ep3 勘違い
楓と一緒に登校した。
学校は私と楓だけではない。
もちろん、私がメイクしていることに気づいて話しかけてくれる子もいた。
「根岸、ちょっと職員室に来い」
担任の先生が少し怒り気味で私を呼んだ。
私は職員室に呼ばれた。
なんだろう……。怒られるようなことをした記憶はない。
「まぁ、単刀直入にいうが、根岸、今日、化粧して来ているだろ」
「はい」
「学校に化粧は禁止だぞ、わかっているのか? まだ、制服の中にフード付きの服着ているくらいなら見逃すが、化粧はまだ少し早い」
「っですが、先生!! 社会人になればメイクは必須です」
「まだ、根岸は社会人ではないし、それなら、入学式の日から化粧してこい」
結局、その日は、メイクを落とすだけで許された。
メイクを落とした日の放課後の帰り道。
れれまると楓が一緒にいるところを見かけた。
「今日の朝はごめんなぁ」
「しかたないよ、今日はねむちと朝は約束してたみたいだし」
「でも、れれさんもオレのこと好き……」
そこだけを私は聞いてしまった。
そっか、楓はれれまるが好きなんだ。
きっと、あのバレンタインのチョコも義理で、
ホントはれれまるに渡したかったのだろう。
それなのに……。
どうして楓は私にハート型の「好きだよ」って器用に頑張って書いたのがわかる
不器用なチョコを私に渡したのだろうか……。
それまでの楓との思い出が走馬灯のように走ってきた。
どうせ、私なんて誰からも必要とされていないんだ。
そんな事を考えていて、ぼんやり帰っていた。
涙で前がぼやけて見えていた。
そこにプープーと乗用車がクラクションを鳴らしながら、
尋常じゃないスピードで走っていた。
あぁ、そうか、私はこれで死ぬんだ。
ありがとう世界。
これからもみんなに優しくあり続けて。
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