残業1 インスタント麺
「午後21時、退社目標。」
グループチャットへ送る。
「了解」
「私もその辺目指しで。」
和香と奏からそれぞれ反応が返ってくる。
今は20時を5分過ぎたところだ。
あと少し頑張ろう、なんとなく気分が
切り替わる。
そして私、
同期入社で1年目。
研修を終えて実務に入ると
それぞれバタバタし出した。
普通に定時内に仕事が終わらない。
「 1日8時間も働いているのに何時間も
残業をするなんて、その8時間は一体何をしてたんですか?」
と無邪気に先輩に尋ねた大学4年生の頃の
自分が恥ずかしい。
今後輩に聞かれたらなんて
答えるんだろうか。
きっとどの仕事もそうだろうが、
製造業は本当に突発の予期しないことが
多い。
製造ラインは急に止まるし
想像もしていない品質不良が発生する。
そうするともちろん
帰れない。本当に帰れない。
社内のチャットシステムを
フル活用しながら、心をなんとか正常に
保つ。
問題が起きた時の
チャットは荒れに荒れる。
アドレナリンも止まらない。
なんだかんだこれがたまらない。
20:37 和香
「終わりそう」
「なんかしょっぱいもの食べたい」
20:39 奏
「わかる」
「私もいける、体に悪いもん食お」
「辛いやつ希望」
20:40 凌子
「終わった」
「先帰るけど、スーパー行っとく?
なんかそれっぽいもん買ってくる」
20:41奏
「任せた」
20:42 和香
「よろしく!」
もうこの時間だしなんだかんだ2人は22時くらいまで帰ってこないだろうなーと思いながら
パソコンをシャットダウンする。
残っているのは2つ上の先輩と
4つ上の先輩だけ。
「お先失礼します、お疲れ様っす」
とぼそぼそ言ってそそくさ帰る。
ここで何か頼まれたら
たまったもんじゃない。
辛くてしょっぱくて体に悪いもの、
そうなったらあれしかないっしょ。
もう口が完全に決まっている。
今日はインスタント麺だ。
しかも色々トッピングしちゃうやつ。
口の中がじわっとあったまる。
なんだかんだ和香と奏は辛いもの苦手だから
和らぐやつも用意しよう。
考えながら着替えを済ませる。
自分の冷蔵庫の在庫を思い出す。
スーパーへ向かう間の車移動10分。
夜の運転は楽しい。
意外と時間がない。
明日も仕事だから油断しすぎは禁物です。
唐突に自分を戒める。
辛さを謳ったインスタント麺、
チーズ、ネギ、キムチをカゴに入れる。
確か卵は残っている気がする。
まあなかったら誰か持っているだろう。
あと、炭酸ジュース。
これは奏の大好物。
辛いものと炭酸ジュースはセットらしい。
アイスも食べたい。
買おうか迷ってやめておく。
どうせ和香がストックしてるだろう。
冬籠もり前のリスくらいストック癖がある。
21:15 買い物終了
いい感じ。
帰って準備しよう。
2人は予想通りまだ終わっていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます