スクイ上ゲタ言ノ葉

柚ノ木 卯奈

消える。その瞬間

もう駄目だと思った


なにもかも


そう思った



目の前のトラック


目の前の赤に変わった信号機


目の前に横たわる



一人の男



全身を雨の水で濡らし


ソレを呆然と見つめる



目の前に広がる赤


周りが騒然としている



それでも


自分の目には、何も映っていない


虚無の世界になった



白と黒の、何もない世界に



私を庇った『その男』は


消えて逝った




最期にその男は


消える直前に


微かに『笑って』いた。

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