第12話「冒険者たち」
ベルナールは二人の弟子を伴い、小物狩りに精を出す。訓練は順調だった。
アレット、ロシェル共に農作業などの合間に短剣を振ったり、弓を引いたりしているらしい。
「ロシェル、人に向けて絶対に弓を引いてはいけないぞ。例え矢をセットしていなくてもな」
「はい~」
「アレットの剣もだ。ただの素振りでも、魔力が飛んでしまう場合があるからな」
「分かりました」
この二人には才能があると思っていたが、予想を超える上達ぶりにベルナールも驚いていた。
次の段階に進む時が来たようだと、ベルナールは二人の練習ぶりを見守りながら目を細める。
そして再び食肉関係で獣の狩りにも行った。今回もセシールが同行したのだが、どうも次のパーティーがなかなか決まらないらしい。
母親が有名人なので引き受けるパーティーも遠慮しているのだろうかと、ベルナールは気を回すが、彼女に特に問いただしたりはしなかった。
常連になっている酒場のマスターから紹介され、酒を醸造している酒蔵周辺の魔物掃討などもやっていた。
報酬が安いのでギルド依頼しても、クエストを受注する冒険者が少ないらしい。
いつも世話になっている酒の話なので、ベルナールは積極的に請け負った。
こんな仕事が出来るのも引退したからだ。悪い気分ではない。
◆
セシールは相変わらず特定のパーティーには属していなかった。時々知り合いのクエストを手伝って報酬を得ている。
そして母親の店も手伝う。自分自身にも色々な事情がある。のんびりと自分を受け入れてくれるパーティーを探せば良いと思っていた。
今日は駆け出しの時代を共に過ごした友人を誘い、カフェでヤケ食いぎみの大きなケーキを注文した。
情報交換の為でもある。
「狙う獲物によってはヘルプを頼みたいけど、ウチのパーティーは少し変わっているから……」
そう言って溜息をつくのは、魔法使いの少女、ステイニーだ。
「分かってるって。イケイケのリーダーに付き従う三冒険者たち、だものね」
リーダーは
「あれはあれで上手くいってるのよね。我ながら変なバランスのパーティーだと思うわ」
そう言うステイニーの表情は満更でもない。ストレスなどにはなっていないようだ。
「聞いたわよ! B級ドラゴンの件。危なかったの?」
「そうねえ……、ウチはリーダー以外が支援に特化しているから、彼の打撃力がもっと上がらないと限界が来ちゃう。それを突破しようって足掻いている最中なのよ。大丈夫、皆同意の上だから」
「それにしても無茶じゃないの? そんな戦い方をしていたらいつかは――」
「ううん、大丈夫よ。意識をなくしそうになった時に、待避の時限魔法を掛けていたの。もしドラゴンが先に目を覚ませば全員で逃げれたのよ」
「そうだったんだ」
「デフロットには内緒だけどね。彼、そんな魔力が残っていたら攻撃しろって言うから」
ステイニーはそう言って舌を出して笑う。
「多分ベルナールさんには、バレていると思うけどね」
「ベルさんは余計なことをしちゃったかな?」
「ううん、逃げたら報酬にならないし、何よりもデフロットの前で必殺の技を見せてくれたのよ、感謝しているわ。何かの切っ掛けになると思う」
ステイニーは内助の功とでも言うのか、なかなか苦労しているなと、セシールは感心した。
「なら良かった」
「とにかく助かったわ。直接は言いにくいのよ。ベルナールさんにお礼を言っといて」
「分かったわ」
二人は話をしばし中断し、ケーキをパクついてお茶を飲んだ。
「新しいパーティー探しは難しいの?」
「う~ん……、何とも言えないかなあ。どこでも良ければ入れるけど。今はベテラン引退の件で人の出入りが激しいのよね」
潔くリーダーを引退したベテランのパーティーが分裂したり、リーダー交代に伴いメンバーが脱退したりで一部は混乱していた。
「私がパーティーを作ってベルさんにヘルプを頼もうかしら?」
セシールは冗談めかして言った。
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