第2328話 石神家 ハイスクール仁義 XⅤ
「島津は俺を殺す気でいたよな?」
「……」
「おい!」
「済まない。それも《髑髏連盟》の指示だった。猫神、お前は強すぎた。榊を一瞬で倒し、その技が「花岡」だった。だから《髑髏連盟》が警戒したのだ」
「そうか」
大体のことは分かった。
今後、学内の《髑髏連盟》を探して潰して行けばいいということだ。
多分、多くの者は先ほどの戦闘に来ているはずだ。
だが、まだ分子は残っているかもしれない。
双子が手を挙げた。
「なんだ?」
「この中に《髑髏連盟》がいるよ!」
「分かるのか!」
「うん! さっきから丁寧に探ってたの。波動が汚い人間がいる。そいつらが《髑髏連盟》だと思う!」
「そうか! 誰がそうなんだ!」
双子が鳥かごを奪い合っている。
「早く言え!」
ハーが鳥かごを被った。
あー、分かった。
「私がやりたかったのにー!」
ルーがぶーたれる。
それでもルーが諦めた顔をしてCLASS:yの「Crack-Crack-Crackle」を歌い踊り出す。
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一生懸命に踊ってる。
なんなんだ?
「それでは謎解きをいたしましょう」
『アンデッドガール・マーダーファルス』だ。
双子が最近はまっている。
「津軽! 久我の隣の大男を押さえておいて」
「え、俺?」
ハーが俺を見て言った。
ノリの良い石神家としては、従って郷間の後ろに立った。
「あなたが犯人です」
「なんだ?」
郷間がハーを睨む。
「あなたがみんなを暗示にかけ、《髑髏連盟》に逆らわないように誘導した。島津を暴走させて相撲部を斬らせたのもあなたの暗示。ボクシング部の榊が必殺技を出したのもそう。あなたが全ての元凶ね」
「何を言うか!」
「静句! 郷間を取り押さえなさい!」
「え、私?」
亜紀ちゃんが郷間の腹に蹴りを入れ、床に転がす。
「えーと……」
よく分からない展開になったので、ハーを見た。
ニコニコしている。
「……」
久我が郷間に聞いた。
「お前が《髑髏連盟》に通じていたのか!」
「違う!」
「いや、それならばすべてが分かる。私も時折自分の意志ではない指示を出すことがあった。お前がやらせていたのだな!」
「!」
「お前だけは信じていたのに……」
郷間が突然笑い出した。
「ワハハハハハハハ! お前が真面目な顔で苦しんでいるのが楽しかったぜぇ!」
「郷間!」
「本家だというだけで、当たり前のように俺の上にのさばってやがった! そのお前が間抜けな指示を出し、《髑髏連盟》に怯えていくのが本当に面白かった!」
「お前、なんということを……」
「何人もお前のせいで死んだよな? そのたびにお前が苦しんだ! 俺を信じていた? そうかよ、お前は本当に間抜けな無能だ!」
俺が郷間の頭を踏みつけた。
「そこまでだ。お前も正体がバレたマヌケだ。これからどうなるのか覚悟しておけ」
「その二人は相当にキレるな。もう言い逃れは出来ない。好きにしろ」
「お、おう……」
そういうことじゃないのだが。
単に霊感が鋭くて分かっただけなのだが。
ルーとハーがニコニコして腕を組んでいる。
ルーが今度は鳥かごを頭に被った。
今度はハーが歌って踊り出す。
♪ ジリジリと 求めるGimme more 誰かに盗られる前に ほら Love is burning 熱を感じて ♪
好きなんだなー。
「郷間、お前はもう終わりだ。津軽、やりなさい」
「え、俺?」
俺が動く前に、早乙女が成瀬を連れて入って来た。
歌って踊っているハーを見て、不思議そうな顔をしている。
だよなー。
「よう、こいつが主犯のようだぜ」
「そうなのか!」
「詳しい話は後でする。ライカンスロープの拘束具はあるな?」
「ああ、すぐに持って来る」
成瀬が走って行った。
「今後全校生徒を検査しろ。便利屋で十分だろう」
「分かった。校長の杉田にはすぐに了承を得る」
「久我、お前も協力しろ」
「分かった」
久我は沈鬱な面持ちで、まだ郷間を見ていた。
「お前、いつからだ?」
「「創世の科学」が俺に接触して来た。ここの生徒だ。2年前からだ」
「お前は何故……」
郷間が笑った。
「お前の下に付いたからだよ! 大した能力もないくせに、俺の上によ! だからだ! お前を苦しめて俺がお前に君臨するようにしたんだ! 本当に楽しかったぜ」
「病葉衆の掟を破ったな」
「だからどうした! もうあんな古臭い連中なんて御免だ! 俺はこの力で自由に生きるんだ!」
「出来ると思っているのか」
「ふん!」
成瀬が数人を連れて戻って来た。
ライカンスロープ用の拘束具を取り付けて郷間を連れて行った。
郷間にライカンスロープの因子が入っているのかはまだ分からない。
しかし、あいつはもう終わりだ。
今後は襲撃者たちのアジトを早乙女が探り、恐らく「創世の科学」と遣り合って行くことになる。
そこが恐らく全国の「デミウルゴス」の大きな拠点の一つになっているはずだ。
俺たちの星蘭高校潜入ももう終わりだ。
「猫神さん。お世話になりました」
マンロウ千鶴が俺に頭を下げた。
「これで平和な学校になるな」
「はい」
「じゃあ、修学旅行が楽しみだな!」
「え、それは2年生の時に終わってるけど」
「なんだとー!」
「行きたかったの?」
「うーん。じゃあ文化祭かぁ」
「ああ、うちはありませんよ」
「なんで!」
マンロウ千鶴が笑った。
「うちの学校で出来るわけないじゃない」
「やれよ!」
「じゃあ、猫神さん、手伝ってくれますか?」
「ああ、やろうぜ!」
みんなで笑った。
久我も口を曲げて少し笑っていた。
「しかしよ。こんな所で病葉衆だの百目鬼家だの、えーと虎眼流か。日本の裏社会の家の連中が集まってるなんてなぁ」
「ああ、それは杉田校長の勧誘なんですよ。私たちの家系ってあまり表に出せないので。それでこういう特殊な場所を作って一般社会に関わらせてくれてるんです」
「あの校長がか!」
俺には風采の上がらない男にしか見えなかった。
「結構切れ者ですよ。日本のフィクサーとも関りがあるようで」
「小島将軍か!」
「よく御存知で! そうです。だからこんな特殊な学校が出来たんですよ」
「マジか!」
驚いた。
「多分、敵はそのことも知っていて、ここを足掛かりに小島将軍に迫るつもりだったのかもしれませんね」
「どういうことだ?」
「我々部団連盟のうちの何人かは、卒業後に小島将軍の私兵になることもあるんです」
「にゃんだとー!」
「今は「虎」の軍ですかね。小島将軍の信頼の篤い人間が、結構加わっているらしいですよ?」
虎酔会のことか。
ここは俺にも関りのある場所だったようだ。
まったく知らなかったが。
俺たちは一応の解決を見たとして、学校を去ることにした。
しかし、もう少し状況を把握しておく必要も感じた。
早乙女達「アドヴェロス」の進展を見て、マンロウ千鶴たちと話し合う必要がありそうだ。
俺はそれが少し楽しみになっていた。
「ところで猫神さんって、本当はお幾つなんですか?」
俺は笑ってマンロウ千鶴の額に拳を当てた。
マンロウ千鶴が大笑いした。
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