☪︎月兎

樹視点

何かを求めるように、縋るように、睡眠薬を大量に飲む。

うぷ、と吐き出しそうになってもそれを飲み込む。

もう未練はない。

大丈夫。

止める人は誰もいない。

俺を必要とする人は誰もいない。

段々と意識が薄れていく。

即効性があるんだと飲んで初めて知った。

瞼が自然と閉じていく。

「…!!」

何かが聞こえる。

「…つき…!!」

必死に、呼びかけるような、訴えるような、そんな、声。

「樹!!」

やっとはっきり聞こえた。自分の名前だった。

聞き覚えのある声だった。

ゆっくりと目を開ける。

ベッドの上、見覚えのない天井。

よく知っている。友人の姿。

「…日向?」

小さく名前を呼ぶ。

「あぁ…!あぁ…!生きていた!!もう自殺なんかしないで!!」

…どうやら俺は死ねなかったようだ。

ボロボロと涙を流しながら俺を叱る。

自殺をして怒っているのか、悲しんでいるのかどちらか分からない。

ただ分かるのは俺が生きていて喜んでいてくれていること。

…必要とされていたんだ。

嬉しかった。

分からなかっただけで本当は必要とされていたんだ。

まるで、夢みたいだ。

そう…本当に、夢みたい。











これは、幸せな夢。

永遠と見続けられる、幸せな夢。



Happy end

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