第17話 けあきの別荘 それから敵襲!?
「本当にここで泊まっていいのか!」
「はい、天王家が所有している別荘……のようなものです」
「ん~ 別荘というよりも旅館だな」
「まぁ、実際に旅館だった建物を買い取ったので、間違いでもありません。部屋は、どこでも自由に使ってください」
「おぉ! それでは、翔先輩! 早く2人の部屋を決めて……」
「待て、あかり。部屋は、別だからな?」
「え?」
「なんで、純粋に驚いた顔してるんだ!」
「普通、カップルに部屋を自由に決めさせたら相部屋になるもんじゃないですかね?」
「いや、この後、加茂先生も合流するんだ。
さすがにまずいだろ!?」
「そうです、狐さん。私の所有地ではしたない真似は止めてくださいね」
「えー 翔先輩、加茂は遅れてるのだから、それまでは、えっちぃ事をしましょうよ! けあきも言葉とは裏腹にワクワクしてるじゃないですか」
「し、失敬ですよ。私は別にドキドキワクワクを楽しんでなどいません!」
「そんなニマニマ顔で説得力がありませんね。本音は?」
「中高一貫の女子高でしたので、周囲に浮いた話などなく、少女漫画みたいな展開を楽しんでいます」
「まぁ、これから私と翔先輩との間で行われる行為は少女マンガじゃ倫理員会的にNGな行為になるわけですがね!(ドヤ顔)」
「いや、そんな行為にはならない!」
「……はぁ、チキンですね」
「え? 今のあかりじゃなくて、けあき?」
「いえ、なんでもありません。聞き間違いじゃありませんか(ニッコリ)」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「それでは、各部屋に内風呂として温泉もついています。何か急用がありましたら、私の式神が定期的に建物内を回っていますので、声をかけてください」
「あぁ、わかったよ」と翔は選んだ部屋に入った。
「しかし、式神を従業員の代わりに使っているのか。便利そうだな……おっ! 本当だ。内風呂か……」
(いや、待てよ! 内風呂と言うから、1人で入る様な小さな浴槽を想像していたが、かなりの広さがあるぞ)
「ちょっと入ってみるか」と翔は、さっそく服を脱ぎだした。
「ふっ……癒さるなぁ。思っていた以上に疲労が溜まっていたみたいだ」
(考えてみたら、日常じゃあり得ないほどな戦闘ばかりだったからなぁ。こうやって自分の体を見たら、知らない間に傷が増えてる)
もしかしたら、こういう疲労や傷の回復を見越して、けあきは温泉のある別荘に連れてきてくれたのかもしれない。
そんな事を考えていたタイミングだった。
「え? (浴槽の中、何か影が近づいて……あかり? いや、違う。これは殺気だ!)」
「このっ!」と水面に拳を叩き込む翔。しかし――――
(ちっ! 水中での蹴りはできない。突きも手ごたえが薄い!)
「こいつ! 俺の脚を掴んで水中まで―――――馬鹿な! さっきまで座っていたはずの深さだぞ! 水中に引き込めるはずなんて……」
だが、実際に影は翔の脚を掴み、水中に引き込んでいく。
(深い! 頭の先まで、引き込まれて更に潜って……これは現実ではないのか!)
そして、見た。 水中に引き込んでいこうとする影を――――
(影……本当に黒いモヤを身に纏っているような体。顔は――――仮面?)
ソイツは白い、白い仮面をつけていた。 まるで髑髏のような仮面。
全身に身に纏った黒い影もあって、まるで死神のように見えた。
「ごぼごぼごぼ(だが、このまま死んでやるわけにはいかないだろが!)」
(脚を引くことで無理やり死神野郎との距離を近づけて、俺の脚を掴んでいる腕を逆に――――)
――――敢行
(やれやれ、まさか本当にマチャド柔術が役に立つなんてね。このまま俺の息が持たなくなるよりも前に――――その腕、一本折らせてもらう!)
その死神は、人間の構造をしているのか?
本当に関節技が効くのか?
そんな事は翔にはわからない。
(――――でも、怪物の戦いに置いて重要なのは『概念』だって聞いた)
(だったら、俺が放つ、腕を折るという強い意思は『概念』として攻撃になるはず! さぁ、ここからは我慢比べだぞ! 死神が!)
ここで少しだけ翔は後悔した事がある。 水面なら関節技じゃなく、絞め技を使用しとけば……
その考え、思考の弱さは『概念』の戦いにおいて弱さとなり――――
徐々に翔の意識を薄くしていった。
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