小学生、異世界に行く。〜四字熟語と友達の輪で世界制覇〜

◎◯

プロローグ

 カエルの怪人――ゲコゲェルの鋭い舌鋒がオレの胸を抉った。


 比喩じゃない。実際に心臓を貫かれている。きっと、背中に書かれた『一騎当千』の文字ごと。


「……ごふぁッ」


 咳とともに口から血反吐が出た。痛みと苦しみで脳が痺れる。


「ヒサトぉーーーーッ!!」


 甲高い悲鳴のような声がオレの名を叫んだ。相棒のジャンヌだ。いつもクールなアイツらしくもない。もともと、雪のように真っ白で透き通るような肌がさらに蒼ざめて見えた。豪奢な金髪を振り乱し、アイスブルーの瞳からは涙が溢れ出した。


(ンな……シケたツラすんな)


 喋ろうとしたが声が出ない。咳と血しか出ない。そのかわりにオレはジャンヌに微笑みで答えた。


 すぐにオレが助けてやるからよ。オマエも、家族も、みんな、みんな……


 この『トーちゃん』が……


 ぜってぇーにコイツを……倒して……やるからよ……。


 だって……オレたちの……冒険は……まだ……始まった……ばか……り……


 視界が暗転し、何も見えなくなった。近くにいるはずのジャンヌの声が、遠ざかっていった。

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