第22話 善悪
『見張っていましたが、王妃と二人きりになる様子はありませんでした』
『チッ、新婚で浮かれているかと思ったのだがな』
『城に兵士をいれておきましょう、旅人を雇う事もあるそうですから』
『妃に媚薬を盛れば、あの魔王は手をだすのでは?』
魔王に怨みを持つ者たちが、物陰で密やかに会話していた。
だが物陰という言葉とは裏腹に何とそこは『妃の部屋』の裏手である。
「……あいつらっ」
「抑えて下さい、情報が逃げる」
彼らがそこで会話するのも無理はない、魔王の部屋からそんなに近くもなく
倉庫の隣という人はあまり来ない場所なのである。
気配がなくなるまで待ち、今後について話し合いが始った。
「今日はしないで下さいね?せめて明日にして下さい」
「え」
「うん、僕もそう思う」
「他の奴に抱かせるって選択も……あーはいはい、無しなんだな!」
怒りで魔力が膨れ上がって、地面に亀裂が走った
目から血が流れている。
「城に沢山敵がいる今は不味いですよ、当分の間は兵力の増強を主だって動くべきでしょうね」
「6155の意見は最もだけど、イチの奴が決めた方がいいんじゃねぇか?」
「イチさんは内部の事で動くべきですから、そもそも『兵士長』の私が決定して事であれば納得してくれますよ」
「兵士長!?」
「あれ、王妃様にまだ言ってませんでしたね」
「そういえば誰も兵士長って呼ばないなうちの兵士……」
「魔王様が強すぎて兵力がほとんど必要無かったのも我が国が発展した理由ですからね」
ドタバタと走る音が近づいてきた、皆がドアを警戒した
突然入って来た男はただの兵士で
『たいへんです!』
「何事だ?」
『ゼルディンと名乗る者がッ、現れたんです!』
6024はその名前を聞いたことが全く無かった
だが魔王含めその場に居合わせた者たちは驚きの声をあげていた。
「ぜっゼルディンが!?奴はミナトに殺された筈だろ!!」
「俺もそのつもりだった、兵士、その者は何と?」
『結婚祝いを王妃に持ってきただけ、だと』
「ねぇ6155?ゼルディンって誰?」
「せめて魔王様に聞いてあげてください、頼りないみたいですよ」
「……」
「魔王様」
「ゼルディンというのは、この世界にいる科学者だな」
「科学者!?」
車もないような世界に科学者がいるのかと驚きの声だった
「国中に毒をばら撒き、治す為の薬を売りさばいて冨をえて、集めた資金で『人体実験』していたクソ野郎だな」
「ふーん」
「おいおいリアクションが薄いな、規模が大きくてどんだけ悪い事か分かんねぇのか姫様は?」
「この世界だと、悪い事になるの?ああそっか、人間だと不味いか」
クローンに人権が無い世界では、人間の代わりとしていくらでも実験に使われた
薬や臓器を作るのに消費されていくクローン
存在しないこの世界であれば人でやるしか無いのでは?と不思議そうに周りを見る
「……ええ、そうですね」
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