17 おそらくそれは再会なのかもしれない

「で? その短銃を友人が欲しがっているという理由については、特に何も思わなかったのか?」

「何かあるんだろうとは思いましたが~まああの友人の考えることならまあそう間違いではないだろうな~と思いまして、普通に請け負いました。

 楽しそうな依頼でもありましたし」

「楽しそう」

「結構難しそうな依頼でもありましたし。

 それに確かに女の子が簡単に護身に持つことができる銃があるのは悪くないなと思ったんですよね~」

「その理由は?」

「え~、ご婦人でも娘さんでも何でも、やはりかどわかしとかあるではないですか。

 その時に最初の一、二発で相手をまあ殺さずとも足止めできる様な護身用があると、もう少し気楽かなあ、と思うことがその昔留学していたことにちょいちょいありましたので」

「まあ帝都は、それなりに危険な場所は多かったろうな」

「あとこちらでも、森に迷い込んだ時に急な獰猛な動物が現れたら大変ですよね~そういう時に一発ばん、とやるだけでもずいぶん違いますから」

「それは確かに。

 宜しい、其方のその改良短銃に関しては、皇帝陛下の方に報告させてもらう。

 用途も込みでな。

 むしろ、私自身としては技術畑の職人としてスカウトしたいところだが」

「いえいえ」


 にこやかに笑いながらキーネルは手を振った。


「自分はもうあの面倒な帝都とお近づきになりたくは無いので、この国でのんびり暮らしていきたいと思います~ただしご依頼があれば何かしらのお仕事はいただきたく」

「そうか、考えておこう」


 座っていいですか~、とキーネルはそのままアイアンの横に腰を下ろした。

 それまでハリエットとアイアンの辺りに漂っていた物騒な空気が急にゆるくなるのをアンネリアは感じた。

 なかなかこういう人物は貴重だ、と彼女は思う。


「さて、ハリエット嬢」

「はい」

「唐突だが、そこに居るのは誰だと思うか?」


 アンネリアは先ほどハリエットに串を投げた金髪の子と、それをかばう様にマントで覆った黒衣の騎士を指す。


「……」


 ハリエットは軽く目を伏せる。

 濃い、長いまつげが彼女の表情に陰翳をつける。 


「さて、どなたでしょう。私にとっては預かりしらぬ人かと」

「本当にそうかな」 


 黒衣の騎士はつ、と立ち上がるとハリエット達の側に寄った。

 黒い髪、黒い太い眉、そして黒い、ぎょろりとした大きな強い瞳。


「ハリイ」


 低い声が、彼女に呼びかける。


「その名で呼ぶならば、まずそちらのお嬢さんの紹介をしたらどうだ? アスワド」

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