19.攻略報酬

 さて、ダンジョンは攻略しただけで終わり……というわけではない。

 ダンジョンボスを倒したことで攻略報酬が手に入るのだ。

 それも、今回は初めてのダンジョン攻略ということで、通常のダンジョン攻略よりもレア度の高いアイテムが手に入る。

 俺はボス部屋を見回してみると、最初にパラディンが腰掛けていた椅子の座面に金色に輝く宝箱を発見した。


「キラキラの宝箱にゃ~!」

「さーて、どんな報酬が出るのか、楽しみだな!」


 金色の宝箱ということは、少なくても希少級以上のアイテムが確定している。

 あとはランダムだが、ランダムBOXよりも等級の高いアイテムが手に入る確率は若干だが上がる。

 心の中で伝承級以上のアイテムが出ることを祈りながら、俺は宝箱を開けた。


 ――カッ!


 箱の中から眩しい光が放たれると、しばらくして目の前にウインドウが表示された。


【伝承級アイテム:伝承級ランダム霊獣の卵】


「……おぉっ! マジかよ! まさか一日目にして霊獣の卵をゲットしちゃったぜ!」

「おめでとうなのにゃ! 伝承級アイテムなのにゃ!」


 俺はニャーチとハイタッチを交わし、心の底から喜んだ。

 霊獣の卵を孵化させると、戦闘で力を貸してくれる霊獣を仲間にすることができる。

 特に今回は伝承級ランダム霊獣の卵なので、伝承級以上の霊獣が生まれることが確定しているのだ。


「孵化させるのには時間が掛かるからな、早速使用っと! ……ほほう、6時間も掛かるのかぁ。でもまあ、ワクワクする時間と考えればまったくもって問題ないな!」


 あとは始まりの村に戻って発展クエストを完了させれば、ランダム装備BOXもゲットできる。

 俺はダンジョンを攻略した時にだけ使える帰還の魔法陣が現れたのを確認すると、その中に入って起動させた。


「三日間は経験値が1.2倍になるからな。しばらくは厄介になるぜ」


 そう口にしながら、俺はゴブリンの巣ダンジョンをあとにした。


 ――……あっという間に地上へ帰還した。

 あとは始まりの村に戻るだけ……だと先ほどまで思っていたのだが、どうやら面倒事の方からやって来てしまったようだ。


「見つけたぞ、レヴォ!」

「……誰だ?」

「んなあっ! わ、忘れたとは言わせねえぞ!」

「……すまん、忘れた」

「て、てめええええぇぇっ!!」


 いや、だって、マジで覚えてないんだけど。

 こんな奴、俺の知り合いにいないっての。ていうか、そもそも知り合いなんていないし。


「てめえにPKされたせいで、俺はギルマスから大目玉を食らっちまったんだからな!」

「PKだって? ……あぁー、最初にいっちゃった人ね」

「てめえが最初に殺したからだろうが!」


 だって、最初に襲い掛かってきたのはそっちでしょうが。

 というか、まーた隠れていやがるな。数は……おいおい、律義だなぁ。本当にあの時よりも倍の数を揃えてきたのかよ。


「あんたを入れて、一二人か?」

「う、うるせえっ! てめぇが動画にモザイク加工をしなかったから、こっちは問題が発生してるんだよ!」

「PK集団の方が問題だろうが。……いや、ギルマスって言っていたし、PKギルドか?」

「黙れ! お前をぶっ殺してアイテムを返してもらうぞ! それに、謝罪動画を作らせてやるからな!」


 謝罪動画って、んなもん作るわけがないだろう。

 というか、あれだけボコボコにやられたってのに、俺に勝てるつもりでいるんだな。


「言っておくが、あの時の俺を倒すのに倍の人数が必要って言ったんだ。今の俺を倒したいなら……今の三倍は必要なんじゃないのか?」

「こいつ!! ぶっ殺してやる!!」


 本音を口にしただけなのだが、それがこいつの気に障ったらしい。

 隠れているのも意味がないとわかったからか、茂みの奥からぞろぞろと仲間たちが姿を現した。

 ……こいつはまた、いい動画のネタになってくれそうだな。


「いいぜ、来いよ。返り討ちにしてやるからよ」

「掛かれ!」


 おいおい、お前が来ないのかよ。

 確かコープスだったか? そいつの合図で四人が同時に襲い掛かってきた。

 コープスを除いた一一人が連携しながら襲ってくると思いきや、そうではないらしい。

 人数が多いからと連携を諦めて物量で押し潰そうと考えたのなら、甘すぎるな。


「んなあっ!」

「ど、どこにいきやがった!」

「こっちにはいないぞ!」

「何がどうなって――ぐはあっ!?」

「……まずは一人」


 単に右へ移動し、近い奴の後方に回り込んで、隼の短剣で背中から一突きしただけだ。高レベルユーザーなら躱せただろうけど、こいつらには無理みたいだな。

 あまりに一瞬の出来事だったからか、残り三人と周りで見ていた七人の動きが止まる。


「おいおい、戦闘中だぞ?」

「がっ!?」

「な、何が起きて――いばっ!?」

「どうしてこんなに強いん――だびょっ!?」


 口を動かす暇があったら手と足を動かしてほしいな。

 最初に飛び込んできた四人を仕留め、残りは八人。……あれ? コープス、いなくないか?


「……もしかして、逃げたのか? いや、そんなことはないか。……まあ、先にこいつらを片付けるかな」


 何も対策せずに、またやられに来るはずもないか。

 ギルドに加入しているみたいだし、ギルマスから何か借りているんじゃないのか?

 PKギルドなんだから、PKがしやすくなる武器とか、そんなところだろう。

 目に見えるものだけではなく、別のものにも警戒しておくか。


「おい、てめぇらは飾りか? 見ているだけじゃなくて、さっさと掛かってこいよ」


 俺が挑発すると、残りの七人が一斉に飛び掛かってきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る