死に絶えてなど⑤

 一切揺らぐことのない姿というのを見せられてしまえばそれは明確な異常として世界に出力されてしまうことになる。

 だとしても、お互いにただでやられるわけもないと戦い続けていくだけであって。

 その事象からして、逃げの許されぬ環境ではあるというのは理解する。だとしても流石に遠すぎやしないかこれは。

 白骨の容姿をする異形の怪物に襲われてしまって、その全てを破壊しているのだからどれだけの強さがあるのか。現状再生を許しているだけかも知れないと、そう不安と警戒を感じられてしまっている青木あおき后河こうが。自身を対象としての術の発動をしようかとも迷ってしまうくらい。それだけ未だ青木あおき后河こうがに思考を失うのに躊躇いがある理性を残しているということか。

「そうだとしても………………ちょっと邪魔だってッ‼」

 うまい具合に位置取りをされてしまっているせいでオルトス・ダイアモンドが射線いくを遮ってくる。それに構わずに貫いていくほどの信頼などは二人のあいだには未だない。あと他には一発貫いていこうとすれば威力とか弾速が落ちるために本当に邪魔になっている。

(白骨式であの『招来猪フェイバリットフライ』を発動させるなんて流石に滅多なことではやらないけれど。そして用途とすれば弾除けとか突撃させてその場で砕いてしまうのがあるのだけれど)

 それにしてもこの野郎は強い。これだけの人数を相手にして寧ろ優位に立っているのだから。………………というかもしかしてこうやってただ数だけ並べられているから………………そういうやり方が得意だったりして。

「だったらッ‼」

 だがこう後ろで構えて気の遠くなるほどの演算に次ぐ演算という作業を行っていれば精神だってゴリゴリと削られてしまう。こうまで体力を消費すれば憂鬱にもなる。

 性格の面でこの役割は不得意である。青木あおき后河こうがが元気に嬉しそうな楽しそうな笑みを浮かべてやれる戦いというのはこういうのではない。


 ガイアール勝利は白骨を操る碧い髪の少女の動きというのが変わったようにも思える。特にどこがとは言えないのだが、その自身で定めたやるべきことなんていうのを切り替えたような、そんな印象が。

「白骨式・螺尖旋」

 そして飛んでくるのはただ一発の拳に纏わせた鋭くも中心へと行くように巻いている異様な白骨であったか。通常よりも細く鋭くとしたせいだろう。それは衝突の瞬間にてぺっきりとへし折れてしまう。

「それで戦場を自身の思惑とも違う解釈をして我慢できずに突撃をしてくる馬鹿であるのが、その役割をするのにはあっていないようにもッ」

 更に飛んできていた一撃。それは青木あおき后河こうがの拳から離れていった一本を掴まえてそれで殴りだしていくだけのことで。それで大概の相手であれば充分に事足りる一撃だ。

 一発で歩を動かされてしまうガイアール勝利。別にここから動かして貰おうなんて期待なんて述べてもいないので既に何度か脚を動かしていたが。その瞬間に脚に絡ませてくる鞭であって、そのままに脚を捥いでいこうとする勢いがあって。

「ッ‼」

 これには驚きよりも感心が勝つ。それで正確に足元に押し込んでいけば踏ん張りというのが効いてくれる。だが角度を変えられてしまったかぶん回されてしまって海面にへと投げ捨て叩きつけられてしまうことになった青木あおき后河こうがだ。

「――――カッッポッッ⁉」

 ここまでの勢いを出されてしまえば体力を奪うのに威力は足りている。それのせいでボロボロになるまでの傷を負うことになってしまって。ただそれも見た目だけですぐに癒えてしまうのがあってその様子が鞭から伝わる情報で理解してしまって異常だと感じるオルトリンデ・アントではあるのだが。

 でも、そろそろ時間にも余裕がなくなってきそうだ。一応は示し合わせてということになっている以上はガイアール勝利だってそのことが起こる前にでも逃げ出してしまおうとも思う。

(だとしても流石に落とした海にでも攻撃を伝えて貰おうなんてかなり人任せなことで)

 フライパンを握って構えてその海にまで叩きつけていこうとする咲乃深礼であるのか。そのフライパンというのは指向性のある熱を発生させている状態であって。そのままに振り下ろす。

 だがその振り下ろされたフライパンというのが弾き飛ばされてしまえば驚きもする。そちらに意識が向いてしまうことになる。咄嗟に足元を蹴り飛ばして跳んでいけば手元から離れていったそれというのを何とか掴まえることに成功する。

 着地をすればふう~ふう~と思わず息を吹きかけることをしてしまう。

 振り返っていけばあの野郎が落ちていったはずの海から勢いよくも飛び上がっていく何かというのが目に映る。それの特定など、わざわざするまでもなく明白だ。

 紫紺の色ばかりが目立っているそのふざけたことをしている野郎というのが剣を日k抜いていって視界に映る物の多くを剣閃によって切断をしていこうとしていく構えであるのか。それへの対処など………………ここにいるものでは出来ようもないはずであって。

「フヌヌヌヌッ!」

 前にへと出ていった兇頭わると乃蒼のあが結界を展開していけばバリバリと衝撃というのが走ることになる。これのおかげで手元が狂いそうにもなってきそうなほどに負担がかかってきてしまって。

 それに手を翳していって術の補助をしていく青木あおき后河こうが。系統からして違うのでかなりの負担にはなってしまっているが、それでも代わってやれる部分があるのであればそうしたいと思うのはおかしなことでもないはずだ。これほど幼い子にまで戦場に送るなんてそれは感情とか人情とかで認めたくもないことだと。

「ここからかっ飛ばしてその頸をッ」

 そしてフェイクが本当に躊躇うこともなく大鎌のカタチにまで変形をしていった杖で頸を切り落とそうとする構えをして振るっていく。だがそうしても届きそうにもなく、弾かれてしまう。少しの時間と距離、弾かれてしまったせいで確かな隙が出来上がることになる。そこから剣を振るわれてしまって杖を砕いていこうとされてしまえばそれを受けるフェイクでは間に合わない。

 この一撃は防いでいくよりも躱してしまうのが圧倒的に速く楽に済む。それで首元でも掴まえていけばそれで下方にまで降りていくことをする瓜丘うりおか亞婁螺あるらである。

「あッブなぁ‼」

 ただ一撃であっても速度と重さが乗っているのがあると実際に受けなくても感じられてしまっている二人。だが次の瞬間にガイアール勝利はその更に下方へと現れてくる。そして既にそこから連続の蹴りを放っていこうとする構えであって。

「………………………………」

 そこにへと物差し竿を構えて割り込んできたフロウリア。それでどうにか一連の攻撃を防ぎ切ったがはずだがそこから途切れた直後に石畳に叩きつけられてしまうことになる。

「―――――かッップランッ」

 自分の横をそうやってでも墜ちてきてしまったのを見せられてしまえばゆっくりとそちらに視線が向いてしまうのも仕方ないことだと思う。それで這い上がってくれる人間がいるだけそれも驚きなものだともなる。だとしても御影餡手だって自分のやれることのないために情けないとも思ってしまっていて。

「大丈夫………………そうだね」

 それに心配するだけの声を掛けられるだけ村岡むらおか菜否ないなも最早ここまでの事象には慣れてきてしまったということであるわけか。ここまでの事象をみればそうなってしまってもおかしくないか。

「というかそれでいれば俺らの方が驚きは大きい気がする。下手に知識があるだけこいつの異常性にでも感心する。どうやってもこの可愛い顔した野郎がこれだけの秘密を抱えていられるのか」

 たったこれッぽっちの短い時間をしてどれだけの強さであるとは理解もする。どうしてここまでの強さであるとは………………どういう経緯で手に入れたのかとか敷也もするけれど。

「まぁ僕のこの強さというのを理解して貰えればこれ以上に手間も掛ける必要もないか」

 ガイアール勝利がいつの間にかしまっていた剣を差やから引き抜いていくことをしていく。そしてその全員と足元にまで叩きつけてしまうだけの圧力を与えていく。それも丁寧に全て割合として身体の壊れ具合を同様にまで行くようにだ。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッこれだけやれば力の差というのを理解して貰えたかな。いいや、これはどちらかといえば君ら本来持ちゆる力を出すのをしていないからか。たったこれッぽっちの小さな戦場では本気を出せないとか。それとも君らではその方法を知らないとかいうことか。どちらでもいいが君らが」

 だがそれでストレートに刃物をガイアール勝利の眼前に振り下ろしていったくろうだ。既に満身創痍といった状態ではあるが、つわものとはそれからが、そこから先が真骨頂ともいえるので問題はないとする。

 皆に掛けていた圧力というのも振りほどいてしまっているので立ち上がっていられるというわけだ。精々が動けないようにということだったので誰かしらが一瞬で突破するのが正答だった。それで実際にやってのけたのがくろうというだけだ。

「まだやれますがこれから面倒なことばかり起こりますのでそういう時間の掛け方などもしていられない。あぁ本当に惜しいなぁ」

「ちょっと待てッ‼」

 もう既に動けるようにもなっていたフロウリアが飛び出していくが、そこにあのふざけた野郎の姿はなくて。これだけのことをされてしまってただで帰すことになってしまうのには悔しさばかりを感じてしまう。それと無力感と不甲斐なさとかそういうのを沢山だよ。

「またこんなことばっかりかよ。どうしてあのプルートが」

 そこであの紫紺の要素が多い野郎というのが現れた際に、それがあったからこそ現れたことに気づいたというか。プルート・オルコットの命を確かに奪って中身を徹底して引っこ抜くことをされてしまえば中身も無くなってしまうところ。

 残された亡骸にまで近づいてしまえばそれがはっきりとこの眼にでも映る。とてもまともな人間の死に方とは思えない。まぁまともな人間の死に方とは何だろうかとはなってしまうが。それはただの価値観のそれともなってしまうだけだ。

 この空っぽとなった亡骸をせめてこれ以上は壊れてしまわないようにと自分の上着でも掛けてやる。そして虚空から取り出してきたのは結構な大きさと重さの担架である。

 用意がいいというより、今までもこういうことがあってそれで手元にあったのを忘れていたということか。

 携帯端末でも取り出してきたかと思えばどこかに連絡でも始めていく。その相手とするのはジャスパー奈摘であるか。

『なぁ黙っていこうとしてそれで派手な轟音でも鳴らして一体何をすればこんなことに』

「あのプルート・オルコットがやられた」

『んあ?なんの冗談だ。こっぴどく不意打ちでも受けてにしても初撃で倒されてしまうほどの根性なぞはしてないだろう。それでやられてしまったとすればそこまで生き残るために必要な部分が甘かったということなんだろう』

「こっぴどくもやられたよ。全員に行動をさせてなおかつそれで完敗だ。これを奇襲とか暗殺とかっていうんだろうが、それにしても何かしらにでも間に合わせるような動きで逃げるようにいなくなってしまった。これで精神的にも不和を招くことにでもなるので一人だけでまぁ損害としては足りているか。………………とても自分は冷静ではいられないのを考えればこそ」

『あぁそうかい。それでこれからどうするつもりなんだよ』

 自分に意見を求めてくるのか。それをされてしまえばどうしようもなく、こちらに余裕などあるはずもない。

「悪いがこっちにいる連中へのは任せてもいいか。たった一人分でも死者が出た以上はそれだけやるべきことはある。だが自分は彼女たちを期日までに送ってやらなければいけない。………………任せる」

『あいよわかったよ』

 そして相手側から通話の切断がされてしまう。これで充分だと判断したか、そしてたったこれだけのやり取りまでにしかならないほどにやれる余裕など相手もないということだというのか。それであれば納得もするか。

「どうせ自分だってもあるはずもないから」


 信じたくはない。だがあのオルトス・ダイアモンドからのことだ。であれば、そうでなければと信じたくないことでも起こっておかしくはない。本当であれば誰にも言わずにいたいだろうにできるだけ事務的でもこなしてしまおうとするその根性は理解すれどぶん殴りたくもなる。それと同時にやらなければいけないのは、それを実行した者の追及とは特定とかだろうか。

「だがそれをするのは軍とかの仕事だろうし。頼まれてもないからこそ勝手に何かするのも怒られそうだ。余計な考えでもしないでしっかりと頼まれた分だけやっていればいいんだとか言われてもそれには素直に従えるわけもないが」

 こちらは仮にも国の一つでも預かっているんだ。たった一人でやっているわけではないとしてもやらなければ、やっておかねば安心など出来ないことなど沢山ある。

「そうでもしなければ成り立たないのが実情なんだよ、どこまで行っても」

 ジャスパー奈摘は主に王宮での仕事が多いが別にそれで暇というわけもない。関係各所との連携を取るための窓口やらになることが多くて。立場としては決して低くはないどころか最も高くておかしくないがそれはそこの長の話であって。そういうのが現状いてくれないのであればそうなっても仕方ない。

(いくら秘密兵器などを抱えているとかいってもそれの管理程度しかやれないのでは戦場でどう活躍してやれるのか)

 まぁそれでも個人の感情としてはじっとなどしていられるわけもない。支障が出るならこの職だっても辞めてやる。

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