Lie or True

紫耀

あの時の車

これは、私が小学生の頃、担任の先生から聞いた話です。

担任の先生の知り合いのAさんが車を運転中、誤って人を撥ねてしまったそうです。


車通りが全くなく、あたりに目撃者も誰もいなかったので、

人を轢いてしまったという恐怖と罪から逃れたいという思いから、

車から降りることもなく、その場を立ち去ってしまったそうです。


車は目立った損傷はなく、問題なく運転出来たのですが、

万が一、事件が発覚した時のことを考え、証拠隠滅の為、

その車を中古車ディーラーに売ったそうです。


それから数年経ち、新しい車にも乗り換え、事件のこと等、忘れかけていた時、

Aさんは今度は車同士の衝突事故を起こしてしまったそうです。


衝突の勢いは物凄く、Aさんは車内から放り出されてしまう程でした。

道路に投げ出され、意識が朦朧とする中、衝突した相手の車を見ると、

なんとかつて自分が人を轢いてしまって、売った車だったのです。


その後、重症を負ったAさんは、回復後に、

過去に人を轢いてしまったことを告白し、実刑を受けたそうです。


そして、Aさんが轢いてしまった人は亡くなっていたそうです。

かつて自分が人を殺してしまった車に、

自分が殺されそうになったのは偶然なのでしょうか、それとも…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る