ハーフandビター、それは非有名、リアニメイトなボク
巨豆腐心
第1話
最初に説明しておこう。ボクはハーフである。でもそれは、ごく一般的な意味でのそれではない。日本人と外国人……ではなく、関東人と関西人、なんて冗談でつかうネタでもない。
都市伝説や、アングラ情報などに詳しい人なら、すぐにピンと来るだろう。
ヒューメイリアン――。
宇宙人との混血、ハイブリッドともされる存在が、それだ。
だからといって何か特別なことができたり、外見でちがいがあったりするわけではない。
時おり、宇宙船に呼ばれて身体検査をうけたり、地球上で体験したことを報告したり、といった義務を負う程度だ。
どうしてボクが混血になったのか? 実はボクも知らない。母はボクが小さいころに亡くなっているし、他の家族はボクがヒューメイリアンだと気づいてすらいない。宇宙人サイドもそれを教えてくれないし、周りの人にそれを話すことも禁じられているため、相談もできない。
ボクは小さいころから『周りの人とちがう……』という意識を抱えていた。特に幼稚園に通うと、周りがあまりに幼く、子供っぽいことに違和感すら抱くほどで、浮き上がってしまう自分に、自分の方がおかしいのでは……? と、ずっと悩まされてきたのだ。
そんなとき、宇宙船に連れていかれたボクは、ヒューメイリアンだと知らされた。それで得心がいったのと、ボクにはとある使命が与えられていることを知る。それは地球人として、そして宇宙人として、ボクが果たすべき役目として実践していくことになる……。
「お姉ちゃん、遊びに行ってくるね」
「どこ行くの?」
「夢ちゃんのところ」
ぼくはそういって家を飛びだす。小学一年生であるぼくが、自由に家からでて遊びに行くことは難しい。でも、50メートルも離れていない幼馴染の少女の家なら口頭でも赦された。
根津 美夢が本名だけれど、『みむ』という発音がいいにくくて『ゆめちゃん』と呼ぶのが、ぼくらの間の決まりごとだ。
ぼくが家を訪ねると、彼女の母親が愛想よく出迎えてくれる。家族ぐるみで付き合いがあり、母親がいないボクのことを預かってくれている感じだ。
美夢は肩まで伸ばした髪をお下げにして、ちょっとはにかんだようにボクを迎えてくれる。これはいつものことで、時間が経つとはにかみが止まるけれど、しばらくはもじもじして、赤い顔が止まらない。
「ちょっと買い物してくるから、二人でお留守番をしていてね」
母親はそういって、そそくさと車で出かけていった。ボクがしっかり者で、娘一人では心配でも、ボクといれば安心して出かけられる……というのも、ボクを歓待してくれる理由の一つ。
外見は人と同じでも、ヒューメイリアンであるボクは、精神的な成熟が周りと比べても、だいぶ早い。
母親がでていったことを確認すると、ボクは美夢の体をそっと抱き寄せ、その唇にボクのそれを重ねた。彼女もボクの腰に手をまわし、それを受け入れる。さすがに他の人がいると、そういうことをしてはいけない、と分かっているけれど、二人きりのときはちがった。
互いの舌をからめ、粘膜同士を擦りつけんばかりに押し付ける。昼はホットケーキだったのかな……? ボクは彼女の口の中を味わって、そんなことを考えていた。
そんな美夢をソファーに押し倒し、唇を放して改めて見下ろす。
彼女は好きな人とそういうことをする……という意識をもっており、とろんとした潤んだ瞳と、まるでリップを塗ったように、互いの唾液できらきらと輝く唇で、ボクを見上げてくる。
かわいい……。幼稚園でも孤立しがちだったボクだけれど、彼女はちがった。それは幼馴染だから……ではない。
彼女は自ら首に手を回し、ボクの頭を引き寄せてくる。ふたたび唇を重ねた。こうして互いの体温を感じ、匂いを意識し、感触を楽しむ……。ボクらはお互いのことが好きだった。
ボクは服の上からだけれど、彼女の胸に手をおく。別に膨らみや、その柔らかさを期待したのではない。彼女への愛情の一つとして、大人がするようにそれをする、というものだ。
彼女もまだくすぐったいだけなのか、唇を放さないまま、身悶えするように体を少しよじる。
ボクもあまりやると、彼女の機嫌を損ねるので、その手を今度は背中を滑らせるようにして、お尻にもっていく。
「いやん♥」
今度は可愛らしい声でそう呟くと、体をひねってその手をふり払おうとする。
「お尻はまだ嫌?」
「何だかくすぐったい」
こういうところは、まだまだ子供……。でも、ボクたちはもう大人へと一歩、踏みだしている。
それはボクが、ヒューメイリアンとしてある使命を帯びて、ここで生活しているからだ。
ボクは千木良 宇宙(そら)――。体はまだまだ子供だけれど、大人の心をもって少女たちと関係していく……。
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