第61話閑話 明石の夫婦からの手紙~山賊狩り~


【二の宮様、お元気ですか?播磨はりまでの生活も慣れてきましたので、お約束通り、手紙を書いてみました。

播磨はりまは良い処ですよ。都よりも気候が良く、野菜も果物も新鮮で生のままでも十分美味しいのです。

私は生まれて始めて海を見ましたが、海は凄いですよ。海は何処までも広く、どこまでも続いております。海を越えた先に淡路があるのですが、天気がいい時は島の形まで見えるほどです。

近くには山もあり、毎日、山の幸と海の幸で食卓が賑やかなものです。

まさか海の魚を毎日食べられる日が来るとは夢にも思いませんでしたよ。

最近では、釣り始めましたが、これがまた難しい。まったく釣れないのです。釣りに来ていた百姓は私が釣り上げるのが遅すぎると言いうのです、酷いものでしょう。

そうそう、播磨はりまの領内ではありませんが、探検がてらに淡路まで足を運んだ処、そこを縄張りにしている民に出会ったのですが、どうやら行き違いがあったようで、いきなり集団で襲いかかってきました。

ああ。御安心召されますな。我が妻が全てねじ伏せてしまいましたので、こちらの被害は全く出ておりません。

いやはや、妻の惚れ惚れするまでの武術を二の宮様にも是非ぜひ御見せしたかった。

襲ってくる相手を投げ飛ばし、それでも屈さない者には素手で首をねじ切ってしまったのです!どうです!素晴らしいでしょう!

集団たちも今ではとっても良き民となり、私たち夫婦に仕えてくれております。

そのような経緯があったせいか、妻のことを『明石の御前様』と呼び始め、夫である私は『明石の殿様』と呼ばれているんですよ。面白いですね!】





【二の宮様、御無沙汰しております。ご連絡が遅れて申し訳ありません。

播磨はりまは南側が海に面しており、直ぐ向こう側には淡路が、さらに南には伊予之二名島いよのふたなのしま(四国のこと)がございます。

西の先には大宰府だざいふがありますが、播磨はりまから大宰府だざいふに行くにはやはり海を越えた方が早いと思われます。漁師たちの話では浅瀬のため波を比較的穏やかな時が多いと聞き及んでおりますので、

梅雨時期や冬季を除けば行き来は可能かと思われます。

夫に同行しました淡路への旅路に山賊に出くわしたのですが、それは撃墜しており、我らの配下に組み込んでおります。

なんでも元は百姓の出であったそうですが、税の取り立てが厳しく田畑を売り払ってしまい仕事のあてもなく彷徨っていた者達が多数です。

勿論、悪事を働くのは宜しくありませんが、彼らの罪は、休む暇も与えない程国のために働くことで免除して頂きたいのです。

山賊たちの中に、建築技能を持つ者がおり、その者達に命じて船を造らせております。

完成すれば、太宰府まで航海に出る予定です。この播磨はりまは交通の要所になりうる場所だと感じております。

大宰府だざいふ、淡路、伊予之二名島いよのふたなのしまを経由し播磨はりまから都までの貿易が可能になると信じております。】








◇◇◇◇◇◇◇◇


太宰府:九州。

物語では九州全体を差すようになります!

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