作品2-5

 ところが授業参観の日に私の中でそれがひっくり返った。クラスの者がみな教室の後ろや廊下に立つ親を意識して、休憩時間ともなれば一人ひとりが親元へ駆けて行く。私もその一人であった。


「全然手挙げないじゃないの。」

「えへへ。」


別に教育にうるさい母ではなかったから、単なる小突き合いで済む話であった。



 一方、いくつもの談笑の中には□□の姿もあって、


「お母さん、いつ来たの。」           

「ついさっきよ。よく手を挙げて答えていたわね。」

「お母さんが来ると思って、頑張ったよ。」


などと話ながら、□□は母の手をとったり、母親は□□の頭なんかを撫でたりしている。

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