第2235話 《ハイヴ》襲撃 Ⅵ

 別荘に戻ったのは、朝の3時前だった。

 子どもたちが全員起きていて、俺を出迎えて大騒ぎした。

 全員、戦場での出来事は把握している。


 「おい、静かにしろ! 響子たちは寝てるんだからな!」


 亜紀ちゃんがワイルドターキーを出して、全員のグラスに注いだ。

 つまみも作ってある。


 「これから飲むのかよ!」

 「ちょっとだけですよ! お祝いしとかないと!」

 「まあ、そっか」


 俺も笑って全員と乾杯した。

 折角なので、「幻想空間」へ移動する。

 こちらでもほとんどの場面は見て把握しているはずだが、俺は改めて現地でのことを話した。

 

 「スゴイ戦いでしたね」

 

 亜紀ちゃんが興奮していた。


 「ああ、やっぱり相当なものだったな。でも、分かったことは多い。妖魔ベトンは「シャンゴ」で破壊出来ることが分かったし、これからあそこを調査して、生体兵器開発の規模なんかもある程度は分かるだろう」

 「それにあの「地獄の悪魔」たちですよね」

 「ああ、あれは不味いな」

 

 ルーが聞いて来る。


 「タカさん、「地獄の悪魔」は防衛のためにいたのかなー?」

 「多分な。でも、俺たちの攻撃が一気呵成だったから、出番が遅れた」

 「でも相当強かったよね?」

 「そうだな。特にグアテマラで出会った奴がな。あのレベルかそれ以上のが出て来ると、正直言って苦戦だな」

 「うーん」


 今のところ、「虎王」と聖の「聖光」「散華」しか対抗手段は無い。

 「業」としても、絶対に護りたい重要施設なのだろう。


 「タカさんを護ろうとした女の人! 最高でした!」


 亜紀ちゃんが興奮して言った。


 「ああ、虎蘭って名前らしいよ。俺も八本腕に集中しなきゃいけなかったからな。助かったぜ」

 「ほんとに! それにタカさんに似て綺麗な顔の人でしたよね?」

 「まあ、そうかな。石神家は結構顔がいいよなぁ」

 「虎白さんも素敵だよ!」

 「あの人カッコイイよ!」

 

 双子が言うので、二人の頭を撫でてやった。


 「あ、皇紀! 蓮花には連絡してるか?」

 「いいえ、まだです!」

 「ばかやろう! あいつ、まだ起きてるぞ!」

 「あ!」


 俺がスマホを持って来させて電話した。

 やはり起きて待っていた。


 「なんだよ、攻略戦は終わったんだからもう寝てろよ」

 「いいえ、石神様の御無事なお声を聴くまでは!」

 「まったくよ! ジェシカもいるか?」

 「はい!」

 

 ジェシカが返事した。


 「ジェシカ、明日は一日蓮花を休ませてくれ」

 「分かりました!」

 

 スピーカーにしているらしく、蓮花の騒ぐ声が聞こえる。


 「蓮花は一日シャドウと一緒にのんびりしろ!」

 「え、はい!」


 蓮花が嬉しそうな声を出した。

 まあ、少しは休むだろう。

 ジェシカは若いから多少は大丈夫だろう。

 

 俺たちも早めに切り上げて寝ることにした。


 「明日は昼まで寝てていいからな。あー、響子の朝食はどうするかなぁ」

 「六花さんにお願いしましょうか?」


 まあ、六花も料理は出来る。

 なぜか俺たちと一緒の時は、食べるだけの人間に徹するが。


 「まあ、任せるかなぁ」

 「私たちは起きるよ!」


 双子が言う。


 「じゃあ、悪いけど、ロボの御飯と一緒にな。終わったら俺の部屋に一緒に寝に来いよ」

 「「うん!」」

  

 みんなで「祝いのヒモダンス」を踊ってから寝た。






 翌朝。

 俺は8時半に目が覚めた。

 少し興奮しているのかもしれない。

 メモを読んだか、六花と響子は俺を起こさずにベッドから出ていた。

 一度顔を洗ってリヴィングへ降りた。

 

 「タカトラ!」

 「「タカさん!」」

 「トラ!」


 響子と六花、双子が朝食を食べていた。

 

 「おはよう、ちょっと目が覚めちゃってな」

 「タカさんも食べる?」

 「いや、ミルクティをもらおうかな」

 「うん!」


 ルーが用意をする。

 髭を剃っていないので、響子の顔をジョリジョリしてやった。


 「やめてぇー」


 六花が笑って言った。


 「トラ、ルーちゃんとハーちゃんから夕べのお話は聞きました」

 「ああ、大成功だ。虎白さんたちのお陰でな」

 「はい!」


 六花がニコニコしてバターを塗ったトーストを食べている。

 ご飯を終えたロボが俺の膝に乗って来る。

 俺はミルクティに砂糖を多めに入れて飲んだ。


 「まあ、これで本当にのんびり出来るな!」

 「じゃあ、今日は訓練ですね!」

 「おう!」


 双子が「ギャハハハハハハ!」と笑った。


 「まあ、もうちょっと寝かせてくれ」

 「はい!」


 俺はミルクティを飲んでから、また部屋へ戻った。

 ベッドに横になっていると、双子が入って来た。


 「お前ら、ウインナーはちゃんと食べたな?」

 「「うん!」」

 「じゃあ、俺のウインナーは喰われないで済むな!」

 「食べてあげようか?」

 「やめろ!」


 二人は俺の両側から頬にキスをしてきた。


 「いつでも言ってね!」

 「すぐに食べるからね!」

 「やめろってぇ!」


 三人で仲良く寝た。

 気持ち良かった。





 

 11時半に双子に起こされた。

 アラームは掛けていなかったが、こいつらの体内時計は正確だ。


 「タカさん、起きれる?」

 「ああ、大丈夫だ」


 三人で洗面所に行き、身支度を整えた。

 リヴィングに降りると、亜紀ちゃんたちが昼食の準備を始めていた。

 今日は天ぷら蕎麦だ。


 俺が座って待っていると、虎白さんから電話が来た。


 「よう!」

 「こんにちは! 当主の高虎です!」

 「知ってるよ! いちいちうるせぇ奴だな!」

 「すいません! 何かありましたか?」

 「ああ、ちょっとな。これからそっちへ行っていいか?」

 「え! ここにですか!」

 「なんだよ、不味いのかよ?」

 「とんでもない! お待ちしてます!」

 「ああ、悪いな」

 「いいえ、あの、是非昼食も御一緒に」

 「そうか? じゃあご馳走になるかぁ」

 「はい!」


 俺は慌てて亜紀ちゃんに石神家の剣士たちが来ると言った。


 「えぇ!」

 「40人分だ! 全員でかかるぞ!」

 「「「「「はい!」」」」」


 六花と響子は何もしない。

 双子が天ぷらをどんどん揚げ、亜紀ちゃんが蕎麦を茹でて行く。

 皇紀と柳は食器の手配だ。

 丼は足りないので、せいろにした。

 蕎麦は大量にあるのだが、40人分の追加は少し怪しい量だ。

 うどんも全部投入した。

 なんとかそれっぽい器は揃った。

 

 15分後。

 「タイガーファング」が到着した。

 別荘の広い駐車場に着陸する。

 ここに「タイガーファング」が来ることも想定して、駐車場を拡張しておいた。

 ハマーなどは動かしていた。

 それでも大型輸送タイプだったのでギリギリだった。

 石神家の剣士たちが降りて来る。


 「よう!」


 「「「「「「いらっしゃいませー!」」」」」」


 




 みんな元気そうだった。

 しかし、一体何しに来たんだろう。

 相変わらず、説明の無い人たちだった。

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