年末の予定
クリスマスを終えれば、次に待っているのは年末。クリスマスから一週間も経っていないにも関わらず、すでにどこもかしこも正月ムード一色だ。
この時期はクリスマスから年末、そしてお正月と移り変わりが激しい。ある意味、一年でもっとも忙しない時期と言ってもいいかもしれない。
そして本日は十二月二十九日。年越し目前となり、ニュースでは帰省ラッシュによる混雑が放送されているような時期。
そんな日に陽翔は、年末らしく大掃除をしていた。元来面倒臭がりの陽翔が年末に大掃除、去年までの陽翔ならあり得ないことだ。
とはいえ、陽翔に大掃除の経験は皆無。もちろん……と偉そうに断言できることではないが、大掃除を行うのは陽翔一人ではない。隣人である真澄と真那も一緒だ。
「悪いな、黒川。ウチの大掃除手伝ってもらって」
「いえ、戸倉君にはウチの大掃除を手伝ってもらいましたから、お互い様ですよ。それに戸倉君が手伝ってくれたおかげで、私たちの方はすぐに終わりましたし。やはり男手があると、大掃除は楽ですね」
「そう言ってもらえるなら、俺も手伝った甲斐がある」
真澄に言われるがまま動いていただけだが、どうやら力にはなれたらしい。
それなりの時間をかけた大掃除はすでに終わり、現在陽翔の部屋は以前真澄に掃除してもらった時以上に綺麗になっていた。
ちなみに、真那は掃除の最中にかなり汚れてしまったため、シャワーを浴びているので現在この場にはいない。
「ところで戸倉君は、年末の予定はどうなっていますか?」
「んー……特に考えてないな。年末だからって遠出するつもりはないし、多分家でダラダラ過ごすだろうな」
「実家に帰ったりはしないんですか?」
「あー……そうだな。正直、遠いと言っても実家はその気になればいつでも帰れるくらいだから、わざわざ帰省する必要はないんだよな。だからまあ、今回は帰る予定はないな」
つい歯切れの悪い返答になってしまったのは、あまり話したくない内容だからだろう。さっさと話題を変えることにする。
「それより、黒川はどうするつもりなんだ?」
「私も特に予定はありませんね。例年通り、真那と年越し蕎麦を食べながらゆっくりするつもりです。戸倉君も年末に何も予定がないのなら、食べますよね?」
「もちろん食べるぞ」
真澄の作る蕎麦、美味いことは疑いようもないのだから断る理由はない。期待で、自然とゴクリと喉が鳴る。
「黒川の作る蕎麦か……絶対に美味いだろうな」
「期待しているところ申し訳ありませんが、蕎麦はほとんど市販品のもので作ります。手作りなのは、精々天ぷらぐらいですよ?」
「天ぷらを手作りするだけでも十分凄いだろ。黒川の作る蕎麦、期待させてもらうからな」
天ぷらが手作りというだけで、陽翔の期待値はマックスだ。今から年越し蕎麦が楽しみで仕方ない。
真澄の唇が少し困ったように、苦笑の形を作る。
「戸倉君は食いしん坊ですね」
「仕方ないだろ。黒川の料理は、どれも美味すぎるんだよ」
「相変わらず戸倉君は大袈裟ですね……でも、そこまで期待してくれるのなら望み通り腕によりをかけて作りますね」
「おお、楽しみにさせてもらうからな」
「はい、期待していてください」
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