おお、これは便利な奴じゃん。
馬を借りて街を出る。
日は大きく傾いており、あと少しで夜になるところだった。
日が暮れると街の門は閉じられてしまうから、ギリギリセーフだ。
早足で馬を走らせながら、ステータスを確認する。
《名前 クライニア・イスエンド
種族 人間 年齢 15 性別 女
クラス メイジ レベル 22
スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】
【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【剣技】【魔力制御】【?】
【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》
思った通りだ。
四人を殺したことでレベルが上がっている。
【経験値20倍】のおかげでレベルは一気に22に。
【熟練度20倍】のおかげで【剣技】と【魔力制御】を得た。
メイジのレベルアップは嬉しい。
レベル20で上級クラス解放とスキルひとつを獲得できるのだ。
さっそく【?】を選択して、スキルを確定させる。
メイジで得られるスキルだから大したものではないだろうけど、魔法系のスキルなのは確定なので何が出てもありがたい。
【?】はクルクルと文字が回転して、【魔法範囲拡大】になった。
確か範囲魔法の効果範囲を拡大するスキルだ。
悪くない。
クラスはメイジをこのまま伸ばすのも悪くないのだけど、レベル20になるのがこれだけ簡単なら他の下級クラスに変える方がスキルが増えてお得かもしれない。
《名前 クライニア・イスエンド
種族 人間 年齢 15 性別 女
クラス グラップラー レベル 1
スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】
【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【剣技】【魔力制御】
【魔法範囲拡大】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》
現状、武器を持っていないので格闘系クラスのグラップラーを伸ばすことにした。
魔法が案外、簡単に使えそうなので何でもいいけれど、武器がなくても戦えるグラップラーは心強い。
街道を行く。
日が暮れて夜が訪れる。
私は暗視の魔法〈ナイトウォーカー〉を行使した。
視界良好。
馬にもかける。
これで夜通し馬での移動ができる。
昼間に気を失って眠っていたせいで、眠気はまだこない。
できるだけ領都から離れて、隣の領に入りたいけど。
さすがに一晩じゃ無理だけどね。
なんと言っても、馬は隣街で返却することになっているのが痛い。
銀貨10枚の限界だ。
殺した四人の持ち物を奪っておくべきだっただろうか?
いや、そんなことをしていたら衛兵に通報されそうだし、門が閉まって街から出られなくなっていただろう。
だからこれでいいのだ。
二時間ほど走ったところで、馬が疲れてきたのかゆっくりと速度が落ちてきた。
仕方がないので野営する。
と言っても、野営の準備なんてないんだけどね。
水くらいなら魔法で出せるはずだ。
上向きに両手を重ねて器にする。
「〈クリエイトウォーター〉――ちょ、」
ボコリ、と水が溢れる。
あーあー、やっちゃったよ。
服が濡れてしまった。
生成する水の量を加減しないと駄目だったらしい。
手に残った水をすする。
うん、味も素っ気もない。
馬にも水をやりたいので、地面に〈クリエイトウォーター〉を放ち水たまりを作る。
泥水をすすらせることになるが、ないよりマシだと思うので我慢して欲しい。
さて、魔法の検証をしておこう。
いざというときになって、ぶっつけ本番は怖いからね。
まず基本魔法から行こう。
「〈マジックアロー〉」
金色に光る矢が生成され、目標にした木の枝に突き刺さる。
〈マジックアロー〉は無属性の基本攻撃魔法だが、追尾性能があるので使いやすい。
もうワンランク下げると〈マナボルト〉という魔力の矢をただ撃ち出すだけの魔法もあるのだが、追尾性能がないせいで使い手はいない。
せいぜい魔法の練習用に使われる程度だろう。
〈マジックアロー〉が無事に使えることが分かったので、攻撃魔法はひとまずこれで安泰だ。
とはいえ属性攻撃魔法もひとつずつは試したいね。
いざというときに弱点を突けたり、その属性でしか倒せない厄介な魔物だって存在するらしいし。
属性は地水火風、炎氷雷、光闇の九属性ある。
それ以外にも系統外属性というものがあり、時空属性などがそれに当たる。
ん、そういえば系統外属性は私、使えるのだろうか。
「〈ストレージ〉」
グワっと黒い穴が空く。
おお、これは便利な奴じゃん。
カバンいらなかったんじゃないのこれ。
……いや、時空属性の使い手は希少だから、確か国とか領主に囲われることがあるんだっけ。
隠れて使うしかないかな。
なんにせよ、【全属性魔法】は系統外属性も使えるという事実は大きい。
さて、属性魔法を試そう。
「ええと、〈アースハンマー〉」
ドカン!
馬がビビる。
すまない、ちょっと大きかったね。
「次、〈ウォータースピア〉」
ズドン!
加減はしたけど、やっぱり馬がビビってこっちを見てくる。
すまない、木の幹を貫くとは思わなかったんだ、許せ。
「〈ファイアボール〉」
ボン!
予め集めておいた枯れ木に火がつく。
よし焚き火オッケー。
「ええと下位属性最後は〈ウィンドカッター〉」
シュバ!
木の枝が落ちる。
うん、下位四属性は問題なさそうだね。
次は中位三属性だけど、威力が高いんだよね確か。
今更かな。
「〈フレイムランス〉」
ボオン!!
「〈アイスセイバー〉」
シャキーン!!
「〈ライトニング〉」
バリバリドカーン!!
……ぬう、やっぱり派手だなこれは。
威力も人間相手にはオーバーキル気味だし。
魔物相手なら手加減無用なんだけど。
さてさて残るは上位二属性だけど、あいにくと光属性の攻撃魔法は対アンデッド用のホーリーライトしか知らない。
闇属性の攻撃魔法も精神攻撃なもので、対象がいない。
馬? 駄目だよ可愛そうだよ。
自分に撃つのも却下。
とはいえ発動するかは見とくか。
「〈ホーリーライト〉」
ペカー。
「〈ペインニードル〉」
……。
うん、闇属性の〈ペインニードル〉はちょっと分からないけど、魔力減ったし多分、発動したねこれ。
よし魔法の検証はこれでお終い。
馬の休憩を終えたら隣街に急ごう。
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