第4話 隣人もクローン
常識が何も通用しない『食事』がおわって、部屋に戻って来た。
「はい魔王様、質問」
「何だ?」
「このベッドはどこにプラグがありますか?」
「無い」
「どうやって疲労を回復するの?」
ベッドが疲労を回復するものだとは分かっている
しかし『首につないで疲労を吸収する為の装置』がどこにも見当たらないのだ
「それは、夜に教えてやる」
「分かった」
「今はこれを」
紙の本を預かった
「ええと?」
「何人もくればマニュアルぐらいあるさ、また夜に来る」
マニュアルを読むこと3時間で窓の外はそろそろ夕日になってきた。余計そう感じるのは空に飛行物体が無いのがやはり大きい。
「んー!」
木の扉を叩くノックの音がドンドンと聞こえた。
「入っても?」
「どうぞ」
「お邪魔します」
自分と同じ顔をした『勇者』が部屋に入る、クローンの6000番台は皆同じ顔をしている為に驚きは特に無い。
「私は6155です、隣の部屋で暮らしています」
「僕、6024」
「えっ」
6155が驚くのも無理はない
何故、頭が良い6024が欠陥品なのか?その答えはこの『話し方』にある
「変だよね、僕の喋り」
「エラーの方とお会いするのは初めてですが、その教育プログラムは愛玩用では?」
「そうだよ、僕は『BOKU―A・PET3』で教育されてる」
愛玩用の意味は『玩具』であり、人間と違って何をしてもいい事からブームだった。
またレンタル品であれば小銭で抱く事も可能である。
実際オリジナルで様々なクローンに色々な教育プログラムを施すというのは日常的でありそれが純正の工場品でなければそれなりに普通の事であった。
だから、金を稼ぐ事が出来たのだ。
「……」
「嫌われちゃった、かな」
「いえ、もし『前世の仕事』を続けるのであれば相談して下さい」
「出来るの?」
「ええまぁ、それも選択肢の一つですね」
「禁止されてないなら、考えとく」
「今の所困った事などありますか?」
「魔王様がベッドのプラグが無い事について今晩教えてくれるらしいんだけど、もしかして『仕事』頼まれる?」
その問いかけに、6155は顎に手を当てて考えた。
無論この世界にも娼婦はいる、男は珍しいがいない訳では無い。
かといって大手を振っている仕事でも無く、この世界で『勇者』がそんな事するのはもっと前代未聞である。
理由はそれなりに単純で、上級モンスターの討伐をすればもっと簡単に金が稼げるしそうでなくても仕事の選択肢は山のようにあり元クローンの『勇者』たちは皆『同じ量の仕事』がこなせる為にどんな仕事であれ雇いたがる者も多い。
6155は実の所、もし娼婦のマネしか出来ないからと身体を売るようであれば自分の専属手伝いになって貰い『止める』つもりだった。
が、相手がもし魔王様なのであれば話はかなり変わってくる。
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