第5話

 



 王子妃教育、王太子妃教育、王妃教育、全て拒否しました。

 理由は全て終わっており、記憶にあるからです。

 それどころか王太子の仕事を肩代わりしていたので、そちらの知識もあります。

 何より、あの王子クズと顔を合わせたくないのです。

 しかし表立って言う事が出来ないので、公爵家の方で勉強すると強行しました。

 母の兄である侯爵に嫁いで来たのが前王陛下の年の離れた妹で、彼女に習うと言えば王家は黙りました。


 元王族の彼女はとても優秀で、侯爵家に嫁いでくる直前まで陰でまつりごとに関わっていました。

 数年前まで陛下が『類を見ない賢王』と呼ばれていたのは、彼女の功績があってこそでしょう。

 あぁ、何のことはない。

 親子で他人の功績を奪って、偉そうにしていたのですね。



「メリッサ様、お久しぶりでございます」

 王子妃教育の名目で、メリッサ様が公爵家へといらっしゃいました。

 挨拶をした私を見て、目を丸くして驚いていらっしゃいます。

 どうやら彼女にはは無いようですね。


「まぁ!アンシェリーはいつの間に完璧に淑女の礼が出来るようになったの?」

 手放しで褒めてくれる。彼女は褒めて伸ばすタイプなのかもしれません。

 前世も王妃クズ女ではなく、彼女に習いたかったですわね。

「王子の婚約者に決まってから、一生懸命練習いたしました」

 私の台詞に、更に笑みを深くしています。

「まぁまぁまぁ!とても優秀な王太子妃になりそうですわね」

 あのクズはまだ立太子しておりませんが、私が教育を終わる頃には王太子になっているだろう予想なのでしょう。


「はい。頑張りますわ」

 私はやりすぎないように、優雅に微笑んだ。




 メリッサ様は、王子妃教育、王太子妃教育、王妃教育まで全て教えてくれました。

 復習になるだけかと思ってましたが、クズ女よりも遥かに知識が多く、新たに覚える事も多かったです。

 それでも予定の半分の年数で全て終わってしまいました。

 基礎があるので当たり前です。


 残りの年数は、本来王が担うべき事も教えていただきました。

 諸外国の情勢、今の国が抱える問題点、今後起こるであろう問題。

 なぜこの方が国を率いる事が出来なかったのでしょう。

 必ず「これは私の知識なので、数年前の事ですが」と前置きを付けるのですが、私が王太子の仕事を肩代わりしていたにも解決されていませんでした。


 前王の妹で、現王より年下の叔母。

 王陛下は自分よりも能力の高い彼女が邪魔だったのでしょう。

 王家から出た彼女に、ほとんど関わろうとしなかったのです。

 彼女が王家にいた時には散々世話になっておきながらね。

 だからこそ、今回は私も王家とは関わらずに学園への入学を迎える事ができました。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る