば国民は不安になり、王妃のせいで動けない王に責任の目を向け、愛などという下らない物より国民を優先するだろう。
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テレポート機能にも限界がある、というよりデカデカと原子力発電でも出来れば別だったが莫大なエネルギーを消費するため連発はできない、そんな中で3710の体内に仕込んでおいた盗聴器が不調になり状況が掴みにくくなっていた。
「何が起きている?」
調べてみれば、魔力風の影響で装置と繋がりにくくなっていることが分かった。
数日で回復したので聞いてみれば、ゼルが再び邪魔をしようというのだ。
そこで、王妃とゼルをまとめて始末する方法を思いついたのだ。
着弾地点に大穴をあけ、さらにその向こうの人間に毒をうちこめる旧世界の兵器を使う。
脳みそを潰せば確実にしとめられるが、その場合爆発が大きすぎて3710に仕込んである盗聴器も壊れる恐れがあったため心臓を狙ったのだ、呪いの毒はなのに
「何故、この世界に外科医などいる!?」
治療といえば魔法、魔法でも無理なら死
それが世界の常識でありいるはずのない者
赤外線装置も移植パーツもない世界で信じられないと頭を抱えた。
盗聴器が取り出されてしまった、これでは向こうの状態が分からない。
だが、問題になってるクローンの方は呪いにより動けない、ますます役立たずの姫として国民には広がるだろう
とどめとして、ロボットを使った
旧世界の連中にはどれほど人の命を奪えるものか、それぐらい理解できるだろう
それなのに、何故こんなにも国民が立ち上がっているのだ
ロボットから送られてくる映像は各国の兵士たちが並んでいる
魔王がいれば、魔王の力で解決するのに命をかけるなど馬鹿のやる事だ
「どうなって、いるのだ?」
現実は大群がロボット兵と戦闘している
「……最低な政治家バースディン」
振り返ると、拷問で弱らせたはずの人質が言葉を発していた
「何故、俺がバースディンだと?」
「弱者を切り捨てろと、国の為に必要ないものは死刑にするべきだと主張し、挙句の果てに息子を殺した」
「人類が生き残るには余分なものに使う資源も頭脳も邪魔だ」
「どれほどの人々が、我が親を子供を!守る為に戦っていたか!弱き年寄りは誰かの親、弱き幼子は誰かの子、人は見捨てて先へなどいけないんですよ」
口から血を吐いた、内臓を切っているから当然の結末である
「だが、所詮この世界の住民だ」
魔法が使えても、銃撃が始まればとロボたちに射撃の命令を出した
愚かな国民共は驚くほど巨大なシールドの魔法を貼ってこれを防いだ
「なっ!?」
「はは、ざまぁみろ悪党」
蹴飛ばした、ようやく動かなくなる
人質などもはや意味を成さない
殺そうと銃を向けた
ーーーーバン!
それは銃が発射された音では無かった
天井が崩れたのだ
「無茶苦茶な作戦すぎるでしょーよ!」
「すまんフリル!」
あるはずがない、現実
ここは『魔法風に守られた谷底』で魔法での飛行に失敗すれば谷底に叩きつけられて死ぬ
「イチ!生きてる!?」
「どうにか」
だが、3710がここにいるのならば全てはどうでも良いことだった
「日本を、復活させる!」
3710を操るためためのスイッチを押す、これで何があろうとも勝利である
だから、胸に突き刺さる剣は幻だ
そんな訳がない、刃など私に効かない
どうして胸が痛いのだ
「え?」
バースディンは、死ぬ時になっても訳が分からずにただ床に倒れていた
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