どうせわかり切った結末だ⑨
「ドラドラッ‼この俺に無茶苦茶に暴れてこいなんてそれこそ無理無謀っていうもんじゃないのかよッ」
フロウリアは今自分がどれだけの笑顔でいるのかというのを確かに実感している。
圧倒的なまでの火力で以て大半の者を消滅させていく高出力の砲撃というのを使用するのは馬鹿の所業。だがそれをして来いと、言われてそれに躊躇う理由が最早なくなってしまったというのであれば狂気にまで全身浸かってやるからよぉ。
「だから薔薇襤褸になるまで砕け散ってしまえッ‼」
大口径の魔力砲をただ撃ち続けているだけだというのに目の前にへと広がっているブルーネオもパンジャンドラムも一瞬にして消え去ってしまっている。こうして何とか直撃を回避した機体だとしても掠っただけで全身が黒く炭かという姿に成り果ててその場に散ってしまう結末だ。
それらすべてに哀悼の意を表することはあれど撃ち洩らしをするようなことなど、そんな一切の容赦などしている余裕などそれこそない。
「ウヒャウヒャウヒャウヒャウヒャウヒャウヒャウヒャッ‼これじゃあ、まるで俺らが悪役みたいだな。だが残念ながらこれが大衆に受けんだよ。てめぇらはせいぜい俺の活躍のための犠牲になってくれよッ」
もう笑いが止まんねぇよ。まぁそんな笑っている余裕なんていうのもあるはずもないが。何せ既にデスパレードはデルフェルスとは分離済みだ。ここから更に速度を上げての移動が開始されるということ。
「それで構わないよなッ。俺だってもわくわくしてんだからよぉ」
フロウリアが返事を待つのはアンドリューからだ。彼がいるのであればそちらに伺いを立てるのが現状で正しいことだろう。下手に支障を起こして不和をやらかすなんて冗談でも嫌だね。面倒でしかない。
『だったら全力であらゆる物をかっ飛ばしてしまえばいい。こちらも後から追いついていくつもりもあるがそれでも君が速度で一番でしょう。他の連中だってもすぐに来るでしょうから準備はしておいてくださいね。連携の、ブルックリン・メイガス・ロクショウだってそちらと息を合わせてなんてのは出来るはずですから』
『できませんから』
『だそうですよ』
まぁこんな風に言われてしまえばなんとも答えるのが難しいそれ。だがそれでも気楽に返してやればいいとなれば楽なもんだ。
「………………なめんなッ」
そしてデスパレードから飛び出していくのはしっかりと載せていた艦載機であるこれだ。あれだけの数を揃えていたのはとんでもないことだが容量としてどうなっているのかという話題にもなる。
『そこを退けぇ‼』
フロウリアの乗っている鬼公の頭上にへと叫びをあげて振り下ろされてくるビームソードであるのか。そいつの腕を掴んでいこうとでもしたのだがすぐさま引っ込められてしまうことになる。そこで更に前にへと宙を踏みしだしていった。
既に奥地にまで進んできた以上は通信障害も届いてしまっている状態だ。こうなればどうしようもない。ここからは孤高の戦闘だ。
「ぶち抜けよぉ!」
ジャベリンまでも持ち出してきて目の前にへと立ち塞がる奇怪な機体にへと向けて降り回していくこと。だがそれすらも遠くまで下がっていってしまう。この動作を複数回にまで渡って行っていった。
「逃げてるばかりじゃ決着なんてスタミナ勝負になんぞッ‼」
このズルワーン粒子とやらはお互いを認識してしまえば意志の、情報のやり取りというのもかなり気楽に実行できるものらしい。ならばこの状態であれば目の前で相対している相手の声も聞こえて来ておかしくない。
『それで構わないさ。どうせこちらは時間稼ぎをしてしまえればいいだけ。このまま全力で貴様を押さえつけていけばそれで充分だ』
「へぇ、それはそれはあいつらを甘く見ているんじゃないのか。正気すらも疑えばあいつら以上の存在などはいないはずだぜ。もう………………俺らが、大人が情けなくなるほどにな」
そして出してくるのは巨大な顎であったか。それでフロウリアを喰らってしまおうとしていたそれ。
これで終わってくれと願うグインである。ヒープクルもブイゼロも戦っているのであれば自分も必死こいて戦わなければ抱えた責任にとてもではないが足りない。
だがこの一撃で終わるとは到底想像もしていない。ドッペルゲンガーでも相手にしている体験なんていうのは基本的にないだろうし。それのおかげで相手から業を盗んでいくだけでかなり充分に強力にへと使えている。
(なのになんでこんなに丁寧に対応されるんだか)
『遅いッ』
まさかいくら相手の猿真似だけだとしてもかなりの精度であったはずなのに、それすらも振り切ってしまったのだ。こちらから一瞬にしてあっという間に右側についているマニピュレータがバッサリと切断されてしまった。
長物をあそこまで巧で扱えるなんて、とてもではないか若さはあれど達人の域をはるかに超えてしまっている。なのに対応できて奴がいるのが可笑しいんだ。
「だから俺はすげえってことなんだよなぁ‼」
すぐさま失った分の部位を再生させてそこから一気に手を伸ばしていくことをしていく。だがそれもジャベリンの一本で弾かれてしまったか。それもすぐさま引っ込めていけば一瞬にしてこの場から消え去っていくことになる。
「下らねぇよ。その頸をもらってッ‼」
『だから遅いんだってよ』
そして振り下ろされたジャベリンというのは掴まれてしまって胴体が貫かれてしまえばその場で爆発だ。あぁカッチリ念のためを含めて自爆だよ。
「オラよっと」
メイリオはどうしても小さいだけに、その分だけの乱戦となった場合の雑魚狩りにはとことんまで向いているらしい。ライフルでも撃ち抜いていけばブルーネオの一機でも撃破する。
『隊長、いくらなんでも多すぎやしませんか。遠いってこれは』
「アイオリアさんよ、これでも私だって限界を超えていこうなんていうのを無茶があるとはお前だって理解しているだろう。それでもぶち抜きたいというのであれば目の前の敵を倒すだけ。そうでもなければ敗北だよ。どうせ前に前に進むのが一番だよ。結局ね」
『………………やっぱ隊長っておかしいよな』
ネアン隊の隊長としてかなりの責任を背負っているのだが、それでも結局は誰かに任せるしか出来ない。飛んでくる円盤にへの対処の他にはどうしろというんだか。
「当然、撃ち抜く。このハイドライムでだ」
このメイリオには部隊の全員にへと配られている武装がある。選択式ではあるのだが結局は今回のために選んだ武器というのがこれだ。まぁ、これにもハイドライムにもかなり組み合わせがあるから差はあるしな。
これが何だというのか。シンプルに使っていけば砲撃だよ。
まさかこれによって弾かれてしまったせいで部隊の多くと距離は離れてしまうことになるのか。ここから一気に火力でぶっ飛ばしていけばそれで吹き飛ばされてしまうことになる円盤だ。
(あっけないな。これで終わってくれるんだったらもっと楽な気分で居られたのになとか。疲れるのは嫌いだ)
『油断させておいて更に更にとワラワラ湧きだすのはもっと嫌い、ですよね』
「まぁそういうことだ」
どうやらこの場に残ったのはアイオリアと二人だけらしい。とんでもなく少なく感じるが、他の連中は数で圧倒されているせいで障害を取り除くので必死らしい。
つまりはこの円盤というのを相手にするのはたったこれだけでやらなければいけないのか。いいや、そうでもない。
『別に俺らが増えるなんていうことも当然ながら想像していておかしくはないはずだよなぁ』
どこからか聞こえてきた声。それは恐ろしい違和感。どこかで聞いた覚えのある印象。どうしたんだっけか。そんな場合でもない。目の前に広がる円盤の怪物というのはまさかその言葉通りに増えだしてきやがった。
「普通はこんなもんねぇよ」
そこで取り出していくのはワイヤーだったりする。ここから一気にそれを追い越すだけの勢いをつけていく。そしてこのワイヤーを円盤にへと伸ばしていくことをしていった。
がっちりと嵌まってくれたのを感覚として憶えればここから加速たっぷりで走り出していく。宇宙空間にてブンブンと振り回していこうとする………………のだがそんなパワーがギリギリでせめぎ合っている状態だ。
お互いに動き回っているせいでどうにか周囲にいる兵器群にへと掴まえて、それを足場にして、踏み台にしていく動作までしてやがる。こんなことばかりであるので周囲にはかなりの被害をもたらしてしまっている。こんなの、誰が望んでいるかよ。
「他人に迷惑をかけるなとは誰もが教わる言葉だろうがッ‼」
『隊長、それはなんかおかしいです』
アイオリアからそんな言葉が飛んでくるがそれを聞いている余裕なんてない。機体が全壊するんじゃないのかっていう不安があるせいで大変に全身がボロボロに痛いですよ。
ただ、これの結果としてたどり着いた船がある。それに興味もない。すいませんと謝罪をするしかない。それのためにへの配慮などしていられる余裕もそれこそあるはずもないってことだ。
「あぁ、さっきから黙ってばっかりだが、もしかしてお前ってそうそう喋ったりはしないもんなんだな。そりゃあ、感動的だな」
『………………………………ギャオ』
「ちょっとしゃべったらこれかよ。面白れぇじゃねぇか」
リードルル・ハイドローグのここから放つ一撃。一度ワイヤーを切断しまうことで対象との距離にずれを起こす。これで一定の速度で動いていたはずのこちらと違って向こうはリズムを崩されるはずだ。そして腰にマウントされていた砲身を向けていけ
ば………………そこから円盤にへと高出力の砲撃を放っていく。
『そっちの。勝手な暴れ方を僕の船の上でしないでもらえますか。本当に迷惑なんですが。それで傷ついて破壊されたらその分だけ弁償して貰えますか』
「いや、できるわけないだろ」
いきなり踏んでた船からそんな声が飛んできたがそんなのにまともにやり取りしている余裕などない。だが本当に人の心があればここから離れていくべきだってこと。
一気に加速をしてでもここから全力でビームソードの展開をして斬り上げていく。
『だがそんなもんが通じるほどここまで甘いとは誰が想像していたか。誰も想像などしてやれるわけもなし』
ここでビームソードを握るこの拳をどこからか伸びてきた手によって掴まれてしまうことになるとは誰が信じるかよ。ここから一気に拳一つを切り離していったこの決断は褒められるべきだと感心もする。
ギリギリと金属が軋む音がコックピットから聞こえて来ていた。ここで後方からため息というのが聞こえた気もするのだが………………それも気のせいだろうか。
『レイスティライト』
その後方というのから伸びてきたとんでもない速度の紐であったか。それはもうなんというか、紐に蛇の柄が付けられているというだろうと………………あ、これって確かに生きている気もするんですが。
そんな感じて後ろに振り返っていこうとしたが、そこにあるかなりの恐怖のせいでとてもではないがそんなことが出来る緊張感でもない。嫌だいやだといっても職務のせいでそれを理性で強要してくる。何でこの感情と相反した行動でもしなければいけないのか
「あっぶないなぁ。まさかここでとんでもないことが持ち込まれるなんて」
「別にお節介を焼く方なんですね貴女たちも。まさかというのであれば宇宙船が窓開けてまでやることですよ。何をしているんですか。もう少しは落ち着いていたらどうですか」
名坂璃乃のその行動に思わず口を出してしまう。出来る限りやらないようにとは考えていても常識の範囲内であればしていくのに躊躇ってはいけないと思う。それで躊躇ってしまうのはそれこそ危険なことだから。
「そんなことを言われてもマイゴッデスの以前までのやっていたのに比べればそこまで派手に影響を与えた物でもないので構わないという認識だったのですが不味かったですかね」
彼女の言葉には一切の反論などない。僕が今までやってきたことに比べれば精々が誰かしらの窮地を来ないようにしただけ。
「そんなマイゴッデスがやってのとはまた比べるのは明確に違いすぎますから。誰があれだけのと比べたら………………普通に色々と基準が可笑しくなってますね」
急に笑い出していた名坂コトリが心配になってくる。精神やら人格やらへの不安なんていうのは誰にでもある不安。それをどうこうしようというのだから苦労して当然なんだよ。
「ちゃんとたどり着いてくれるといいのだが」
「これって自動運転はあってもこのコックピットの中から操作していけるんだから特に困ることなんて………………取扱説明書を読みこんでいくしかないでしょ」
エンドミルのその心配と不安がたっぷりの吐息を聴けばそれを吸いたいと、体に取り込みたいと願うのは変態の所業であろうか。そんなことまで考えていながらも片手間で乗っている艦載機のマニュアルを読み込んでいる。まさかこれが初心者でも才能とか適正さえあれば最強になれると銘打っていればどうにも不安になりながらも信じるしかないとは当然ではないか。
「でもまさかあれ以上に強烈な機体があるなんて想像もしなかったというか。実際に二人で使っている分だけに位置の入れ替えだったりもする必要はないと思う」
わざわざ複座式で複数機体を用意している時点で強気に誰かしらを運んでいくための意図があったのだろう。それをパイロットとして自分で移動してもらうのが速いという判断も真っ当なこと。問題はその運ぶべき人物をしてみても普通はGで全身が砕けてしまうということ。それを二人で歯を食いしばってでも耐えていられるだけ凄いんだから。
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