死に絶えてなど③
結局このレスティラなんていう地に来た理由など、せいぜいがあちこち顔でも出していくだけのことだって。それで特も困りもしない気もする。であればこそ、自分の人生の割り切ることなど、自分に区切りでもつけていくしかないというだけ。
「ただ一回の宴会出席などしてしまっただけな気がするのだが。まぁどうせそれよりも速やかにこなしてやれるだけの………………まぁ色々と後回しにでもしてしまうのはそれはそれで悔しい気持ちもあるが」
プルート・オルコットとしてはこの皆の姿を、こうして後ろから見て眺めていられるだけで満足だ。デスパレードにへと向かっていくその姿だけでもう感動的に思えて来て。懐からカメラの一つでも取り出していけばそれでしっかりピントでも合わせてシャッターを押していく。
「オッと、いいのが取れたんじゃないのか」
その写真というのを眺めてしまえれば思わず笑みが零れる。あぁ、本当に皆いい笑顔だよ。
「なーにをやっているんですか。早くしないとタコ焼き無くなっちゃいますよお」
常磐美利からそんな言葉が飛び出してきたことに驚きはした。本当に今までの付き合いもあるが彼女がこうして親し気に声をかけてくるなんて。
それで前にまで歩いていこうともしてしまえば、その途端に脚が止まってしまう。
この違和感というのは何だろうか。感情か、それとも本能によるものであるのかとか。そのどれでもないというのであれば、そのまま体をがっちり掴まれてしまっているらしいのか。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ。笑えねぇな」
自分の躰にでも意識を向けてしまえば、それで一瞬にしてバッサリとドロドロと垂れ流してしまっている何かしら。
「本当にこのまま戻るのか。まだいてもいいだろうに」
「そういうわけにもいかない。これでも常に忙しいと叫び続けているんだ。抱えているモノなど多くある」
プルート・オルコットはジャスパー奈摘から譲り受けた資料の数々というのを必死に段ボールに詰め込んでいっている。この少しの間にあった件のいくつかの資料を時間かけて読み込んでいくことをしてばいいのだが。それで色々と足りていない気もするが。
「読んだらすぐに燃やしてやるから。でも、なんでまだ紙などを使っているのか。この中には魔導書そのものもあるだろうにそれに構わずになんて可笑しいにもほどがあるとも思うのだが」
「別に躊躇いはあるさね。………………じゃあここで読んでもらってもいいのだが」
「………………………………」
自分で入れたろうに、段ボールからこの資料を全て取り出していってひたすらに熟読というのをしていく。ただひたすらに短い時間で細かい要素を取り出していく。まさか誰かしらに騙されてもしまわないようにと。
「気軽にあちこち置き場所を、所有者を変えていいものでもないだろうし」
「どこも変わらないようで。これはあたいのこなしてきた今までの人生で蓄積されてきた経験と比べてのことだけれど」
慰霊碑なんて、どこでも半端な気持ちで顔を出していい場所でもない。特に詳しく知っているわけでもない自分がそうやって誰か用があるわけでもないのに来るのはどうなのだろうかなんて。
「それをしたら慰霊碑なんていずれ忘れられてしまう場所になるか。それこそ長命種でもない限り誰もが忘れてしまう場所だと」
というかそもそも長命種なんていうのも同様の種族ばかり集まる集落としては、寿命だってもそう変わりもしないのだから相対的に忘れられてしまう時期なども、そういうことだ。
「どうせあたいがこのままに投身とかしても誰も見ていないんだろうなぁとか」
海岸から本当に落ちていく馬鹿であるなど。それこそ誰が想像もするか。それでバタバタと藻掻くこともせずに海に沈んでいって………………近くの砂浜までに流れ着いてしまうことになってしまった。
「………………ど、どうしてこうなるんだ」
こうなれば馬鹿なことをしてないで他に何かするようにでも考えておくべきか。
そこで視界に映る誰かというのが気になってしまっていて………………。
「この馬鹿。本当に投身自殺でもしようとするのがいると思うか」
自分がこれだけ視力とかがいいことを恨めしいとは思ったことなどあるか。なんで本当に崖から落ちてしまおうなんてする誰かというのがいるのか。問題は距離がかなり離れすぎているということだ。ただの人間が手を伸ばして届く距離というのを既に越えてしまっている以上はそれを素直にでも諦めてしまうしかないのか。
「そんな誰かにとって都合のいいことなどもあるはずもないっていうのを」
人がいいというわけでもないはずだ。これは誰かしらから重く押し付けられてしまった試練。それに敗北を認めてしまうことなど、とてもではないが悔しくも感情で御することなども出来ないことだ。
その向かう間ずっとその遂に崖から海にへと落ちてしまった者を視界に収め続けることの出来ているこれは、どれだけ複雑で他者の心を折りに来るための地形をしているのか。そうやって足踏みでもしている理由というのは決して深くもないのだろうがだから何だという話であって。
であればこそ、そこでしっかりと落ちてしまっていた者を掴まえてくる黒光りする鎧で全身を覆う誰かというのによって抱えられているのを見てしまえれば、思わず感情にて拳でも握ってしまう。それも強く。
「なんだよ。他人の前でいちゃついてんじゃってそれはあたいが悪いのかこれは」
ああやっても高速で機敏にも動かれてしまうのにも、あれだけのヒーローかというほどのカッコよさでも見せられてしまえば、無力感に苛まれてしまうのは当然ではないのか。
「自分には何も期待をするなということか。でも、それでも我が儘の一つでも叫ぶことさえできるというのであればそれで充分だっていうことが」
あぁ、まさか再びあたしがこの異常というのに蝕まれるなんて。付き合い方というのをまた考え直した方がいいかも知れない。
ただ街中を歩いていくだけのフロウリア。それでも彼にとっては珍しいものが多く見受けられるようにも感じられて。それと同時に街の空気は完全にはと行かなくともすぐに動いていこうともするだけの気力は十二分にもあるらしいというか。
「相変わらずこの不屈の精神は見習いたいところだが。危険が去った気もしないでもないというこの感覚が残ってしまう今にやられてしまうのも」
まぁ別に国土を直接焼かれてしまったわけではないので普段通りの生活が可能だということか。別に国土が焼かれたとなればまた違う結果にでもなりそうではあるのだが。
(そんな不吉な世界など、何度も起こされてしまうわけにもいかない。だがそればかりされてしまっているのは………………とてもではないが犠牲が出過ぎている。人類滅亡などよくもまぁ、到達しないことだ)
それもこれも紙一重で回避をしているだけか。どうせ今までいくつかの可能性というのを辿っていけば、それで到達してしまった世界なども多くあるのだろう。
フロウリアは通りすがった焼き鳥屋台で買っておいたその一本の串というのを、喰らってでもいく。今までこの大空にでもいたはずだというのに、あっという間に降りてきてしまったことに多少の感動は覚えるが、それも今更か。
「今まで何度行き来してきたと思っているのか。世界を越えるなんてことまでしている時点で相応に凄いだろうに」
魔導書とか参考文献のいくつかの閲覧許可を容易くも得らえてしまった
だがこれからでも、既にでも自分と関わってしまっていると仮定した場合には大きく状況の解釈に変化が現れてくる。
「色々と不吉な預言者にはとでもではないが読ませたくもない書物ばかりであるらしい。これの全てにあたしが首を突っ込むなんていうことにはならないだろうけれども」
それでも自分のやり口というのは自分自身が一番に知っているつもりだ。心底笑えないことだとしても。本当に近すぎず関わって、首を突っ込んでいってそうやって余計なことをして状況を混乱させていくのがちょうどいいということ。だが、それをするには関りの少なく希薄だからこそやれる芸当であって。今回としては本当に面倒なことになってしまったらしいともいえる。少なくとも『Todd』の全員が一緒くたに全体として関わってしまった。それがかなり重たく課題として圧し掛かってしまっている気もする。
「面倒なことへの関わり合いなんてしない方がいい。傍観者として何も知らない癖に言いたい放題やりたい放題する方がまだましだともいえるからこそ今回のことは気に入らない」
別に傍観者でもいいんだ。だがそうしようにも既にデスパレードというどう足搔いていても問題の中心から逃れられない箱に入ってしまっている。関わり合いにならないようにということはもう通じやしない。
「だからこそあたしの知りたいことはせめて表に出ている上っ面だけの技術とそこから層を一枚ずつも剝いでいって世界の深淵を覗いていって見えていくそれであっての」
いずれ見えてくるその世界の深淵というのは、誰かしらのどこにでもある純粋な人間としての不甲斐ないやるせないことだというのがあってということか、もしくは世界にとっても、誰にとっても不幸しか呼ばない害悪なことの仕業か。
まぁそういうのを諸悪の根源とでも呼ぶのだろうが。だからなんだという話にもなってきて。
「にしても、そこまでの理解をしたところであればあたしの今までことまでを想像しても追いつけない情報量で。流石に一つの歴史分を詰め込もうとすればおかしくなりそうに感じるのも当然か」
これまでのことを考慮しても全部を憶えて使いこなそうとするのはまともな人間では難しい。そして
であればこそ、恐らくは優先するべき事項として歴史書とかの方なんだろうが。そもそもとして今この世界で使われているのでも大変だっていうのに大昔の文字の解読などやれると思うのか。それは正気とは程遠いって。
「本当にここまで読んだとすれば
「本には垂らしてしまわないようにね」
リグネア・ワスピーターが隣にも座ってこんな様子でも眺めて来ている。そして
「そっちも本の虫ということ?そんなに外はつまらないのかしら」
「そういうわけでもないですよ。いろいろと日本との差はあれど海外らしく文明とか文化とかに差を感じていたりもしますし。ですが、それでもその程度。重要な位置にあるはずの国の抱えた神秘というのにどうしても注目というのをしてしまう。これは癖ですかね」
銀髪で目元を布で覆った少女が点字にも頼らずに本のページでも捲っているのは君が悪いとも何も知らない者が傍から観ればそう思うこともあるだろう。だがそんなことは彼女にとっては慣れたものだ。
「でもワスピーターが読んだところで内容が変わるわけでもない。その読み手の違いによる解釈の差というのがあっておかしくはないとも考えはするが、どうせそれだけ。読み物自体が性質を変えてどこまでも変化を続けるわけでもなくて、それであればそれ自体がその本の本性だともいえるわけで」
そこで二人で一通り読み込んでいった本の多くを棚にでも戻していこうと立ち上がることをした
このたくさんの読み物を戻していく過程にてこの鈍痛の正体にでも突き詰めていこうとも思考を巡らせる。それをすれば脳への負担というのは更に重たくも強く圧し掛かってしまうことにでもなる。
「せめてザッハークとやらの情報の確保がやれたらとか考えたけれどそれがここにでもあるわけ」
「あるぞ」
そこで後ろから声がかかることにでもなる。それが誰かと思えば、本当に誰だろうか。
左の親指と人差し指を広げて額を押さえても今でも全力で頭を抱えたいという様子の者で。どうしてそんなことをしているのか。落ち着いてくれとは。
「もしかしてあたしに対してか」
「まぁそういうことだよ。短い時間しかいられないからってわざわざ初心者用としてあるたくさんの資料とかを読み尽くしたいというよそ様からの希望を叶えてやろうとする私たちの親切をこうまで悩ませてしまうのはどうして。というかザッハークの資料でも欲しいというのだったら軍から頼んでくればよかったでしょうにどうしてわざわざこんな回りくどく全てを端から端まで丁寧に平らげるようなことを」
なんだろうか。ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツと何かしらと呟いているようにも感じてしまうが、それが何かなんて。………………うん。
「その場で泡を吹いて倒れるんじゃないわよ」
一通り読み物を元あった場所にでも戻した
(本当になんで突然泡吹くまでのことになってしまうのか)
重ッ苦しいとか自分で思ってしまってもいる蒲公英色のロールをさせた髪を生やしているオルトリンデ・アント。でもそれをわざわざほどいてまで、どういう髪型がいいかなぁとか姿見の前で必死に悩んでいる様子を、部屋の外から物音として耳に入れているグレイシア・アルボロスとしては、反応として戸惑ってしまう。
「うーん、やっぱりいつものがちょうどいいかな。あれくらいの重量で首が折れてしまうほど貧弱でもないしな」
部屋には他に誰かいるわけでもないだろうから独り言だろうとも思う。だがそれでも、通りががった部屋の一つからそんな声が聞こえてくればびっくりもする。
(だとしても気にしてはやらん。女性のことを心配など、しても何かしらが出来るわけも………………躊躇はする)
それで目的とする場所なんて、倉庫の一つくらいか。そこにあるのになんてどうせ皆で詰め込んだ下らない笑える荷物なんだろうが。そんなのをしてそもそもか。
「そもそもとして、俺の所属なんてどうせここに倉庫などもあるんだっけか。まぁ給料というのもしっかりとは知らんが出ているはずだし色々とその給料というのがどうやって使えるのかも不安にもなってくるが」
そしてその倉庫というのを開けてしまえれば………………一切中身などなかった。
「空っぽなのか」
「そうだぞ。この中身はしっかりと別の場所に移しているから安心してくれ。君のその大事な物も確かにあるからこそ、それを預かる倉庫番をやるには責任があって」
「いや、どこだよ。というかここって特におかしいところなんてない貸倉庫だろうがよ」
グレイシア・アルボロスとしてはその倉庫に入っていた逸品が大事で。まぁ別に大事ならばそれで肌身離さず抱えていればいいだけなんだろうけれども。それで抱えられるのにも限りがあるので躊躇いはしつつも貸倉庫にでも置いていたんだ。
「でもそれでどうしろなんて………………まぁ無事に確保されているのであれば問題もないか」
夜にもなった宴会の場となればエンドミル・昭矩は大騒ぎはするが、それで酒など飲もうとすればばったりと倒れてしまうそうにもなりそうで。酒なども、飲み干してそれくらいで倒れてしまいそうにもなりそうでなぁ。
それを眺めているバーデス・ウィードとしては、平和で笑えてしまう。人生の全てを懸けてなど、それを宴会ですることでもないし。
そこでフェイクと兇頭乃蒼としてはこう思うしかない。なんてダメな大人ばかりなんだろうかと。だがまぁ、こんな人たちと一緒にいてこそ今の命があって。
「そう考えると私もそのダメな大人にでも含まれるのかなぁ」
「さ、さぁ」
皆が平和でいられるなどと………………そんなことがあるわけもない。
「なんて馬鹿なことを言いたくなるのは若いからかしら」
どうにも、状況に翻弄されてその状況において自我すら出せずにいる藤樹礼那としては己の力不足を痛感するばかりで。
「本当になんだりうなぁとか」
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