第68話 さよなら

 琉空りくちゃんは、話を続けた。


「けど、決して人を殺したいという欲求はない。ただ、死体が見たいんだ。でも、普通に生活していて死体を見る事なんてないだろ?だから、小動物に手をかける事を始めてしまったんだ……」


「クッ……」


 キリちゃんは、怒りに満ちた気持ちをグッと我慢し、握りしめた拳を押さえた。


「そして、ある時Dr.ペストが俺の前に現れた。アイツは、俺がネクロフィリアだという事を知っていた。そして、こう言ったんだ……


 女子高生の死体が見たくないか?


 ……と」


 琉空ちゃんの目には、涙が溜まっていた。


「俺は、Dr.ペストに怯えながら、ふざけるな、何を言ってるんだ!と答えたよ。そしたら……一生に一度くらい自分でを作るのも悪くないと思わないかい?って」


 菜々花ボク達は、琉空ちゃんの話を聞き 恐怖で動けなくなっていた。


「そして、アイツと同じペストマスクを渡された。もしも俺が一人ヤッたら、また今度 生の死体を見せてやるとそそのかされたんだ。そして、俺は……ヤッてしまった。公園で、城田加奈子さんに手を掛けたんだ。まさか、菜々花に見られてるとも知らずに……。それからというもの……アイツが犯行をする度、誰を何処で殺害したと連絡が入るようになり、俺は欲望を抑えきれずに見に行ってたんだ」


 琉空ちゃんは、高架下に響く程 大声で泣き出した。


「俺は人殺しだ!どうしようも無い変態だ!でも、神山姉妹をヤッたのは俺じゃない!信じてくれ!じゃないと……また犠牲者が出てしまう。俺は、自首するよ。皆を裏切って、本当に申し訳ないと思っている……」


 琉空ちゃんは、肩を落として力無く泣き続けた。


 ボク達は、何にも例えようのない気持ちで、琉空ちゃんを見る事しか出来なかった。


 キリちゃんが、最後の言葉を述べた。


「オレ達は、琉空の事を一生許すことは出来ない……絶対にだ。でも、お前が罪を償うことは信じたいと思う……」


 琉空ちゃんは、ただ黙って下を向いたままだった……足元のコンクリートは濡れて、色が変わっているのが見えた。


 ボク達は、寄り添い合い 河原を後にした。




 さよなら、琉空ちゃん……


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