6話 月の姫は褒めてもらいたい。


 ——如月きさらぎ家にて。


いつきくん、ワタクシのエプロン姿は如何でございましょう?」


「おー!いいと思うよ。すごい似合ってるよ」


 リビングで、制服の上から白いエプロンを付けた梓が歩きながら回って僕に見せてくる。


 キッチンに立たない梓が、エプロンをしているのはおかしいけど、今日の彼女は制服を脱ぎたくないらしいから食事時用と思えばいいか。


「えーーと梓……。じゃあ僕は料理に戻るよ。テレビでも見てていいから」


「はい……ありがとうございました樹くん」


 キッチンに戻る僕。ご機嫌な顔をした梓が後をついてくる。


 ん?んんん?


 リビングでエプロン姿を誉めて置いてくる、付いてくる。リビングでエプロン姿を誉めて置いてくる、付いて………——。


 雷が、落ちる。


「梓!宿題してなさい!それかテレビ!」


「ひゃう!は、はいですわ……」


 うああああ!ごめん、違うんだ!別にそんなにしょんぼりさせるつもりじゃなかったんだ!美味しいご飯つくるからああ。


「さて!じゃあ、作りますか!カボチャシチュー!」


「はい。ハツネはお手伝いさせていただきます。下準備は完璧です。カボチャも切っておきました、どや!」


 おお!ありがたい!

 鶏肉と材料を炒めて、煮詰めて、シチューの粉と他の調味料を使って完成だ!

 キッチンに、カボチャとクリーミーな匂いが漂う。少しカボチャ色のシチューの見た目はよし、うむ味もよし。うん、上手くできただろうか。


「あずさー?シチューの味見くらいす……ありゃ……」


 梓は真っ白な宿題をテーブルに広げたままソファーで爆睡していた。

 小さい子みたいな表情で眠ってる梓は、本当に天女か天使みたいだ。寝顔を見ている限り、笑顔が途切れる気がしない。


「今日一日、やっぱり疲れたんだろうな……」


 そっとしておいてあげよう。


「おやすみ、梓。お疲れ様」

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