クローン人間が異世界転生して魔王に愛された
宝者来価
第1話 近未来の廃棄クローン
「もう少し、生きていたかったなぁ」
「あがきます?」
「いいや、最後は自由に僕たちで締めくくりたい」
2XXX年の日本、世界は技術が大きく進歩して人々の生活は豊かになり、そして光あれば当然そこに影はできるもので開発による汚染やロボット犯罪などがうきぼりとなって問題視されていた。
『クローン奴隷』は最初は反対するものの声もあったのだが、政治家や働き手が安く雇えるとあっというまにブームになった。
空のスクリーンに浮かんでる映像は『大人ならクローンを持っていないのは恥ずかしい』というコマーシャルであり街を見渡せば『安いクローン仕入れました』なんて広告も存在した。
「行きましょう」
「うん」
そんなクローン奴隷の上位互換として『教育済みクローン』が発明された。
だがどんな物でもエラーはつきもので、彼らも教育に失敗したクローンで他の個体よりも身体や知能が劣る『品』だった。
それでも凡人からみれば賢く、職員の目をかいくぐり廃棄として燃やされる前に施設を脱走したのだ。
「超電動カーが旧型とはいえ追跡されますから、ここからですね」
「安全の確保が出来るまでは、とにかく人目につかない場所に行こうか」
「人目にはついて大丈夫ですが、センサーのほうが厄介ですね」
「センサーの無い道を選んで進めば、開発されてない田舎にいけるかな」
こうして、どうにか『ド田舎』へたどり着いた。
なんとまだ車が地上で走っている、古の都市だ。
人工警備ロボットなどもかなり少なく条件は十分と言ってよかった。
「どうにかお金、手に入ったね」
「飲料と栄養を確保しましたので、接種しましょうか」
人間用の飲料は、少し甘い味がついており生きてきた中で『甘い』を経験できると思わなかった6024は涙を浮かべた。
「これ、甘いね」
「逃げてよかったですか?」
「一人だったら多分だけど僕は後悔してた、けれど二人で暮らせるなら幸せだよ」
クローンに人権は無く、人間やセンサーにバレないように脅えて暮らす日々は想像以上に過酷だった。
空き家の家を見つけてどうにか隠れていたのだが、家に入るのを見られてしまった為に終わりはあっけなく訪れた。
「これ見てください」
「随分と古い本だね、電子データですらない何てあるんですね」
「異世界に行く魔法が使える本、だそうです」
「最後にほんの少し夢が見れるね」
警備隊のホバーコプターの音がした
『№1358番と№6024を補足、人間の人質はいない模様』
「これで魔法陣は完成です、あとは呪文を唱えるだけです」
「────」
呪文を唱えるも、何も起きはしなかった。
銃弾で頭を撃ち抜かれて意識は彼方へと消えていく。
そして同時に世界は終わりを迎えた、その呪文は本物だったのだ。
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