第65話浮気男2


数ヶ月後――



「少将が浮気をしています」


僕と兄上と四の君とで、のんびりとお茶していた中での四の君の言葉。



「え?また?ねぇ、四の君。そろそろ離縁したら?四の君なら婿候補が列を並ぶよ?浮気者なんて捨てちゃった方がいいよ~。後、二年待って、僕と結婚しよ?」


浮気男に四の君は勿体ない。

美人で家柄も血筋も良い財産付きの一流の女人なんだから!

原作通りにいけば二年後の十二歳で元服する。

その時に僕の奥さんになってくれると一番いい。

御所に居る女人や他の公家の姫君よりも、よっぽど僕と相性がいい四の君が奥さんになってくれると嬉しいんだけどな。

バツイチ?

僕は全く気にしない。

そもそも、この時代の離婚率ってめっちゃくちゃ高い!

女性は屋敷の奥に引き籠りがちと思われているけど(実際そうだけど)、財産分与は公平にあるから、家もち土地持ち金持ちの女性は結構いる。

男に捨てられて困窮してる女性もいるけど、それって、財を男に貢いだ結果だったり、元から親に財力が無かったケースが大半だ。寧ろ、金持ちの女性に捨てられた男の方が全体的に多い。


「ダメだよ、光。他所の家庭を壊すようなことを言っては」


「兄上…でも」


「光」


「はい」


「良い子だね」


そういうと、兄上は僕の頭を優しく撫でてくれる。

これが無茶苦茶気持ちいい。

癖になりそう!



「四の君も光を刺激しないようにね」


「はい」


「左近衛の少将は女人の中でも大変人気だ。名家の出身で、本人も才能豊かな美しい公達だからね。女人が放っておかないのだろう。もう少し大目に見てはどうかな」


「そうは申しますが、少将ときたら悪友と一緒になって遊び惚けているのです。しかも『理想の女人探し』と評してあちらこちらと……この分では数年後に隠し子が数名名乗り出てもおかしくない有り様です」


「やれやれ。理想の女人、といっても人それぞれ好みがあるからね。そう簡単には見つからないだろうに」


兄上も呆れている。

左近衛の少将の恋人のリサイクルはそれだけ酷いものがあるから仕方ない。

正妻に迎えるなら名門公家の姫君、恋人に選ぶなら中流の出。というのが昨今の風潮に成りつつある。


傅かれている上流の女性は、教養高く世間の評判もいいけど気位が高く面白味も欠け、何かと気遣わないといけないから面倒。

下流の女性は気心がしれて、はっとする面白い一面があるものの、教養もなく品もないので妻には決して出来ない。

その点、中流の女性は、そこそこ教養も品もある。なかには上流の女性以上の教養を身につけている場合もある。気が利く女性も多いし、男を立ててくれる。


早い話が、浮気するなら中流貴族の女性が一番いい、ってことだ。

子供が出来れば側室として迎えればいいだけだしね。

それに、中流貴族の女性は物持ちが多い。男に頼らなくとも親が残した財産で暮らしていける女性もいるし、財産が無くとも教養があれば宮中に出仕して女官として働けばいいし、女官が嫌なら上流クラスの家に女房として働くという手もある。


色んな意味で、中流の女性は強い。



「女人を甘く見ればどうなるか。彼らに目にもの見せて差し上げましょう」



四の君が宣言した数日後に、少将の悪友たちの醜聞が都を駆け巡った。


一人は、恋人に貢いだ挙句に捨てられ、正妻から離縁と養育費を一括で払う羽目になった。

もう一人は、美しい側室が余所に借金をしていた事が判明し、家財を投げうる事態になり、正妻が三下り半を叩きつけた。

最後の一人は、恋人が自分以外にも男がいた事が分かり刃傷沙汰になり、床から起き上がれなくなった。


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