最古とは曰く③

 ジャンカルロ・アルミロ・エピファーニとしては必死になって走り出している。だが現在地の特定というのは難しい状況である。

 そんなのをどうやればいいのか。都合よく衛星にアクセスできたとしてもこの座標というのを確認するのが非常に難しい。

 だとしても帰ってこれるというのであればそれで一切合切を興味なく仕事を済ませてしまえるのだが。そこでここが大陸など、大地などない場所であるのを思いだず。

 正確には、目的としているはずの方角に………………ないということ。そこまで行く近くまではあって既にその近くというのは通り過ぎた後であるというだけ。

 余りにも遠すぎる場所ではあるがそこから帰ってこれるだけの準備はしてもらっている。後でヘリでもなんでも送ってもらえればいい。それでどうやって呼ぶのかという話にもなってきてしまうのだが。

 そしてその中でいきなりというくらいの勢いで現れてくる怪物が出現してしまう。

 常人の目の前にそんなのが現れたとしたら………………形容するのはそこまで難しくもない。だがそれは明確になんていえばいいのかが難しいのだ。

 飛んできたその姿は蜘蛛である。だがその胴体の上に人間大の上半身が付いているのだ。更に言えばそこから暴力的な鈍器までその上半身にへと備えられている。

 あぁそうか。これは形容するのはではない。

「気持ち悪くて反吐が出るッ‼道中にこんなものを出されて激昂をするなと言われていないのが俺にとって一番に喜ぶそれだよ」

 呼吸を整えていえばその直後に前輪にへと向けて何か細い一本のそれが飛んできていたのを視界に収める。それに気づけば一瞬の判断にて後方にへと下がっていく。

 その判断というのは間違っていない。だがジャンカルロはすぐさま苛立つ事象というのを目にしてしまう。そして飛んでくるのは、明確な蜘蛛の糸であると理解する。

 この蜘蛛が飛ばしてきていたそれであると。回避というのは何とか間に合いはしたもののしっかりと放たれた後も前進を繰り返している。なのでこのままに後退し続けてもそれこそジリ貧になってしまう。

(だったら前に進んで突撃をするしかない。だがそれにもリスクがあるのは周知の事実だ。………………まぁ)

「それで勝てるのが超一流ということなんだろうけれど。俺が負けるなんて認めてやる気もないから」

 そしてアクセルを開いていって一気に加速させて前進していくジャンカルロだ。だが残念ながらもそこで足元をその糸で引っ掛けて躓いてしまうのだが。

「まだッ」

 回転を加えて氷の上にへと着地するのには成功をする。その一瞬で体勢を整えていけばすぐさま飛んでくるのはやはりこの蜘蛛の怪物であったか。対応など間に合うはずもない。

「シャアアアアアアアアアッ‼」

 信じられないほどの甲高い雄たけびというのを耳にしてしまえば身体が硬直してしまい回避にも手間取ることになる。だが諦めるつもりなどもッ。

………………………………………………ッ⁉は」

 今回使われてきたのはまさか脚でもなく胴体の上に乗っけられていた上半身から伸びている腕で握っていた鈍器である。それを大きく振られてしまえばマシンごと吹き飛ばされることになってしまった。一撃というのはかなり強力なモノである。

 しばらく意識を失っていたらしいがすぐさま立ち上がっていったジャンカルロ。だがマシンを起こしていく際に影というのを頭上から見せられてしまう。一発振り下ろされてしまったその一撃。

 一瞬の速度で以て振り下ろされてしまったのはやはり先ほどと同様のそれか。しゅぐさま走り出していけばその場にベリべりと分厚い氷にへとそれを凹ませるだけの威力でぶつけてしまっていた。

「あっぶなッ⁉」

 回避には成功した。ドドドドドドドドドッという重量感たっぷりの動きをしてみせる怪物であるが、それが何を意味するのか。外見からしてこの怪人というのが明確に恐怖を与えてくるのだが………………どこか異質というか機械的にも感じられてしまうのだ。どう解決してくれるのか、侵入者を相手にそれを排除するだけの目的であるのなら更に強力な武器でも出して広範囲に焼き払ってしまえばいい。だがそれをしないということはしたくないだけの理由があるということか。

 蜘蛛の動きであれば何とでもとは言えないが、上半身が付いているのがどうしてもどこから来たのかという疑問を投げかけてくる。勝てないというか勝っていいのだろうかという不安がある。

(俺に人殺しでもさせるつもりか。だったらまぁそんなのに構わずに走り去ればいいのだろうが)

 マシンを操ってこの場から本当に走り去っていこうといけばその進行方向をしっかりと妨害を打ってきている。それは本人が降り立つことである。

「シャアアアアアアアアアッ‼」

 またこの叫び声か。それであれば勝利すらも手に入るのだろう。ただこの個体としてはどうせ勝利など既にどう足搔いていても手に入るはずもない。

 骨が軋んでいるような声が聞こえてきている。そこで空から降ってくる光というのを目にする。それはまさかのビーム砲であるのだろうか。

(いやいやそんなの実際にあるはずもないだろうし。ここはどこか)

 だがその心を見透かしたように何度もビーム砲というのが放たれてきている。その撃ったその砲台というのが近づいてきているのを勘として憶える。だとしてもそれはどんな立派な航空機なんだろうかという想像でしかできていなかった。

 まさかそれが凄い機能まである巨大な人型の兵器だとは思いもしていなかった。その速度というのは相応に強い。だとしても音に関してはかなり小さいように思える。

 その人型の機動兵器というのはどこからか鈍器を取り出してきた。そしてかなりの速度で以て振り下ろしていく。

『どこの誰だぁ。こんな寒い場所にまでやってくるなんて。そんなの余程の物好きでもなければ気まぐれな不死者か。それとも命令を受けた軍人ということか。そうであるのなら大変に面倒なことで。そのご苦労は多少でもこっちも味わっていますよ』

 そしてその巨人というのは蜘蛛にへと襲い掛かっていったのだがしっかりと打撃は受け止められてしまうことになる。悲しいことに相応の速度を出して大楯を出現させて脚でそれを支えながらも受けてしまうのだ。

 ジャンカルロは恐らくはこの機械兵器にはパイロットがいるであろうから、それに余計な心配をしてしまうわけだ。そんな心配をしたところで下手に手を出せば死にかねないのが今の現状だから。

「そうも言ってられない様子で。親切は助かるが数で負けてしまうのが怖いんだけれどなぁ。どうせそこまでは役にも立たないだろうし」

 もうこの場から離れる算段をつけておく。目的の方向にへと進んでいこうとするのだがそこで腹にパンチを受けてしまう。これで呻き声を上げてそのままに氷の上にへと倒れ伏せてしまう。意識を失う前にとこれを行った誰かしらの顔を拝んでいこうとしたのだがそんなのすらさせてもらえなかった。普通に顔面に蹴りを入れられてしまえば真っ直ぐ直行ものだったから。


「ちょっ⁉あいつ早速やられてんじゃあないって。それにこっちだって手が足りないのは明らかな事実なんだって」

 カーディオとしてはこの目の前に顔を詰めに来ている感情を破壊して復活など絶対にない兵器の襲撃などどうしてもいやになる。散々に相手をしてきたタイプではあるのだがどうやらバージョンアップだってされていておかしくないのか。ハードウェアは見た目からして変わり映えしないともかくとして何故かあるこの強さはどうせソフトウェアの方なのだろう。ただ改善をしたでは済まない対応の仕方。だが大きくとそのバージョンアップをしたというほどのそれではない気もする。

(つまりはそれにあるのは特定の相手を想定したプログラムということ。それならばなんとか理解もしようがある。それをやれば他のにも勝てるのかという問題はある)

 だがこうまで正確に厭らしい手を打ってきている以上は相手の強さを認めるべきなのだろう。その青い薔薇の意匠を含まれた毒々しい見た目の機体を相手にさせられているカーディオは自身の呼吸が荒くなってきている。

 更に足元から飛んでやってきた蜘蛛はカーディオの機体にへとしがみついてきていた。これを振りほどこうと思わずブンブンとしていくのだがそれをすれば脚が装甲にへと食い込んでいっている。

 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い機体の装甲にへときているというのならその装甲を剥がしてしまえばいいのか。

 だとしてもこの機体に脚にへと脚を絡めながらしがみついてきている蜘蛛というのは生理的嫌悪がやってくる。だったらという考えで片足を切断してしまうのだがその瞬間にて目の前の薔薇の機体からは斬撃が放たれてしまった。それのせいで姿勢が揺らいでしまう。

 あの蜘蛛というのは何だろうか。カーディオは観ていなかった。まさか蜘蛛が糸を吐いてくるとは思いもしなかったこと。切断をしたはずの脚にへと絡めていってそこから一気に氷山にへと叩きつけてしまったのだ。

 ゴロゴロと転げ落ちてしまうのだがその瞬間にてカーディオが決断をしてしまうこと。それはバズーカをぶん投げてそこに一発の弾丸を撃ってしまって爆発をさせるそれだ。

 こうして爆炎の中から突撃をしていく青い薔薇の兵器ではあったのだが既にこの場に相手をしていたはずの機体は姿を消してしまっていた。きょろきょろと周囲を見渡して探し出していく。だがそれで見つかってくれる物体というのは一切なしだ。

 このように困り果てている個体に帰還命令が下る。それを出したのはジャンカルロにへと一撃を与えた存在である。

「これで手に入る成果としては満足した。欲張れば余計な体力を消費してミスの元だから。どうせ命を奪われてしまうのなら全力を出せる状況で構えていこうか」

 彼のこの声色からしてかなり落ち着いた状態か。それから考えてみてもかなりの狂信者である。実行部隊で前に出て闘っているのだがそれだけの体力はあるというだけだ。

(どうせ俺も使い捨てだ。どこかで割り切られてしまう)

 現在はザッハークがこの周囲を手に入れているとはいえいつまで持つかもわからない。どうせこの思考も読まれていてもおかしくはない。だがそうも言ってられない。

『君も出来ることは限られているでしょうし。敗北なんていうのは特に誰だって認めたくはなくても君はそれを気楽に済ませてしまう。組織にとってはブレが無くてこれ程扱いやすい存在もないよ』

 恐らくこの声はザッハーク本人によるものだろう。どうして誰かしらが感化されたというのではなくて負けて表舞台から消え去ったはずの者が今再び出てきたのだろうか。そんなのを聞いても使い捨てのこれに答えてくれるなんて思えない。

『諦めたくはないんですよ。敗北するかも知れない。これで何度目になるかも分からないがそれで後悔などしないから。だけれどやりそびれたことを思いだしてここまで出てきたんだ。ならばこそ世界中に迷惑をかけるのであれば精々目的のために礎となることを願っている』

 やはりこれがザッハークの正直な気持ちなのだろう。だとしてもそのもとに就いている者達にとっては自身の死が確定しているも同義である。ならばこそやるのは下剋上か。

(はっ、それが出来るのならはじめからやっている。裏切りすらも許してはくれないのだろうから。そもそも膨大な情報を抱えて処理をしなければいけないというのに程度の差はあれど配下の支配が出来ている時点で異常だ)

 それに叶うはずもない。膨大な情報を一度全てを叩きつけられてしまえばその瞬間にて脳が沸騰してしまうだろう。グツグツと煮だってしまってその場で膝をついてしまうのは間違いなしか。

「では先に戻ってくれ。どうせこれらを食い止めるのはこっちの役割だ」

 そして繁務はんむは傍にまで近づかせていた蜘蛛に抱えていた成人男性を投げ渡していくことをする。それで彼の周囲にへと近づいてきていた戦闘ヘリの集団をこの紅く染まった眼球で見据えていく。

 繫務はんむが手を振っていけばその蜘蛛というのはゆっくりと下がっていく。そして青い薔薇の意匠のあるその機体は航空機のそれにへと変形をしていった。異形の蜘蛛はそこにまで近づいていってポーンと大きくジャンプして乗っかっていく。そうすれば大きく速度を出していって飛行を始めていったとさ。

 たった一人の兵士を相手にするには明らかに過剰な戦力だ。だが繫務はんむを相手にするにはこれでも足りないくらいともいえる。

 この戦闘ヘリがどこからのものかといえばそれはアールアス連邦共和国のそれだ。

 当然ながらアルテミス・ロイドの部隊ではない。それはつまり危機感の共有が出来ていないやつらが向かわせた無意味に死んで来いと言われた連中。だがその事実も興味も繫務はんむにはない。お互い負けないように生き残るので必死なんだから。

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