第27話027「生還」
【告知】
第7回カクヨムWeb小説コンテスト】中間選考突破しました!
ひゃっほい!
「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」
https://kakuyomu.jp/works/16816700427239834870
********************
「何っ!? 本当か、古河っ!」
「ああ。信じられない話だが⋯⋯⋯⋯日下部が生還したらしい」
『瑛二がダンジョンから生還した』⋯⋯⋯⋯俺は、瑛二がダンジョンで死んだと知らされてから、ずっと部屋に閉じこもり、自殺さえ考えていたそんな時、古河が『ダンダンダン!』と乱暴にドアを叩きながら「瑛二が生還したらしい!」と叫んでいた。
俺はそれで咄嗟にドアを開けて今に至る。
「マ、マジなの⋯⋯か? え、瑛二が生きて⋯⋯いた⋯⋯?!」
俺は古河の目の前ではあったが、そんなこと関係なく、膝から崩れ落ちボロボロと大泣きをした。
「よかった⋯⋯本当によかった! これで⋯⋯ちゃんと⋯⋯瑛二に謝ることが⋯⋯できる」
「⋯⋯さあ行こう、吾妻!」
そうして、古河に体を起こしてもらった俺は急いで『王宮の間』へと向かった。
********************
「柊木っ!」
「! 吾妻、古河さん!」
俺たちが王宮の間へ行くと、そこにはすでに柊木たちやシャルロット様、ブキャナン宰相などが集まっていた。
「瑛二が生きていたってのは本当なのか!?」
俺は柊木に胸ぐらを掴み、突っかかるように聞いた。
「し、知りませんよ!? ただ、門番をしている兵士からそのような報告があったとだけしか⋯⋯とりあえず、この手を離してください!」
「あ、ああ⋯⋯!? す、すまん⋯⋯柊木」
俺はつい興奮して喧嘩をふっかけるようなマネをしてしまったことを柊木に謝る。現在、王宮の間では『日下部がダンジョンから生還した』という話で騒然となっていた。
「い、今、エイジ・クサカベ様は、門番の兵士と共に
シャルロットがそう言って皆にこのまま待つよう指示を出す。
ああ⋯⋯瑛二は本当に生きているのだろうか? 誤報とかではないよな?!
俺は早る気持ちを抑えながら、瑛二がここへやってくるのを待った。
********************
「え、瑛二が⋯⋯本当にあのダンジョンから生還したのか?」
柊木は皆から少し離れた位置で、ボソッと呟く。
「『瑛二がダンジョンから生還した』⋯⋯もし、それが本当なら⋯⋯俺たちは⋯⋯」
——十分前『柊木の部屋』
「な、何だと!? く、日下部が帰ってきた⋯⋯だとっ!!!!」
朝、突然『ドンドンドン!』とドアを乱暴に叩く音がしたので開けると、そこには血相を変えた小山田と吉村がいた。そして、部屋に入るなり「瑛二がダンジョンから生きて戻ってきたらしい!」と、二人は青ざめた顔で俺にすがるように声を上げた。
「⋯⋯それで、
「いや、まだ城の中にはいないみたいで⋯⋯。どうやら今、門番の兵士が緊急ということで報告にきたばかりらしい。瑛二たちは他の門番たちと一緒に『王宮の間』に向かっているって言ってた⋯⋯」
少し冷静になった小山田が説明する。
「み、見間違い、勘違い⋯⋯じゃないのか?」
「わからん! だが、もし本当に、瑛二が生還してきたのであれば、俺たちの立場は⋯⋯⋯⋯やばい!」
柊木が『勘違いであってほしい』というような希望的観測な言葉を口にすると、吉村が口で爪をガシガシ
吉村の言う通りだ。もし、本当に日下部があの3階層の崖から落ちて生きて戻ってきたとしたら、絶対に俺たちのことをシャルロットやブキャナンに伝える。そうなれば、いくら実行犯が吉村だとしても⋯⋯あの時、俺と小山田がグルだったことを知った日下部なら、絶対に俺たちのことも告発する!
状況証拠程度なら『吉村にうまく利用された』などと言ってごまかすこともできたが、しかし、日下部本人の証言をごまかすのはおそらく難しい。仮に、ごまかしたとしても日下部の証言からなぞって調査が入れば、いずれ俺たちもグルだったという『真相』に辿り着くだろう。
まずい。
本当に日下部が生きていたら俺たちは⋯⋯⋯⋯終わりだ。
俺が事の重大さに思考を重ねていると、その横で小山田も吉村も『同じこと』を考えているのだろう。ガタガタと震えながら「マズイ、マズイよ⋯⋯」と口ずさんでいた。
「と、とにかく、ここにいても埒があかん! 『王宮の間』へ行くぞ!」
俺は二人に発破をかけて、『王宮の間』へ向かった。
********************
——『王宮の間』現在
「皆様、朝早くからお呼び立てしてすみません。実は、今しがた門番の兵士から『クサカベ⋯⋯様がダンジョンから生還された』と一報が入り、そしてここへ来ることになっています。真偽のほどはまだ定かではありませんが、とりあえず、少しここでお待ちください」
柊木たちが到着するや否や、ブキャナンから皆に早朝の緊急呼び出しの説明がされた。
「ほ、本当なのですか、シャルロット様! 瑛二が⋯⋯瑛二がダンジョンから生きて⋯⋯戻ってきたのですか!」
吾妻はすでに涙を浮かべた顔で、身を乗り出すようにシャルロットへ言葉を掛けた。
「わ、わかりません! ですが、門番の兵士からはそのように聞いております!⋯⋯待ちましょう」
シャルロットは、瑛二が「ダンジョンで死んだ」という話を聞いてから、自分と同じようにずっと部屋に閉じこもっていたという吾妻に落ち着くよう、優しく、しかし力強く言葉をかけた。
——そして
バーーーン!
「し、失礼いたします! ただいま⋯⋯⋯⋯クサカベ様が到着いたしました!」
兵士は勢いよく扉を開けると、周囲にはっきりと伝わるよう大きな声で瑛二の到着を伝えると、そこにいた皆が一斉に扉へと視線を向ける。
兵士が勢いよく入ってきた扉のほうから、コツコツと乾いた足音がゆっくりと近づくのが聞こえた。そして、
「お久しぶりです、シャルロット様⋯⋯」
一週間前、ダンジョンで命を落としたはずの瑛二が姿を現した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます