~葵の章~
第77話元服の儀
パパ上は僕の童子姿を物凄く気に入っている。
だから元服させることを嫌がった。嫌がった処で何時までも童子姿でいる訳にはいかないし既に準備も始めているので中止にする事も出来ない。何しろ、言い出しっぺが帝であるパパ上だから仕方ない。
「このように愛らしい童が他にいようか……理髪させるにはあまりにも惜しい」
身内贔屓もいい加減にして欲しい。付き合わされる公卿達が気の毒過ぎる。帝に向かって「否」を言える者なんて早々いない。パパ上の愚痴を聞きながらも僕の元服の儀は滞りなくやってきた。
拝啓、前世の皆々様、今世の父上様が僕の寿命を縮めにきています。
パパ上は僕をどうしたいの?
僕の最大の後見人である「
絶対にそうとしか思えない。パパ上は僕を守る気ある?もしかして獅子の子落しを実践させてるの?生まれたばかりの子獅子を谷に蹴落として這い上がって来るのを待つのが愛情とでも思ってる?人間の子である僕は間違いなく死ぬ。
「どうだい、光!素晴らしいだろう!東宮に劣らない仕度をしたんだよ!」
眩しいまでに「良いことした」の顔が恨めしい。
兄上の元服の儀は南殿で行われた。
その時の威勢に劣らないようの豪華な儀式。
本来、春宮の元服の儀よりも質素にやるべきなのに……逆に盛大に行ったのだ。
しかもだ、加冠役は左大臣。
どうしてこうなった。
ニコニコ微笑んでいるパパ上。
愛息が成人する姿を涙を流して喜んでいる。
これが普通の家庭なら「親バカ」で終わるんだけど。
周りの公卿達も困惑している。
分かる。
分かるぞ、その気持ち。
日陰の皇子の元服の儀が東宮と同等。
これで皇位継承争い勃発か!と思いきや、日陰の皇子は臣籍降下。意味が分からないよね。公卿達の祝いの言葉は当たりさわりのないものばかり。僕の立ち位置が良く分からない証拠だ。大丈夫、僕もよく分かってない。これで官位が他の大貴族の子息達と同格のレベルならまだ問題なかったんだろうけど、パパ上はやらかした。
正三位大納言。
原作よりも遥かに高位の地位に就いた。
元服したばかりの十二歳の少年が大納言って……親バカもここまでくれば有害だ。
「本来は『従三位』を与えるはずであったが、周りを説得させて『正三位』に出来た事は実に喜ばしい」
パパ上分かってる?
右大臣の横っ面を殴ったに等しい事を!
皇族でもない、藤原氏でもない、新たな勢力を誕生に公卿達がざわついた意味を!
出る杭は打たれるって言葉を知らんのか?
僕が右大臣家と仲良くなかったら闇討ちで消されてる案件だよ!バカたれ!!
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