第18話
「……『勇者』、ねぇ」
あの男はただの
「……困ったな」
ジャックは頭を抱える。ナナセの率いているという
あの微弱な魔法や素人同然の動きで、マホドーラのマフィア達を倒せるとは到底思えなかった。つまり、協力者が居る。それは、マフィア達を嫌っている者や組織の裏切り者かもしれない。
おまけに、正義の味方気取りのナナセ(或いはその周囲達)は、きっと善意で襲撃を行なっている。『騙す奴が悪い』『金銭を釣り上げる方が悪い』等のそういう理由で。
実は、今いるこの街の一角はマフィア達の影響力で秩序がある程度保たれていた。なので、勇者御一行様のお陰で、今まで秩序が保たれていた筈の状況が悪くなるかも知れない。そうなると色々面倒な事が起こる可能性が出てくる。
「レイヴン」
「何か御用でしょうかー?」
短く声を掛ければ、少し大きな首の後ろが白い
「仕事を、頼んでも良いかな」
人の言葉で返事をした鴉に、ジャックは先に報酬を差し出した。解っているくせに敢えて訊き返すこの鴉は、あまり信用し過ぎてはいけない。
レイヴンはジャックのみでなく色々な組織に様々な情報を流す情報屋だからだ。そうでなくとも、基本的にはマホドーラの住民達は自分の為だけに動くのだから、何かをして欲しい時は先ずは自身で
×
一先ず落ち着いて思考を巡らそうと、住処に戻った。
が、
『——……』
玄関の前で、ジャックは足を止める。ドアの向こうから、音が聞こえだからだ。
「……………はあ?」
唯一の家具であったソファの軋む音に、乱れる荒い息。湿っぽい声の混ざる吐息、粘膜同士の擦れる水音。
薄暗い部屋の中に見える、獣の様に互いを貪り合う、その影。
ジャックは溜息すら出なかった。漏れ聞こえる声だけで分かる。また、あの兎人の女だ。
「……」
ジャックはそのまま銃に手を伸ばし
「……本当。救いようが無いね」
ドア越しに、その脳天を撃ち抜いた。
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