ねこ増殖

仲仁へび(旧:離久)

第1話 ねこ



 家に帰る道の途中で、私はそれと出会った。


 黒い生き物。

 小さな生き物。


 道の上で毛づくろいをしている。


 猫だ。


 目線の先に猫がいる。


 道路の真ん中でのんびりしているその猫。


 放っておいて大丈夫だろうか、と不安になった。


 近頃、野良猫の虐待のニュースが出回っていたからだ。


 犯人はこの地域の人間かもしれない。


 そう思った猫を飼っている地域の皆さんは、自分の猫を極力外に出さないようにしている。


 猫は愛らしいのに。


 こんなに愛らしい猫を虐待するなんて、犯人の気がしれない。


 きっと、人間ではないのだろう。


 人間には、元から弱い者や愛らしい物に優しくなる機構が備わっていると思うし。


 だからうん、犯人は人間ではないと思った。


 けれど目の前の猫は、そんな地域の事もしらないように、のんびりしている。


 どこからどみても、とても愛らしい。


 愛らしい事は正義だ。


 私はほんの数分、のんびりながめて、猫を愛でた。


 

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