どうも夏休み明けくらいから様子がおかしいことには気付いていた。気付いて欲しいのか欲しくないのかよくわからなかったから、気付いてないふりをした。


隣で寝息を立てる北村はたまに寝言を呟く。多くは取り留めのないことで、気にする必要のない戯れ言だ。


時折、私や西川の名前を呼ぶ。そのときの北村は決まってうなされている。


私だって好きでこいつを不安にさせているわけじゃない。その不安を取り除いてやりたいとは思う。けれど、どう伝えればいい。何を言えばいい。結局言葉が空回りして、いつも冗談みたいなことしか言えなくなる。


「あと何日だっけな……」


カレンダーに答えがあるはずもない。私は布団を大袈裟に被り直して目を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る