チクショー、早かったなあ!!
追手が追いついてきたよ。
いま絶賛、馬で追いかけられてます。
チクショー、早かったなあ!!
「止まれ!!」
誰が止まれと言われて止まるものか。
「止まらないなら撃つぞ!!」
振り返って、愕然とする。
げ、追手の片方が馬上からクロスボウを構えてやがる!!
まさかのデッドオアアライブ。
私は賞金首かなにかか!?
「待って!! 止まるから撃たないで!!」
これはもう止まるしかないね。
クロスボウを撃たれたらさすがに死ぬ。
とはいえどうにかこれ、くぐり抜けられないかなあ。
「よし。おとなしくしろ」
「はいはい」
ふたりとも顔見知りの騎士である。
トリストフとセルジャック。
「馬から降りろ。ゆっくりと、だ」
「はいはい」
トリストフの言葉に従い、下馬する。
セルジャックはクロスボウを下ろさない。
よくもまあ、これまで主家の娘だった私に凶器を向けていられるものだ。
「……で、何の用事かしら?」
「領都で四人殺したのは、クライニア、お前か?」
「そうよ」
「ステータスバグだと聞いていたが……どうやって冒険者四人を殺したんだ? 銅ランクとはいえ戦闘力のある男四人を、スキルもなしにどうやって」
「スキルならあるわよ。ただし読めないだけで」
「読めないスキルを使えるわけないだろう。嘘をつくな」
まあね。
読めなければ、それと自覚がなければスキルは使えない。
だけど私は読めたから、自在に使える。
とはいえどうしたものか。
クロスボウを向けられ続けるのは勘弁願いたい。
「ちょっとセルジャック。それ下ろしたら?」
「……クライニア様、いやクライニア。お前には殺人の嫌疑がかかっている。いや自白したからもう嫌疑ではなく殺人の罪がかかっている。男四人を殺した相手に油断はできない」
「男四人を相手に自衛しただけなのだけど。それでも罪になるの?」
「正当防衛ならば領主様の前でそう主張するがいい」
「私を始末する体の良い理由にされそうね。そう思わない?」
「それは……そんなことは……」
「セルジャック。父は私が抵抗したら死体にして連れ帰れと命じられているの?」
「…………」
黙り込んだセルジャックは、私から視線を逸した。
すかさず闘気法を起動。
射線から逃れつつ、魔法を叩き込む。
「〈フレイムランス〉!」
「まさかッ!?」
「なにッ!?」
スキルが使えないと勝手に思っていた騎士ふたりは、しかし炎の槍を回避した。
「――っ」
茂みに向けて走る。
クロスボウが向けられたのを視界の隅で確認。
トリストフが剣を抜く。
マズい。
殺される。
心臓が破裂しそうだ。
鼓動がうるさい。
クロスボウが発射された。
直線を描くボルトの軌跡に対して横に飛ぶ。
しかしそれはふたりの騎士にとっては織り込み済みの動き。
剣を構えたトリストフが待ち構えている。
「おとなしく――」
「〈アイスセイバー〉!」
「ぐおッ!?」
トリストフの剣に氷の大剣を叩きつけた。
ビシビシと音を立てて凍りつくトリストフの剣。
だがセルジャックがクロスボウを捨てて剣を抜き、迫っている。
どうする、顔見知りのこのふたりを殺すのか、私!?
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