一点のやらかし⑧

「あぁ、これはこれは面倒な事態になってきたらしい。これからの計画にだって支障が出るからこそご勘弁願いたいのですが。どうにもならないのはわかった上でだが」

 ザッハークが玉座にへと座った状態で、姿勢を崩していけばそこでカップ麺を啜る光景がその傍で見れてしまっている。世界から恐れられた怪物がこんな庶民的なモノを食べているのかと思うかもしれないが………………それはそれだ。このカップ麺はかなりの高級品で調達してくるのにぼちぼちの苦労をさせられた。

 それとしてザッハークほどの者が誰か叶わない相手に対して諦めるような視線を飛ばしていくのはあまりない印象だ。というよりもそのような連中は片っ端から排除してきたわけだから。それで現在まで活動をしてきたというのに。

 そんな彼ですら理不尽だとも不公平だとも不条理だとも考えてしまうほどの出来事というのはよっぽどだ。つまりは気軽に引き剥がすことすら躊躇われるのか、それすら難儀だと、まさか不可能だと断じてしまうほどのことだというのか。

「そうは言うが誰にも事の内容を話さないのは周囲が困ってしまう。それこそ腹の内に抱えたそれを出さずにいるのは不満ということになる。この今の面子を信頼していないのではとも思えてしまう」

「よくいうよ。お前こそが他の誰も信頼などはしていないというのを見せているくせに。私しかその素顔を見せてくれないのは特別扱いされている気分にはなるのだが。問題とするのであれば………………影響が出過ぎているというよりは、割り込んでくる大馬鹿の存在すら確認されてしまっているのだよ。彼らが何を求めて立ち上がってきたのかは知らないがあらゆる事象を飛び越えてくるのは誰かの不満をかうことになるのだと」

 ザッハークから遂に説明があるのかと思いきやそれが要領を得ない。聞いている砲としてはどうにも先へと進まないことにヤキモキしてしまう。

「いいから具体的に何があったのかの説明を求むとゆうてろうに。でなければもう逃げ出していくぞ」

「別にそんなつもりなどはあるわけないでしょうし。君は私から離れたりはしない。信じているからこそ付き合っていられる。それと北極の方にと大変なくらいの人員が送り込まれている。あれは個人での活動をしている者ではない。明らかにだれかの意思を通じて参入しているわけだ」

 相当に警戒の色を滲ませている様子であるザッハークというのを見せられてしまえば不安というのがどうしてもある。彼の強さというのとその性格も確かに知っているのだが、だとしても組織の首魁に備わっていたはずの自信が見受けられないというのはどうしても部下の足元が不確かなものにへとしてしまう。

 それは離れていくほど薄情ではないのですが。心配にもなるが、正直普段からこれであればそれを支えていこうというのになるわけで。別にそれであれば慣れて対応の仕方もないと対応が雑になっていっていくだけだ。

「そうですか。北極といえば………………えっ、さっきのでオルトス・ダイアモンドがいるとか言ってなかったか。だったら、奴のいる戦場が混沌なことになっているのではないか。氷見ひみ創夢そうむもラサナーデもいたりするのだが、あぁそういえばあの二人だっているだろうし。だというのにオブシディアンモノだったりとかムッチェチェが飛び出していったりしている現状を憂いなければいけないだろうともいえる」

 あの二人がいるのであればどうとでもなりそうなのだが残念ながらことがそれで済んでくれるほど世の中は甘くはないというのを………………自分自身というのが証明してしまっている。世界の敵というのは、その役割を奪われるのも憤慨モノだ。

「であればこちらも出撃の準備くらいはしておいた方がいいのか。どうせ一人であれば全部片づけるくらいはやってのけるさ」

「いや、それをされるとこちらも辛いですから。どう足搔いてもマンパワーというのが足りないのが現在だ。それで敗北を知らされるのはちょいとまた違う話になってくる。人員の回収くらいに留めて貰えると非常に助かる」

 向けられてくる視線というのが強くも胸に響く確かな信頼のこもったことであるのだがどこか心配ごとがあるようにも見受けられる。

「わかっている。ちゃんと生き残ってくるくらいはする。今更心配されるような仲でもあるまい」

「そうではない。横取りをされるなということだ」

 そんな一応とはなるのだが信頼の証をその声色で見せていた。それを後ろ姿を曝して手を振っていく者がいるのであった。


 笑ってしまうさねこれは。先ほどまで大穴からワラワラ湧いてくるような怪物をどうにか必死に討伐していたところで突然膨大なエネルギーというのが発生させていたのだ。どうにかして逃げ出していけば大穴からの脱出というのは成功したのだが。

 それで実際その後どうなったのかといえば………………わかりやすくも湧いてきていた連中というのが、その発生したエネルギーの柱によって一瞬にして消し飛んでいくことになったのだ。

 これにはもうその場にいる皆が戸惑ってしまうこと間違いなしだ。実際、氷見ひみ創夢そうむはぽかんと口を開けて土の地面にへと立ってその打ち上がっていく柱を見上げていくばかりである。言葉も出ねぇよ。

 というか直接柱にぶつかってそれを浴びてしまわなくても一定の距離さえあればエネルギー量の過多によって制御できずに崩壊してしまっている個体が多くいる。アニモは自分用に調整された航空機に乗っていたために、自身の精神も肉体も魂だって保護してくれるようになっている。圧倒的な火力や能力のための調整のため使いやすいというよりも自らの身を守るための鎧という役割が大きい。レスティラというのは個人を英雄に仕上げるという誰もが抱える夢すらもその手に掴ませてくる。それも才能や適性があるのが望ましいというのがあるのでどうせ他と変わらないとはいえるのだが。

 それでも個人のために機体設計すらもおこしてくるのだから整備などの維持の方が心配になってくる。規格の方で言えばある程度は揃えられているので普段は問題にはならないのですが。

 ムッチェチェはそのエネルギー量ととんでもない質とか内容において衝撃を受けている。想定よりもかなり強烈なものであり、それで驚いてしまったというのが正直なところだが。あんな怪物共が一瞬で消し飛んでしまうほどには弱かったのか、それとも星にあったエネルギーというのがそれほどまでに強力ということになるのかとも。

 そしてティアマット・グレイドといえば既に鎧を展開しておりそれでエネルギーが湧いてきている、その余波というのを弾いている。周囲を見渡していけば誰もがこれからどうすればいいのかというのを思案しているように見受けられる。それでどうにか現状の情報を確認していこうとしているラサナーデの姿が目立っている。

 キーボードを叩いていけばそこにあるのは必死に作業を行っているラサナーデであるのだが、その表情はどこか不安げである。この場面であれば全くどうしておかしくはないのだがそれでもまた別の懸念があるように思える。

 そのような中でアニモが通信を受け取ってみればそれが彼にとっての更なる不安を誘うことになる。それが旧知の間柄というのだからそれはもう、信頼していても悪い知らせというのは気配で一気に飛んでくることになる。

 カタカタとキーボードを操作していく必要もなく向こうからつなげてきていた。

 意を決して応答をしていくアニモである。

「どうしましたか。別にこちらは問題なく活動をしていけるほどの元気はありますのでね。そちらはどうですか。当然ながら負けてしまうほど脆弱でないという長年の信頼というので証明されていますか」

「………………………………………………………………………………………………悪いなぁ。そっちには元気いて欲しい。二人一緒にというのはいつもいつも無茶ばかりですから」

 エストア・ニブーゲルであろうと思われる声が確かに聞こえてくる。微かに力なく覚束ない、言葉もすぐには出てこないような状態となってしまっている。それには懸念していたことが現在にまで圧し掛かってしまっているように感じる。絶対にないと高を括ることをしていたからだろうか。

 アニモの手先が震えているのが実感として伝わってきてしまっている。全身からしてこわばってしまうのが………………その全身の力が抜けていくのがその全てとなるのだ。

 全てを失ってしまう気もする。既に手遅れにでも感じてしまうのが恐ろしい限り。

 彼がいなくなってしまうことが信じられないという………………どうでもいいやもう………………ハハハハハ。


 クソッタレめ。全身の各所が動かずにいるのだがそれが絶望的にだが、気まずいことになってしまっている。相手がこちらを圧倒的な戦力の有してそれを以て駆逐してくるのがここまで辛いことになってしまうとは。

 目の前にいる純白の翼を有している怪物というのを目の前にして意識を失いかけている状態だ。その怪物が去ってしまうのが、一矢報いることすら叶わないのが口惜しい。いや、これはただただこういうのが正しいのだ。悔しいと。

(冗談では済まないのだよ。自身の命をチップに遊んでいられるほど余裕はない)

 荒れに荒れている天にへと手を伸ばしていくエストア・ニブーゲル。そこで彼の視界は真っ暗に染め上がってしまった。




 たった一人のつわものの死などは大した出来事ではない。そこにもう一人加わろうともさして変わりはしない。そして世界というのはそうして流転を続けてしるのだ。どうしてと嘆こうとも知っている情報はたったこれだけしかない。ちっぽけな石ころが転がっているのでは誰も救えない。

 創られたのは究明のためでも救命のためでもなく、ましてや糾明の為なんかではないというのになぁ。だとしても結末は変わらない。結局はこれに尽きる。敗北をしたのだよ。

 天使の、そこから更に使い走りの者にへと。あっという間であった。一瞬であるよあれは。たった一体だというのにこの様とは情けないにもほどがある。

(今度こそはこの手に勝利を欲する。これっぽちの希望さえモノに出来ないのであれば………………………………)

 そこらに転がっているばかりの石ころであったはずなのに自我というのがはっきりとあるのを自覚していてなおそれに気づいてない。手元にあった万能感が塵となって失われてしまえばそれを忌避するのは当然の感情だろう。それをモノでしかない誰かが感情として抱えてしまうことが珍しいというだけで。

 笑いたくてもできるはずもない。全身が破損してしまえばそもそも思考することすらも奇跡に近いというのに。それで諦めすらもつかない自身をも嘲笑してしまう。

 周囲にいる者達の影響かは知らないがどうしてもひねくれてしまうらしい。どこまで行っても狂気のその先にへと手を伸ばしてしまったモノというのは、それが欲しくても手に入らないらしい。ホラ、こうして手元に入ってくるものだって役に立たない自分の世界を有するちっぽけな意志ころだ。


 アニモの乗っていた機体が突如としてその動きを止めてしまったのが周囲の者達の目に留まる。その理由というのが分かりはしない。あまりに突然であったから誰もその心当たりとなる出来事を目撃できていないのだ。別に攻撃を受けて損傷をしたわけでもないのに、ではエネルギー切れでも起こしたのかといえば多分違うだろう。

 エネルギー管理くらいはアニモであれば正しく丁寧にと今までおこなってきたはずである。それこそ突如として急激に減少していったわけでもなければ起こりえない事象であろうとも。

 どこかの誰かにいきなりエネルギー吸収でも受ける事態になってしまうとは思いもしなかったろうにとしか言いようがないが………………。そんなものは外野の推測でしかない。特別どこかを損傷していてそれが時間経過とともに悪化していったというのであればとも考えてしまうが。

 結論としてはアニモ自身の不調でしかない。彼に何かがあったという事実は変えようもないこと。ガクガクと機体が動いているのだがそれが非常に気味が悪いことにとなっている。

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァバババババババババアアアアアアアァァァァァァァッ‼』

 そして15mクラスの機体が震えてしまえば周囲でそれを遠巻きに眺めている者達にとっては恐ろしいことこの上ない。ティアマット・グレイドは思わず息の呑むことをしてしまう。

 彼の人となりというのは知らない。隠れてはいたがマークが確認できた、それはレスティラの者であるという証明か。

 わざわざやってきたというのであればそれだけの理由がある。誰のことを言っているのかといえばバックパックを背負った状態で飛んできている緑色のロウテイにへとだ。

 望遠機能もあって状況把握としてはかなりの能力を発揮してくれる鎧である。はるか先にて飛んでいる航空機にだって気付きはする。

 だがよそ見をしていたのがいけなかったのだろう。どうしても視点というのは、注意というのはそちらに向けられてしまうのだ。

 そうすれば一体どうなるのか。異常な状態で立ってしまっている兵器の類から目を離せばというのはわかりやすい光景。

 照準をこちらに突き付けられて高出力のビーム砲が飛んでくることになった。それはティアマット・グレイドのその鎧でさえも突破してしまうともされている攻撃である。回避など今からでは間に合うはずもない。

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