KAC202211 “日記”


スニーカー大賞などの‐1次選考‐を通過できない理由


1・構成が破綻している

2・オリジナリティが欠けている

3・描写と説明の区別ができていない

4・読者が読んで不快になる表現がある

5・物語とキャラクターが合っていない

6・よくあるキャラクターに特色がついていない

7・キャラクターの思考の深い部分が足りてない



 ◇


 今夜も都心で屋台を出す、気難きむずかしい性格の老人がいた

60歳で早期退職をし、夢を叶えた『おでん屋』の店主だ


 いつもなら“真夜中KAC202210”ごろに、ふらりと現れて1杯やってく

例の老人たちが やってくる時間帯だが、とっくに深夜を過ぎていた


 現れたのは、随分と前に 世話をしてやった男 だった



「マスター。不躾ぶしつけで申し訳ありません。

 鍋谷さまは、今夜こちらに お見えになられたでしょうか?」


「そういや。最近、見ねぇな?」


 おでん屋の店主は、ちらりと 相手の眼をみて 答えた


 とても屋台に来るような恰好ではないスーツ姿

その精鍛せいたん面持おももちからは、焦燥しょうそうにじんでみえた


 めんどくせぇな、と心の内でボヤく――


 唯事ただごとではないのが、相手の 重圧 プレッシャー から伝わってきた

さらに、俺の“第六感KAC20223”もうずいてやがる。嫌な予感がしやがる――



「そういえば、あれだな

 “88歳KAC20225”の米寿を祝いたい、そんな事をいってたような……

 なんでも、相手は声優の“推し活KAC20222”に沼っていて、ライブのチケットを贈りたい

 とかいっていたような……

 いや? 90歳の卒寿だったかな?」


「さようでございますか」


「だけど、ライブが中止になったとか

 で、その声優さんが出演するゲームを購入したとか

 なんでも“お笑い/コメディKAC20224”要素が強いから、鬼ヤバだとかいってたな」


「マスター。いったい、何をおっしゃりたいのですか?」



 俺は、屋台の近くに止めてあるリムジンに目をやった

車中には、スモーク越しでも女の子が乗っているのがわかるな


 (そう言えば。こいつに、いいとこの仕事を紹介してやったんだったっけ?――)


「ひょろっとした爺さんの事が知りたいんだろ?」



「はい。お会いして、お話しをしたい事がございます」

「何があったかは知らねぇが、コイツを持っていきな」


「これは?」

「その爺さんが、前に置き忘れていった“日記KAC202211”帳だ

 裏には、ご丁寧に 住所まで書いてやがる」


「宜しいのでしょうか?」

「まぁ。暇なときに ちらっと 読ませてもらってたからな

 あっ。これ本人には、内緒だぞ」



 そういって、さっきまで読んでいたページを思い出した

‐1次選考‐を通過できない理由と書かれた、あのページを、だ



「かしこまりました」

「それから。お前さんと嬢ちゃんに、これをやろう」



 俺は、2枚の紙袋を開いて“焼き鳥KAC20226” (ねぎま、塩) を何本か包んでやった



「これは?」

「口に合うかは、わかんねぇけど、こんな時間だ。

 腹が減ってりゃ、まとまるモンも まとまんねぇだろ?」


「そこまで、気遣いまでして頂けるとは……

 何から何まで、感謝いたします」


 奴は深々とお辞儀をした

そして、屋台の端に吊るされた提灯に目をむけた


「マスター。つかぬ事をおたずねしますが、ここは、焼き鳥屋でしょうか?」

「うるせぇな。ここは、おでん と 焼き鳥の“二刀流KAC20221”なんだよ」


 俺は少し不機嫌な口調で答えた


「失礼いたしました。

 マスターほどのご慧眼けいがんをお持ちですと

 なにか、深いお考えが在ってのこと なのでしょうか?」 


――まさか。半月ほど前に“猫の手を借りた結果KAC20229”の新メニューとは、いえねぇな――



 ここはひとつ、お茶を濁す しかないようだ



「ほら、もうけぇってくんな。

 すぐそばに、あんなデカい リムジン を停められッと、

 商売あがったりなんだよ!」


 俺は手の平を返して、その執事を追い返そうとした

それでも、奴はまだ、何か言いたそうにしていた


 (まぁ。おまえさんが伝えたいことは、だいたい 目星がついてるって)



 だから、俺がおまえにしてやれることは、言葉を贈ることくらいだ




「屋台で生計を立てているとな。どうしても“出会いと別れKAC20227”に遭遇しちまう

 幸せそうな顔したヤツもくれば、今にも死んじまうんじゃねぇか、ってくらい

 暗い顔をしたヤツも来やがる

 こちとら出来ることは、黙って相手の話を聞いてやるくらいだがよ……

 おまえさんは、違うだろ?

 やることやって、嬢ちゃんの“私だけのヒーローKAC20228”ってヤツに、なってきなよ」


  深々とお辞儀をすると、踵を返して去って行った

 リムジンのドアが開いては、閉じる音が深夜の街道に木霊こだました


 ハザードランプを数回ほど点灯させて、ゆっくりと走り出していく


 (この先に、どんな辛い真実が待っていようとも、くじけるんじゃねぇぞ――)


 などと、カッコいい台詞を贈った俺は、翌朝に後悔することになる


 あぁ、こっぱずかしいッ!

 


 日本人は、いつも笑顔で《おそろしい》



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