第5話・重大発表

 8月が終わって、9月が来た……参歩はどこかのカフェの店内の画像を背景に自身のアバターである銀髪ショートヘアの青眼のシュッとしたクールな面持ちの茶色を基調としたチェック柄の探偵帽を被った茶色のロングコートを纏った男を出して、画面左上に「重大発表」の表記を出す。


「大丈夫かな? 皆聞こえてるかい?」


 既に配信をしており、参歩の問いに対して、コメント欄で「聞こえる!」「おひさー!」「寂しかったー!」とリスナーたちが堪える。


 それを確認した参歩は「よし! じゃあ、始めるか」と言って挨拶を始めた。


「皆さん、本日はこの配信に来ていただき、誠にありがとうございます。インデックスの名探偵! 土手川 参歩だ」


 いつもとは少し違う声のトーンの挨拶を済ませて、1ヵ月の活動休止について詫びる。


「急な配信活動の休止で、皆を困惑させたことについて謝らせてくれ! 申し訳なかった……個人的な事情だったこともあって、それしか言う言葉が思いつかない」


 そして、参歩は意を決したように続けた。


「今日の発表について……これはリスナーだけでなく。インデックスの皆にも隠していたことだったけど、社長からも許可が下りたからこのことを発表させてもらう」


参歩は「2人とも、出てきてくれ!」と言うと、自身の左にエメリオのアバターと同じ顔をしたピンクのエプロンをつけた丸渕眼鏡をかけた茶髪ショートポニーの女子高生と、エメリオのアバターである帰国子女の制服姿の銀髪ロングヘアの女子高生が現れた。


「知っている人は知っている……インデックスの元2期生でイラストレーターとしても活躍しているリーシャ・ホームズと、インデックスの16期生で俺と一緒に8月から今日まで活動休止を受けていたエメリオ・ドイルだ」


 その時、コメント欄は「え? どうしてこの人が?」「ちょっと待って、リーシャさんとエメリオちゃんのアバターって顔似てない?」「そもそも、活動休止になった理由って何?」とザワつく。


 そんなコメント欄を他所に参歩は「この度、この俺! 土手川 参歩は! 元妻のリーシャ・ホームズと復縁したことを、この場を借りてお伝えします!」とハッキリと公言した。


 当然のことながら、コメント欄はとんでもないことになっていた。


「ええええええええええ!」


「参歩さんってバツイチだったの!?」


「待ってこの人、リーシャさんのこと元妻って言った?」


「復縁って……USODESYO!」


「この2人結婚してたのか!」


「じゃあエメリオちゃんって……参歩さんの娘ってこと!?」


 大騒ぎのコメント欄に対して参歩はそれ以上に言いたかったことをリスナーたちに言った。


「動揺するのも無理はないよな。だって結婚していたとかそう言った話はしなかったし……だがな? 皆よりも俺が一番驚いてんだ……なんてたって離婚してすぐに娘が生まれていて……そのことを知らないまま15年も過ぎてその娘がVtuberになって俺の前に現れたんだからな!」


 参歩の言い分にリーシャも「まあ、それもそうよね……私も離婚してすぐにランページに移籍してあなたのことを避けていたわけだから……」と当時のことに罪悪感を感じる。


 しかし、エメリオは「言っておくけどあたしもお父さんと初コラボした後に、お母さんから「あら、お父さんと会ったの?」と言われた時はビックリしたからね! 両親揃って有名なVtuberだって知った時は「噓でしょ!?」って思ったもん」と自分も驚いていたことを訴える。


 すると、エメリオの言葉を聞いたリスナーのひとりが500円のスパチャで「本当にエメリオちゃんはおふたりの娘なんですか?」と質問してきたため、参歩はその質問に答えた。


「エメリオは本当におふたりの娘なんですか? ハッキリと言っておく! エメリオは間違いなく俺とリーシャの間に生まれた子だ。検査結果もそれを証明しているし、何より、リーシャからエメリオのことを知らされた時から確信はしていた」


 参歩がそう答えると、リーシャが「というわけで、私はランページからインデックスに戻ることになったので、ホームズの姓を捨てて、今日から土手川 リーシャになるのでそこのところよろしくお願いします!」と言うと、エメリオも続くように「あたしも今日から土手川 エメリオになるからよろしくね!」と母娘ともに姓が変わることを伝える。


 そう言うこともあって参歩は動画を閉めに入った。


「まあ、こういうことなので今後、土手川家は親子3人揃って配信活動を続けていきますので、これからも応援の方をよろしくお願いいたします!」


 参歩はそう言ってマイクを切って自分たちのアバターを画面から消して「ご視聴ありがとうございました」の表示を出すと、コメント欄に「御祝儀代」と入ったスパチャがいくつも投げられていた。

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