第11話 - 2 仮》再》RE:》タイムトラベル

 ユメに泣きつかれた私は自殺することを諦めた。



「レイの分身もあと一人か……本当にもう、時間がないな」



 自殺することでこれまでの出来事をなかったことにするのは中止。となると、要因をさらに突き止めて取り除くか、あるいはーー。



「どこかで再び世界を二つにわける、か」



 しかしそんなことできるのか? これまでまタイムトラベルや宇宙人の襲来、異空間移動など様々なとんでも不可思議現象に直面したが、そんなことーー。



「ああっ!! できる、できたじゃん! ーー枝桜氏、さっきのどうやったの?」 


「さっ、さっきのとは?」


「人払いみたいなやつ。レイと少年が戦う前の」


「あ、あれは一時的なやつですよ? 架空の世界を作り出して、そこに私達が一時的に移動してるだけで…………まさか、ヨウヘイさん?」


「そうか、なるほどそうか。そうなると、あとはその後どうなるかだけど……」

  


 仮タイムトラベルでは誰か一人にのみ会いに行っていた。おそらく、その辺りに世界線重複の謎があるのだろう。しかし、もしもこれがそもそもの間違いだとしたら。



 宇宙人、未来人、超能力者。



 いずれかの人間の記憶が欠如している状態。



 どの選択肢もこれに該当する。

 


 すべての人間に出合い、そしてその記憶を保持すること。


  

 突破の道はこれではないだろうか。



 過去の自分を思い出せ。



 確かに、出会った順番を思い出せない。しかし、全員の記憶はある。つまり、順不動で構わないから全員の記憶を最終的に保持していた場合、α世界線に過去の私は進めたということだ。



 どれか一つが欠けても駄目。



 どれか一つだけでも駄目。



 チャンスはあと一回。



 チュウカの少年がレイに辿り着く前に終わらせなければ。



 でも、どうやって。



 自分のことなのに、自分の記憶が曖昧なせいで分からない。



 くそぅ。



「ヘイ様っ!」



 ユメ…………。



「私がおります。私がここにおります。そして、ヘイ様には桃子お嬢様がいらっしゃいます。忘れないでください。ひとりじゃないです。私達がついています。未来は今ここにあります。必ず、ありますから。ですからーー」



 ああ。そうだ。その通りだ。



 まったくまたかよ俺は。



 またですか、私は。



 つけあがって、思い上がって、また自分が特別な存在だと思い込んだのですか。



 バカバカしい。



 思い上がりも甚だしい。



 私は周りに翻弄されているだけの一般人。



 普遍的で、取替が効いて、代わりなんていくらでもいて、平々凡々。月並みな考えでありきたりな言葉を発し、これが生きている意味という希少価値を持てず、つまり生きてる意味なんてないし、生きてきた意味なんて見出す方が愚かなほどに平凡で、特別になんてなれやしない量産型。だから、だからこそ愛することができたこともある。好きになれたことがある。理解できたことがある。



「もう一度、これがラストだ!」

  





 ※ ※ ※ 




 


 光が収まったとき、私はプールサイドにいた。そこにはパラソルと机が複数あり、そのうちの一つに枝桜氏と私が座って話をしている。超能力者としての彼を調査しているあの時の私だ。タイムトラベルも何もしてなかった頃の私。懐かしいな。なんか、可愛く思えてきてしまう。



「世界の現状維持ですか……」



 さてさて、と……。会話もそろそろ終わりそうだ。タイミング良く仮タイムトラベルも終わりに近い。私が光に包まれ始めている。私はここで輝石を取り出し、仮タイムトラベル終了のエネルギーを使って再度タイムトラベルを試みた。なぜなら、タイムトラベルは何も一人限定と言うわけではないからだ。人払いに使った異世界分離の超能力。これをうまく利用しようってわけ。



 ユメが借りる仮の形で能力を継承し、仮タイムトラベル終了直前に共に飛んできていたユメが能力を発動。私、ユメ、過去の私を分離して再タイムトラベル。光が収まって着地した次の場所は食堂だ。食堂では麻婆豆腐をデカい皿でかき込んでいる味楽来玖瑠実と先程の過去の私が対面。しばし会話があって、再び仮タイムトラベル終了直前にユメが能力発動。私、ユメ、過去の私を分離してタイムトラベル。



 その次、最後は旧校舎旧館の旧文芸部室。なんだかここも懐かしく思える。ここ数日の話なのにな。



 過去の私が調査を継続、保留として帰る前に能力発動。再びタイムトラベル。次はどこかな。タイムトラベルを再び。何度も、何度でも。繰り返せ。繰り返せ。一度の仮タイムトラベルを何度も繰り返す。何度繰り返しても、それは一回の時空間移動としてカウントされる。そのため、過去の私は選択肢を一度しか選んでいないにもかかわらず、同時に三つ選択して調査を終えたことになるのだ。ああ、そうだ。そしてその後姫様の部屋でユメと初めて出会う。なるほどな、あのときの違和感は正しかったんだ。こうして過去の私にとっての未来の私が時空間を操作していたから、選択肢を同時にこなす荒業が起きていたのだ。そして最後に今の私とユメが仮タイムトラベルを繰り返し、無限ループとなったエネルギーを利用し、再度タイムトラベルを、RE:タイムトラベルをする。無限ループは終了し、過去の私は報告するため姫の部屋に向かっていった。



 今の私とユメは次の目的地、この選択肢を行う更に過去の時間へ向けて旅立っていった。



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