第20話 パールさんの魔法授業 1



 パールさんに魔法を教わる事になった俺と、既に教わっているカチュアちゃんと一緒に、パールさんの魔法の授業が始まる。なんだかわくわくしてきた。異世界ときたらやっぱり魔法だよね。


「それでは、まず始めに魔法とは何か、カチュアさん、おさらいです、答えてみて」


「はい、えーっと、魔法とは、原初の奇跡、この世界が生まれ、そののち、命あるものの全てに宿る魔力マナを用いて発現する、超自然現象です」


おお! 凄いな、カチュアちゃん、なんかそれっぽい事を答えている。ちゃんと勉強しているんだな。


「はい、よくできました、ヨシダさん、理解できましたか? 」


え? さっぱり。


「えーっと、つまり、全ての命ある人に魔力が宿っている、という事でしょうか? 」


「概ねそうです、しかし、人に限らず全ての「命あるもの」の中に宿っています、ヨシダさんやカチュアさん、そして私にも等しく宿っています」


おお、なんと、俺にも魔力が宿っているのか、しかし、俺は異世界からの転移者なのだが、それでもこの世界のことわりに則っているのかな? あまり自信無い。


「いいですか? お二人共、魔力マナとは確かに私達の中に宿っていますが、その総量は人それぞれなのです、当然、マナの低い者も当然の様にいます、いえ、寧ろ殆どの人がマナの少ない器なのです、ですので、もし私の教えを理解できたとしても、うまく魔法が使えない事だってあります」


ふーむ、つまり才能が無ければ魔法は使えない、という事か。俺にはスキル「回復魔法」があるのだが、これはどうなんだろうか? 


「魔力はマナと呼ばれておりますが、これは私達がそう呼んでいるだけで、さして意味は変わりません、さて、魔法の属性ですが、まず基本の4大属性の火、水、土、風、この4つが基本となる自然を操る事が、所謂いわゆる、攻撃魔法となります、基本的な事ですが、今の私にはそれぐらいしかお教え出来ません、他にも、神聖魔法、暗黒魔法、物理魔法、精神魔法、などがありますが、これは上級魔法と呼ばれていますので、お二人にはあまり関係無い事ですね、特に気を付けなければならないのが、暗黒魔法です、これは禁呪指定されている魔法が多く、犯罪等に使われる事が多い為、これは教わらなくていいですよね」


・・・え? そんなに沢山の種類の魔法があるのか、全部覚えるのは流石に出来そうに無いな、どれか一つに絞った方がいいかもしれない。


「カチュアさんはどんな魔法使いになりたいのですか? 」


「はい、私は、・・・やっぱり攻撃魔法を使える様になりたいです」


「・・・そうですか、どの属性の魔法に親和性があるのか、まだ解りませんが、これだけは言っておきます、魔法には才能が無ければ扱う事が出来ません、それだけは解って下さい」


「は~い・・・」


なるほど、才能か、俺には果たしてあるのだろうか? スキルだけでは駄目かもしれないな。


「ヨシダさんはどんな魔法を使いたいのですか? 」


「はい、実は回復魔法を使えるようになりたいと思います」


パールさんは顎に手を当て、言葉を選ぶように俺に言った。


「なるほど、回復魔法というと、神聖魔法ですか、何故回復魔法を使いたいのですか? 」


何故? どうしてか・・・、言われてみれば確かに、何故俺は回復魔法を使える様になりたいのか、自分でもわからないな、・・・やっぱり傷ついた時にすぐに回復したいからかな。


「ヨシダさん、私は神聖魔法は専門外なのですが、聞いた話によると、回復魔法は誰かを癒す、又は、癒したいと思う気持ちが大切だと聞いた事があります、女神教のシスターは僧侶のクラスでは無い人がいますが、それでもシスターによっては回復魔法が使える人がいます、ヨシダさんは敬虔な女神教徒なのですか? 」


「いえ、俺は女神教徒ではありません、」


そもそも、女神教というのが初めて聞いた。そういう宗教や教会があるのかな。


「でしたら、ヨシダさんには回復魔法が使えるかどうかは解りませんよ、神聖魔法は三柱の女神様の教えを伝える女神教会の人でなければ、扱う事が出来ないかもしれませんよ」


「そ、そうなのですか? 知りませんでした」


うーむ、やはり回復魔法を使うにはそれに見合った職業ジョブじゃなきゃ駄目なのかもしれないな。僧侶とか、神官戦士とか。


「別に、魔法使いでなくても魔法は使えます、ただ、魔法が使えるのならば、やはり魔法使いになるべきでしょう、魔法使いの数が少ないのは事実ですので、」


そこで、カチュアちゃんがこんな質問をした。


「パールさんはどんな魔法が使えるのですか? 」


「私ですか? 私は水魔法が少しと、補助魔法が使えます、成人の儀の時に女神教会のシスターから、私には魔法使いの才がある、と告げられました、なので、私は魔法使いを志した訳です」


「へ~、やっぱり成人の儀で解るものなんですね、私も早く15歳になりたいな~」


・・・15歳? 


「すいません、ちょっとよろしいですか、成人年齢とはいつからなのですか? 」


俺の問いにカチュアちゃんが答える。


「どうしたの? ヨシダさん、成人年齢は15歳からだけど? 」


15!? マジか、日本だと二十歳から成人なのに、この世界は15歳で成人なのか、早くない。


「いえ、ちょっと確認を、」


俺がびっくりしていたら、話は元に戻る。そうだった、魔法を教えてもらうんだった。


「どのような魔法でも言える事なのですが、魔法を使うには4つの大切な事があります」


「4つ? 」


「はい、まず、魔法の知識、これはどんな魔法の効果がある魔法なのか知る為に必要な事です」


「魔法の知識ですか」


「次に、魔法の才能、これが無ければ魔法は使えません」


「才能かあ~、私にあるのかなあ~」


「3つ目に、魔力マナの総量、これが無いと魔法の知識があってもうまくできません」


「マナは誰にでもあるんでしたよね、これは人それぞれといった感じでしょうか」


「最後に4つ目、魔法の発動体、これが無いと魔法は発動しません」


「魔法の発動体ですか? それはどういった物でしょうか? 」


「魔法の発動体とは、体の一部に身に着ける物なら何でもいいのです、例えば指輪とかイヤリングとか、ネックレスなんて物もあります、それを身に着ける訳です」


「なるほど、魔法の発動体ですか、」


「先程も言いましたが、私は神聖魔法は専門外です、なので回復魔法が何を触媒にしているのかは解りません、おそらくですけど、なんらかのホーリーシンボルではないかと思います」


うーむ、回復魔法を使うには魔法の発動体ではなく、ホーリーシンボルが必要という訳なのか。


「以上、この4つが魔法使いにとって重要な事です、わかりましたか? 」


「「 はい 」」


なるほど、魔法の知識に才能、マナに魔法の発動体か、これが無いとうまく魔法が使えない訳なんだな。


「あとは、変わったところで、精霊魔法、召喚魔法、転移魔法なんてものもあります、これはちょっと難しいので、私では教えられません、宜しいかしら」


ん? 転移魔法、ちょっと聞き捨てなら無い事が出て来たぞ。もしかして転移魔法が使えれば日本に帰れるかもしれないな、スキルポイントが溜まったら習得してみるのもいいかもな。


「さて、まずは私が手本をお見せいたします、よく見て学んで下さい」


おや、何か魔法を見せてくれるみたいだぞ、一体何が起こるのかな。


パールさんは指輪を嵌めている右手を前に出し、手の平を少し離れた岩へ向けている、おそらく、あの指輪がパールさんの魔法の発動体なんだろう。


「水よ、・・・穿て・・・、《ウォーターニードル》! 」


パールさんの手の平から水が現れて、細い針状の形に変わり、岩へ向けて勢い良く飛んでいった。射出といっていいくらいだ。射速が速い。


バカアアアン!


ウォーターニードルの魔法は勢いよく飛んでいき、岩に当たる、物凄い音が響いて怖いくらいだ。


なんと、少し離れた岩に亀裂が入った、凄い威力だ、これが魔法か、すごいぞ。


「・・・ふう~、この様に、魔法はまず、魔力を練るところから始まります、お二人共、まずは魔力を練るところから修練していきましょう」


これは、大した威力だ、こんなの喰らったら一溜まりも無い。魔法、すごいな。これを出来るように鍛錬しなければならない訳か、俺にできるかな? 自信は無いぞ。まずは魔力を練る感じからか、どうやってやるのかよくわからん。先行き不安だ。だけど、やってみる価値はある。うまくできるかな。
















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