第26話 謎の村の妖怪たち

「なるほど、なるほど。ご両人とも、登山中に道に迷ってしまいましたか」


「はい」


「いやぁ、安心して下さいまし。ここにゃ、そういう客人が多いので、すぐに助けさきます。ごゆっくりしてくだされ」


「はい、ありがとうございます」


 謎の老人が部屋から出て行ったのを確認した翔は――――


「なぁ、あかり?」


「はい、なんでしょうか?」


「俺たちは、修行とか言われた霊山ってで鬼ごっこをしていた。すると君は、こう言ったよね、時空を越えて別次元に来たって」


「はい、その通りですね。どう考えて、さっきまでいた年月よりも100年はズレがありますね」


「100年前に来たって事か……それはいい。誰だ? あの老人は?」


「誰と言われても私が知るはずないじゃないですか」


 やれやれと鳥羽あかりは首を左右に振り、こう続ける。


「山で迷った私たちは、へとへとになりながら、この限界集落にたどり着きました。そこで最初に出会った老人。それは翔先輩も覚えているでしょう?」


「いや、俺にその記憶がない。気がついたら、ここにいた」


「あらあら、それじゃあのお爺さんは人間に悪い影響を与える存在って事ですね」


「……? 今までみたいな悪霊じゃないのか? ついでに、お前には無害なのか?」


「ついでに? 彼女の安全とか、危険には無関心なのですか?」


「いや、ごめんって。ほら、あかりって俺より強いじゃん?」


「むむむっ! まぁいいですよ。続けます……


 ある程度、私の正体に気づいているのでしょう。翔先輩に攻撃を仕掛けようとしてそこで初めて気づいた。このままだと戦争になってしまう……」


「それで、自分は無害だと証明するために、無条件降伏としてこうなってる?」


「はい、嫌ですね。超常的存在のコミュニケーションって分かり難くて。日本語が話せるなら、言葉で説明しろっての!」


「お口が悪くなっているぞ。それで、ここにいても大丈夫なのか? 君は安全でも俺は攻撃されないのか?」


「それは、大丈夫なのでしょうけれでも……もしかしたら、何かのお願いはしてくるかもしれませんね」


「お願い?」


「はい、アレは、そういう部類の超常現象でしょうね。

 迷わせてやってきた旅人に無事を保障する代償にお願いを叶えてもらう」


「あぁ、随分と、なんて言うか……妖怪的だな」


「なんですか、妖怪的って? まぁ、そういう詐欺師ぽいのが特徴的な妖怪っていますよね」


「念のために確認するけど、これってアクシデントだよな?」


「……と言いますと?」


「いや、元々は修行のために山にきて、ここに来たんだろう? それを含めて、けあきが用意した修行って可能性は?」


「ん~ 可能性は0ではないと思いますが、時空を越える妖怪を従えて修行としているのらスパルタが過ぎると思いますよ」


「まぁ……だよなぁ」


「おやおや、こんなに話こんでいましら来たみたいですよ。『お願い』の時間ってのが」


「ん? 足音か?」


「お客様、少々失礼します」と謎の老人。 あかりが言うには超常的な妖怪が部屋に入って来た。 そして、彼はこう言うのだ。


「実は、この村で妙な事件が続いています。満月の夜に村人が姿を消してしまう……神隠しに会うのです」


「神隠しですか? それを僕らで原因を突き止めろと?」


「はい、もう村の住人じゃダメですわ。誰が犯人か? アイツが怪しい、いやいやコイツだ……なんて、みんながみんなを疑う状態でして……お恥ずかしい」


「なるほど、それじゃ部外者である俺たちが事件を調査するのに相応しいと?」


「はい、その通りで――――」と言いかけた老人の言葉を遮ったのは、あかりだった。


「ちょっと待った。 1つ約束をしてください」


「――――はい、なんでしょうか? ワシらでできる事ならなんでも」と老人は言うが、一瞬だけ見せた鋭い視線は誤魔化せない。


」 




 凛とした神聖さが場を支配した。


 少なくとも正道 翔には、そう思えた。


「あかり……今、何を?」


「契約を結びました。これに偽りがあれば、存在を捻じ曲げるほどの罰を与えると」


「……ありがとう」


「え? 翔先輩?」


「いや、なんて言うか。俺の安全を優先してくれたんだろ?」


「は、はい! な、なんせ私たちはこ、恋人……そう、恋人なのですから!」


 若干、バカップル感を出した翔とあかり。 


 流石の老人も空気を読んだのか「……」とそれが終わるまで待ちの体勢になっていた。


 ・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・


「村人に話を聞こうとしても歓迎されていないみたいだな」


「そうですね。みんな家の中に隠れてしまって、こちらの様子を窺っているみたいです。でも、こういう時は、子供か、若い娘がヒントをくれる。そういう決まりがあるのです」


「……本当かよ?」


「本当ですよ、ほら!」とあかりが指した方向。 確かに、少女がコチラの様子を窺っていた。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る