第195話 もどかしい思い
引き続き結衣視点の話です
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「昨日の試合よりもこの試合の方が走っている人の人数が多いわね」
「それは予選レースだからじゃないかな。決勝レースになれば、もう少し人数が減ると思うよ」
「それで風見はどこを走ってるの? こんなに人が多かったら、見つけるのだって一苦労よ」
「この先頭を走っている人の外側じゃないですか? そこで前の人の右斜め後ろにぴったりくっついて走っています」
麻衣ちゃんの言う通り先頭のほぼ隣の位置に俊介君はいる。
その隣にいるのは水島君。俊介君は水島君の右斜め後方にピタリとついて行っている。
「風見先輩、大丈夫ですか?」
「わからないけど、たぶん大丈夫だと思う」
先頭集団を走る俊介君の表情は心なしかよくない。
昨日のレースよりも苦しそうにしている。
「もしかして風見のやつ、昨日の怪我を引きずってるの?」
「えっ!? 風見先輩怪我をしているんですか!?」
「でもその怪我を引きずっているなら、とっくの昔にリタイアしていてもおかしくないよ」
『司さ~~~ん。頑張って下さい!!』
画面の中では茉莉ちゃんが必死に司君に対して声をかけている。
その声に呼応して、水島君のスピードが徐々に上がっている気がした。
『3000m通過しました!! いいタイムですよ!! この調子であと2000mがんばってください!!』
「先頭は2人に絞られたわね」
「風見君と水島君。どっちが勝つんだろう」
動画が送られてきたという事はレース結果は既に決まっているはずだ。
だけどスマホでレース結果を確認するよりも、どうしても動画で送られてきたレースに目が行ってしまう。
『ラスト2周です!! 司さん大丈夫です!! 絶対に俊介先輩に負けないでください!!』
茉莉ちゃんがそう言った瞬間、一瞬水島君が茉莉ちゃんを見た気がした。
そして軽く右手をあげるとスピードをあげた。
「あぁ!? あのイケメンがスピードをあげたわ!?」
「風見先輩も必死について行こうとしていますけど、徐々に遅れ始めてます!?」
水島君のスピードについて行けず、風見君はどんどん離されて行く。
時折右手首を見ながら必死に前を追いかけるが、徐々にではあるが水島君との距離が開いていってる。
「まずいです!! 風見先輩のスピードが急激に落ちてきたので、後ろの人達も近づいてきてます!!」
「俊介君」
動画を見ながら祈る事しか出来ない私がもどかしい。
もし現地にいれば茉莉ちゃんのように声をかけて上げられるのに。
『司さん!! ラスト1周です!!』
「俊介君」
残り400m、茉莉ちゃんの声を聞いて水島君は悠々と走って行く。
私も思わず声を出して俊介君の事を応援するけど、その声は届かない。
応援したい気持ちはあるのに、現地にいない私は何もすることが出来ない。今までこんなもどかしい思いをしたことがなかった。
「後ろの人達も近づいてきましたよ!? もうすぐ抜かれちゃいます!?」
「でも、あと200mは切ったわ。このまま逃げ切ることが出来れば、2位はキープできるはずよ」
「俊介君」
水島君が1位で通過した後、遅れて俊介君が走って来る。
後ろから迫る集団の猛追を受けながらも、俊介君はなんとか2番目でゴールした。
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