極とは廻る③

 ガタガタガタガタ震えながらも動いていくだけの理由になる。自分にとっては地元ですらないと思われる大地に足を踏み入れ、そこで命を懸けるのは無茶なことだと聞いているモノ。

 限界を探して戦っていても食われる場合がある。回転をつけろと走ったところで回ることなどない。

 自らがゴロゴロと転がっている犬や赤子と比べてしまえば自身の自由など少ないように感じてしまう。

 その命を稼いでくる行動は無茶無茶だる自覚はこの胸にしっかりと存在している。

 独りぼっちであちこちを動き回ることなど言ってもまずはこれに限る。独りぼっちでの探索など心底怖く怯えてしまう。

 まぁそんなことをあの連中がいればそちらの方にへと駆け寄ってしまうだろう。ただ行ってしまえばすぐさま蹴り飛ばされてしまうのが目に見えている。

 とっとと帰ってから元気に活動をしていかなければ、その様子を見せてヤラネバ心配をされるというくらいわかっている。

 だからこそこの寒い中で必死に目や耳を凝らして周囲の危険を怯えながらをゆっくりと動いていくしかない。でなければいつも通りの日常など戻る気概すら気楽に取り戻すことなど出来やしない。

 そこまで自分が重く感じる理由などもわかっているというのに何故だろうかと考えてしまう。あぁ全くあの戦艦に残っている皆も気になるところ。

 というか、まったくあの戦艦に乗り込んできた怪物でさえ正体が分かったわけではない。心当たりがあるかと思って確認を取っていたがまぁ当然あるとすればあの変態怪物が戦ったという真っ黒な怪人だろうか。

 油のようであったらしいがそれでも全てを聞いたわけではないというがあれは正確な部分を言っていなかったように見える。あれは大体予想は付いていてもおかしくないくらいの。

 であれば他のものだって多少の想像力を働かせてしまえば見えてくるものだ。あれはきっと煙草の怪人………………か。いや、そもそもデスパレードに出てきたのとあのドロドロ真っ黒なのとを同様の存在であると考えるのは無理がないだろうか。

 そんな馬鹿なことをどうにか思考していたリグネアであったがそうして彼女がどこを走っているのかといえば………………………………多少寒いくらいかこれは。

 氷山に落っこちてきたばかりに周囲を見渡せばすぐに進むべき道を見せてくれたので助かりましたと涙を流しそうになる。だがそこで凍ってもらっては困るのでグッと堪えておく。

 躊躇いはしつつも氷山に穴が開いてしまっているのだからそこを目指していくばかりだ。ここでしっかりと通路が出来上がっているので探索をするのにはなんの問題もないらしい。為して他人事だ。

 恐る恐る歩を進んでいけばかまくらかというくらいに熱が籠ってる。これで壁の表面が融けている様子がないので思わずのけ反ってしまった。

 カツンと軽く壁を叩いてみればやはり頑丈なモノであると理解できる音が鳴ってくれる。

「まったく………………どうしてこんな果てのない未知を探す道なんて派手に怖いやり方にしか思えない。それに外と比べてしまえばまだましには思うけれど寒いのは変わらない。せめて………………変化のない景色は飽きるって」

 思わずそんなことをボソッと呟いてしまったがそれには誰かが聞いているわけないと当然解釈を求める存在などあるわけない。

 だがそんな希望など容易く打ち破ってくるのが物騒な戦場の界隈かよ。

 パチンという何かしらが弾けてしまった音が耳に響いてきてしまう。これによって胸を騒めかせるこの心音と共に恐怖が震え上がってきてしまう。

 そうして背に向けて強大なまでなエネルギーが飛ばされてくる。それは全く以て冷たい視線というのを感じてしまうくらいなものか。

 ばっちりと後ろにへと振り返ってみればそこには先ほどまで進んできた道でしかない。これはもう悔しくもない、物音が既にただ聞こえてくるくらいおかしくはないのかよ。

 まあそんな調子で肩透かしを食らいながらも振り返って元の途にへとみればそれは全く以て心臓に悪い光景が………………というかモノがあった。

 そこにいたのはとんでもない天井に脚を突き刺している変態さんであったのだ。これにはもう言葉が出てこない。というよりは警戒の態勢を全力で取っていく。

(陽気に笑っているところ悪いが振り切らせてもらいます)

 口には出さずとも一応の宣言をしておく。何せ目の前に引っかかっているのが明らかにまともな人間の形をとっていないのだから。その冷たい目には一切の異物を認めないという気概が感じられるが。………………そんなことなどこちらには関係ない。

 カツカツとヒール部分によって足元の氷を鳴らしていく。そしてばったんというくらいの、何かしらが倒れてしまう音を確認する。

 そのヒール部分が削れているようにも聞こえているが知ったことではないとばかりに行動をする。

 軽く息を吐いていく。が、その息というのが周囲が氷で囲まれているというのにかなりの熱量を有しているのだ。これにはぶら下がっている誰かというのも怪訝な目を浮かべてしまう。どうやら感情というのはしっかりと備わっているらしい。

 決めた、一瞬で決める。その瞬間にてこの通路にて途轍もないとはいえなくとも巨大な爆発が巻き起こってしまうことになる。

「――――ッ⁉」

 結論としてどうなったのかといえばそればただただぶら下がっていたものへの注意と飛ばしていきその後にてそいつを振り切っていっただけだ。

「ギャハハハハハハハッ‼………………おっと危ない」

 もうひっどい笑い声を響かせながらも走り去っていく女の子というのはとんでもない悪夢だろうか。ただそれよりも物騒なくらいな恐怖体験というのはリグネアだとしても目にすることなどないか。

 シャコシャコといった気色の悪い足音を耳にしてしまう。というかこれを足音と解釈してもいいのかというくらいの不自然なくらいには動き回っている存在であると認識した。何かしらがスライドしているのかというくらいな奇妙な音が通路に響いてきているのだ。

 これに追いかけられていると考えていいのだろうか。であれば望んでもこんなのには尻尾など手を伸ばされたくはない。曇り顔になってしまうのも当然、不安で一杯になってしまうだけ。

 やっぱりこの物音は天井の方からくるものだろうか。視線を向けていくのも臆病になってしまうくらい。

 だが確認しないわけにもいけない。あらかじめ、念のためというくらいの気持ちで後ろにて爆発の術をぶつけていく。ドカーンという派手な音が鳴ってくるが全く全く以てこれは威力のあまりないこけおどしくらいの効果だろう。

 こうなるならナパーム弾でもあればもっと楽に手順を踏んでいくことが出来た気もするが、そんな都合のいいナパーム弾などあるはずもないか。

 残念ながらもこれくらいでは沈んでくれないのが現実の夢というのか。

 後ろにて巻き起こってきてしまった爆発を抜け出してきた存在というのを確認するのだが。正面にはとんでもないことに二手に分かれてしまっているのでどちらに進むべきなのかと迷ってしまうのだが。

(右か左か。どちらを進んでも大した差はないと思われるがそれでも謎が多い。というよりは一切合切の正体が掴めない。ならばッ)

 そこで思い切った行動を撃ちだすことにした。あぁ正直言えばこのような暴挙を行うのは無茶なことだ。

 もうこの散々なまでの行き当たりばったりは自分でも呆れてしまったらしい。火力を点けて一瞬にして天井にて蹴りを叩きこんでいく。そこだけは明らかに色が彼我うように感じたのは自分の気のせいだとも思う。

 だとしてもこれでバラバラと崩れ落ちていくのを落下しながらも眺めていればそれが大体あっていたと理解する。まさかただの暴力で壊れてしまうくらいに脆弱な造りをしているとは思えないからなぁ。

 これに驚いたからとは思えないがあの怪物というのはこちらに視線を未だに外そうとしないのが非常に怖いと感じてしまう。そこで目元を落としていけば観念したように足を重力の向く方にへと落としていった。

 異様なまでに真っ白な剣を取り出したかと思えばそれをこちらにへと振りかぶっていくことをしていた。これによってかは分からないがその剣閃が過ぎ去った後に一拍おいて強烈な突風が巻き起こることになった。

 当然ながらも周囲が氷で覆われているというか氷そのものであるのだから。こんなところで風が吹いてくればとても冷たい、怪我では済まない傷を負う破目になること間違いなしだ。

 それも攻撃性のエネルギーを付与しているおかげであらゆる怪物にしっかりと通用すること間違いなしか。それであれば威力が足りなくて通らないという場合があるのはどれでも同じなので考えてもどうにもならない。

「だけれど、こちらは種族としても未熟であるがゆえにきっかりと対応を迫られるのが辛いのですよ」

 片目に付けられた眼帯を押さえながらも何処からともなく取り出したのはその身の丈としては大きなバットであった。

 冷たい突風に応じるが如くリグネアは手元からぼちぼちな大きさの球体を取り出していく。そして正面にへと軽く投げていき握りしめていたそのバットで………………行ったのはその球体をバットで飛ばしていき分かれ道の中央の空間へと送っていくことだった。これによってバットが燃え尽きてしまったのはご愛敬である。所詮は木製の大量生産品であるし熱量に耐えられるほどの出来のバットなど気軽に用意できようもないために一発だけでも堪えてくれたのが運がいい………………というのではなく誤魔化しての使用だっただけ。

 これで中央に置かれた球体はそれを通り過ぎる前に爆発を起こしていった。吹き飛ばされることになるのは術者であるリグネアをも含めて空間にある全てである。

 こうしてバラバラと砕け散ることになる氷の建造物。このあちこちに脚を掛けていた謎の人物としてはその身を爛れさせている状態となってしまった。

 綺麗なまでの肉がこうして真っ赤に見えているということはただの人間なのだろうか。冷たい氷が落ちてきてしまうのが見えれば、それが近づいてきてしまえば簡単に溶けてなくなってしまうことを確認する。

 肉体にはここらの氷で奪われる熱を露ほどに思わない異常なまでの体温をしているということだろうか。これ以上の相手をするのであればよっぽどの脅威になる。

 だからこそするべきことを思いだした。なんていってもまずはこれになる。

 リグネアは思い切った勢いによって飛び上がった。そして氷の地面に落ちていきうつ伏せに倒れることになる。

 そして出来上がった光景を観れば誰もがこのように述べるだろう。なんて美しい土下寝だ。ふざけているとしか思えない。その結果どうなるのかというのは、結末に至ることなどなかった。

 キュルキュルと何かレコードが廻っているような音がリグネアの耳に入ってくる。

 それで目の前にいたその謎の人物の手元から鳴っていた。彼が握っていたのは巨大な光り輝き反射するまでに磨かれている金属の装甲が着けられた物品であった。その物品は当然ながらリグネアにへと向けられている。

 回転しているようなへんてこな音というのもリグネアへと向けられた方から鳴っている。そこには筒のように穴が開いており覗き込んでみれば眩い光が拝めること間違いなしというモノだ。

 この状態で告げられることなどは当然ながらわかり切ったモノ。しっかりとこんな体勢を取ったのを散々に後悔した。

「申し訳ない。誰かが侵入していたとするのなら排除しろと言われているのでな。勘弁だが………………こんな人数で行う仕事などではないはずなのだがなぁ。どうしてもというのだから怖いなぁ」

 やはりキュルキュルという音が鳴っているのは変わらない。そこにあるのは攻撃性のエネルギーが指向性を持たせてこちらにへと向けられていけば多少の恐怖は感じてしまう。

 ドゴ―――ンッ‼という大きな音を立ててしまえばそれによって起こったのは強烈なまでのエネルギーによる多量の速射砲が放たれていくのみだ。

 あまりにも数を撃ちすぎたせいで視界が覆われてしまったがこれで前にいる女の子の姿を見失うほど間抜けではない。

 だが撃ち放った後に出てくるのは誰かがいたという痕跡など残ってはない。ただの大穴が地面に空いてしまったのみだった。

 


 

 世の中暇だ暇だなどと叫んでいる者はそうしていなければ自らの置かれた状況に冷静になれないからだ。それはきっと余りにも忙しくこうまでして己を誤魔化していなければやっていられないから。

「だからこそ目の前に出てきたこのような作品の相手をするのは控えたかったのですが」

 オルトスの目の前に置かれていたのは途轍もなく巨大なでは済まないだけの大きな重厚な扉である。派手な装飾がされている所から考えても非常に重要な役割を持っているらしい。更に言ってしまえば大変に重たい。触ってみれば容易くこれの大体の重さが想像できてしまう。

 軽く力を入れて押したところでびくともしなかったのを考えるに何かしらのシステムを組み込んでいるのだろう。でなければ………………面倒になれば馬鹿力でごり押しすればいいだけの話だ。

 そんな心底馬鹿なことをしないように今作業をしているわけだが。

「まさかこんな時に自前のパソコンを持ち込んだ自分を褒めたたえたいと思うとは想像もつきませんでしたよ。これで楽が出来るならその方がいい」

 そう、現実オルトスはパソコンからケーブルを伸ばしてドアの横にあったパネルを開けていきそこの線と繋いでしまっているのだ。正直言ってパソコンが持ってくれるかという心配があるが。これくらいでデータ量が負けてしまうほど軟弱ではない。

 必死になれば仕事もはやくこなせるわけではないがやはり処理は強くなる。面倒な仕事をぶん投げてきたとここにいるあいつには文句を言ってやりたい。

 ここで軽く笑みが零れてしまうのが自覚できる。エンターキーをたんッと、もうノリのいいカッコよく押せた自分にはおかしなことだ。本当に笑ってしまってもおかしくない。

 こうして余りの重量であるがゆえにゆっくりと扉が開いていく、その際に地面にへと擦ってしまっているのが目に付いてしまうのは何故だろうか。これはもう性分だ。

 今更変えられない。

「だいたい君であればいつもの話ではないか。この全てを唾棄するべきものだと見下してきたというのに。美しくないからと、それならば全てを更地にした君は全くどこへいったのか」

 ただその扉の奥にあったモノというのは決して無視など出来やしない。圧倒的な脅威であるのだが。

 具体的にいえば、それらは高さ2mくらいの人型に申し訳程度で整えられた自律型兵器群がこちらをしっかりと見据えていたのだ。それどころではなく数多く揃えられている銃口が全てとはいかなくともオルトスにへと照準を合わせてきているのだからこれも含めての芸術。

 そしてそれらの一番前にまでわざわざ出てきたのはオルトスにとってもよくよく見知った顔であった。それがもう変わり果ててしまっている面であるのは視界に入れてしまったオルトスであってもわかること。これで視線を外すことをするほど薄情ではない。

「どこにもいっていない。ずっとここにいますよ」

「だろうな。君ならそう答えると予想していた。これはどちらが裏切ったという話ではない。誰もが約束など期待などするものかよ」

 これで遠慮する理由は消えたとばかりに瞼を降ろして帽子を目深にかぶる。そして行われるのはオルトスが予想していた通りのこと。

 無数にある銃口からオルトスにへと向けて雨あられと弾幕を放ってきていた。瞬時に躱して目の前にいるその銃口にへと向かって走っていく。だが当然ながら真正面にわざわざ誰かが立っているということは目と頭の役割を成していること。

 そうでなければただの我が儘で出張ってきたのか。そうだったら上の者への正気を疑う。それはよっぽどこちらを侮っているらしい。大局には影響しないとでも。

 まぁ走ったところで適宜照準を変えてこちらを追いかけてくるのだから気軽に近づいてはいけないか。

 そこで数発の砲撃が放たれてきたことを視界に入れる。これには先ほどまで冷静に対応をしていたオルトスでさえも驚いてしまう。驚いたのにはそれが撃たれたことよりもまた別の理由があるらしいが。

(早いし速いモノッ⁉弾丸があれだけの速度でくるとはどうやら向こうの技術力を舐めて掛かっていあたらしい。生産力もそうだ。これだけの数を揃えるのは苦労しただろうに)

 それだけに本物の強者には全て一瞬で破壊されてしまうほどの玩具でしかないのが非常に悔やまれる部分であるのだが。

 そして当然ながら多くの火力を、この自動機械は揃えてくる。このオルトス・ダイアモンドにへと。

 ガトリング砲まで備えているのは驚いたが所詮は金属の塊を撃ちだしているだけ。

 オルトス・ダイアモンドは地面に降りていき目の前にいた一機を咄嗟に持ち上げて正面からの弾幕はそれで防いでいく。

 これでは当然ながら他の方向からのモノはがら空きでストレートに食らってしまうわけだ。そこで堅く鍛えられた氷の地面を蹴りつけることをした。これで周辺は大きく揺れることになる。たった一瞬であるがこれでバランスを崩すことになるのが出来上がったばかりの新型機の残念なところか。調整が終わっていなかったらしい。

 ブウッンという勢いを鳴らしていきながらもどうにかバラバラと体勢が崩れていくことになる。ガッシャ―ンという何かしらが割れてしまう音が響いてくるがそれに構わずにその自律型兵器群は動いていくことになる。

「結構圧倒するくらいはできるものですね。随分と火力を成していてもいくらでも対応は」

 出来てしまう。現にこうして一切の掠り傷などを負わずに戦えているのが、機械ばかりに対して破壊の限りをしている。

 それで破片が砕け散ってしまうのが踏まないようにするほど靴が貧弱なわけでもないので歩いていくのにも躊躇うことなどしない。

 そして視界の端に映ってしまう砲口というのがどうしても気になってくる。空気感というよりも空気の成分の類が変わってきているのか。あぁ全く以てこの中では常人が過ごしていくのは辛いものか。

 成分どころか濃度が変わって、引き抜かれてくるような空気が薄くなってきている感触がどうしてもこの胸に届いてきてしまう。

 どう足搔いてもこの程度にしかならない。この兵器の類をぶち壊していく過程で視界に入ってきた砲口にへとガラクタに成り果てたモノを全部そこらに押し付けることをしていった。

 だが悔しいことにその積み上がった中からグショサ――――――――――――‼という物音を立てながらもすらりとした足で蹴り飛ばしてくる存在というのを確認してしまう。

 そこで周囲に散布されてしまうのはわかりやすいほどの毒ガス。これはオルトス・ダイアモンドであっても体調を崩してしまいその場で命を落としてしまう危険があるほどの。

 咄嗟に扉の方にへと視線を持っていってみれば悲しいことにしっかりと戸締りがあれていた。自分が暴れるのに夢中で閉まるのに気づかなかったとは思えない。というよりは思いたくないという感情が強い。

 であればあれはオルトス・ダイアモンドにへと気づかれないように自然な動きで以て閉められたということになるのかよ。

「―――――――――――――ッ⁉ァァァァァァァァァァッ」

 声にならない声というよくわからないモノが喉を震わせていきながらもその身体が力なく倒れていってしまう。

 そんな無様な姿を晒してしまって、それが滑稽だったのか彼が悠然と歩を進めて近づいてくる影が目に映ってしまう。

「アァァアァァ残念でしたねぇ。君がこうまであっさりとやられてしまうのは正直信じられませんがそれでもねぇ。遂に実績として手に入ってくれるのであれば非常に嬉しい」

 オルトス・ダイアモンドを心底見下した様子でその背を踏みつけていくことをしていた。ちなみにいえばこれによってかなり鈍い音が全身にへと響いているのが把握される。恐らくというか確実に背骨や肋骨がボロボロとへし折られてしまっている事だろう。旧知の相手にこれは流石に慈悲がない。背にへと加えられている力は現在進行形で増しておりこのままいけば骨だけでは済まないか。内臓がベリべりとと潰れていくのが目に見えている。というか正気を疑ってしまうほどに音が鳴っている。脳に響いてきてしまっている。ボロボロ気持ち悪い。

「………………………………つまんないですね。簡単に勝ちを確信してしまってしゃべらせる余裕を与えてしまうなど。まぁそれだけに対象を生け捕りにするのが難しいということになるのだが」

 そして細胞という細胞が足で摺りつぶされている現状がある。だというのにオルトス・ダイアモンドは口を開いていくことを可能とする。ガぼガぼと頭までに悲鳴が脳をうるさくつんざくのが聞こえるがそれを処理など今の頭で出来るはずもない。

 それに苛立ってきてしまったのか一発の蹴りを放ってきた事によってオルトス・ダイアモンドの頭部が弾けてしまった。上顎がから飛んでいったのを考えればその下顎が残ったということにある。

 首の骨すらしっかり折られてしまっておりこれで声など出ようはずもない。

 だがこうして砕いてきた者にとっては満足のいく結果に終わったか。そんなはずないとばかりに震えてしまっているのが彼の怯え、生命の危険を伝えてきていた。オルトス・ダイアモンドは既に傷だらけで虫の息というのがこの場面を示すので近いのでないだろうか。眼球などは破砕されてしまっており動けるはずもないというのに。

「………………………………なんでまだ意識を失っていないんですか。まだ戦えるなどとナゼ望んで、どうして敗北を認めないのか。せめて潔くその身を差し出してくるのなら可愛げがあるというのに」

 そんな風に問いただしたところで望んだ答えなど返ってくるはずもない。どうせ腹も潰れている。徹底的にその身を砕いて未だに生きていられる存在などそんな生物は居てはいけない。

『それはお前が全てを見通したわけではないから』

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