前回のその後

第1話




「何だこの山は」

 俺は自分の机の上に置かれた書類を見て叫んだ。

 いつもは多くても1センチくらいなのに、30センチはある山が2つはある。

 その他にも10センチ以上の山が3つだ。


「まだこれでも一部です。今まで他の者が代わりに処理していた書類です」

「それなら、ソイツにずっと任せれば良いだけだろうが!」

 俺の言葉に、文官が片眉を上げたのが見えた。


「不可能でございます」

「なぜだ!」

「昨日、処刑されましたので」


 文官の言いたいことがやっとわかった。

 あの女が俺の代わりにやっていた書類なのだろう。

「それなら誰か他の者にやらせろ!」

「フローラ様ですか?」

「なぜそうなるんだ!他にいくらでもいるだろうが」

「そうなりますと、王妃陛下か国王陛下しかおりませんが、さすがに私からはお願いできません」

 何を言ってるんだ?コイツは。


「この書類の決算は、王家か王家に準ずるものしかできません」

 前は違ったらしいが父上が、結婚し侯爵家に下った叔母に、あれやこれや言われるのが嫌で法律を変えたらしい。余計な事を。



 30センチの山は、あの女が牢に入ってる間に溜まったもの。

 10センチの山は、牢に入る前に処理し、他部署から返ってきたので、最終チェックをして決算するものだそうだ。

 見てみたが、何も意味がわからなかった。


「こちらは、おそらく何も不備は無いでしょうからサインをすれば大丈夫です」

 あの女の処理済の方か。

「しかしこちらは、まだ何も目を通しておりませんので、よく読み考えてからサインをお願いします」

 未処理の山を指して言われる。


 何を言ってんだ?

 あの女に出来た程度の事だろう?

 適当にやっても大丈夫に決まってる。

 あの女が俺よりも優秀なわけがないからな。




 毎日、毎日、書類にサインをした。

 最初は多少読んでいたが、橋の修復とか街の整備とか、そんなものいるのか?

 その領地で勝手にすれば良いだろう。

 それよりもフローラが好きな王都の店で、ドレスを買った方が有意義な金の使い方だな。

 あぁ、フローラが欲しがってた宝石と丁度同じ位の金額じゃないか。


 修復とか修繕とかの文字が入っているものは、王都内以外は全て却下した。

 王都のは俺も使うからな。

 あと、天災だか災害だかの復興支援も、許可しなかった。

 これは、その領地を治める貴族が用意すべきもので、王家は関係無い。

 それくらい常識なのに、この書類を提出してきたヤツは何をしてんだ?

 俺を試しているのか?



 あの女がやっていた時より、大分予算が浮いた。

 やはり俺の方が仕事が出来るんだと証明されたな。

 あの女は、本当に価値が無かったな。

 家柄くらいか?


 余った金で、フローラにドレスと宝石を買ってやろう。

 何かパーティーを開いても良いな。

 富める者は、周りの者に施しをしてやらねばな。



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