第21話 運命


「ありがとうございました」


 僕は名前も知らないその人にお礼を言い、その場を後にしようとした。


「もちろんいつかは分かってるよね?」


「分かってます」



 僕はクリスマスの日、決断しなければならない。



 僕は相変わらずゆいちゃんと楽しい日々を過ごしながら、絆を深めていった。うん、今のゆいちゃんならたいちくんになびく事は考えにくいよな。僕はこのままこっちで暮らす心づもりでいた。



 クリスマス当日。


 僕は先に準備が出来た為、ゆいちゃんちを訪れていた。


「ごめん、何着ようか迷っちゃって」

 部屋から出てきたゆいちゃんは、いつもと雰囲気が違い、とても大人っぽくて綺麗だった。僕が見惚れていると、


「‥‥変、かな?」


「ううん!全然!めっちゃかわいい!」


「本当?嬉しい!」


 ゆいちゃんの満面の笑みを見て僕は確信した、これはいけると。


「じゃあ行こっか!」


 モールに向かう途中でゆいちゃんが言ってきた。


「てかさ、今日たいちに話あるって言われたんだよね」


「そ、そうなんだ。何時頃?」


「また電話するって、何だろう」


「僕も一緒でいいよね?」

 恐る恐る聞いてみる。


「当たり前でしょ!デートの途中に呼び出すなんて非常識だもんね。でもなんか深刻そうだったから仕方なくオッケーしちゃったんだ」


「そうなんだ!」

 僕はホッとした。


 僕達はショッピングを楽しみながら過ごしていた。


 時刻は五時五十五分。


 ゆいちゃんのスマホが鳴った。


「うん、分かった」


 短い電話を切ると、ゆいちゃんは僕にこう言った。


「なんかどうしても一人で来いって言われたから、ちょっと行ってくるね!」


「えっ!待ってよ、僕も行くよ!」


「なんか面倒臭いからすぐ済ましてくるよ!そこで待ってて!」


 僕は予想外の事に少し焦った。でも、もう大丈夫だよな。きっとゆいちゃんは僕を選んでくれるはず。今度こそ大人しく待っておかないと。


 僕はゆいちゃんに言われた通り待つ事にした。


 きっと大丈夫、僕は死なないし、ゆいちゃんとこれからも過ごせるんだ。


 確か、ゆいちゃんが向かってった方にイルミネーションがあるんだよな。


 ここでもちらほらライトアップはしてあるなぁ。でも向こうには大きなクリスマスツリーとかあるんだろうな。そんな事を考えながらぼーっとしていた。


 その時、僕の前で小さな女の子が泣いていた。


「どうしたの?ママとパパは?」


「ママ、いないー」


「お兄ちゃんも探してあげるから一緒に行こ?」


 僕はほっておけなくて、その子の親を探す事にしたのだが人が多すぎて、すぐには見つからないだろうと思っていた。


「あっママだ!ママー!」


 交差点の向こう側にママとパパを見つけたようだった。見つかったんだ、よかった。


 そう思った瞬間、その子が道路に飛び出してしまった。


「あっ!だめ!!」

 僕はその子を追いかけてしまった。


 その子は交差点を走り抜け奇跡的に両親の所に行けたが、後を追った僕はハッとした。


 車のブレーキ音とクラクションの音が街中に鳴り響く。



 やってしまった。



 ゆっくり落ちながら街の時計を見ると丁度六時を指していた。


 僕はゆいちゃんと過ごした日々が頭の中を駆け巡っていた。

 


 あぁ、バチが当たったのかな。


 僕は僕で勝負すればよかったのに‥‥


 後悔してももう遅かった。

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