第24話024【幕間】「小山田信二と吉村稔はかく語りき」

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ひゃっほい!


「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

https://kakuyomu.jp/works/16816700427239834870



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——小山田信二の場合


 俺の名は小山田信二。


 学校で地震が起きて天井が落ちてきて死んだと思ったら、異世界に転生してた⋯⋯⋯⋯とか、嘘みたいなガチの話。


 そんで、何か『救世主』って言われて、今はその救世主の力を強くするための特訓をしている。あと俺は『賢者』という称号がついていて、それはそこそこレアな称号らしい。マジ、アニメみたいな話。


 これまでの人生は、可もなく不可もない人生だった。とはいっても、俺は自分で言うのも何だが立ち回り・・・・がうまいから、小・中・高とクラスのカーストでは常に普通よりマシなポジションにいた。


 金魚のフンだとかいう奴もいたが、別にそんなのは屁でもねー。損な役回りいじめられっ子になるくらいならな。そんなこと言ったら、瑛二みたいなポジションなんて最悪だ。俺なら惨めすぎて学校なんか行ってられねーよ。


 これまでの人生⋯⋯俺は何の力もなかったから、何とかうまいこと立ち回って敵を作らないような頭を使っていたが、そんな人生、面白いわけがねー。


 もし、俺がケンカが強かったらもっと生きたいように生きていたっつーの! 生意気な奴は拳で黙らせてな! でも、現実はそうじゃなかった⋯⋯⋯⋯これまではな。


 だが、今は違う。


 俺にはがある。


 少なくとも、この世界の人間よりも特別な力があるし、鍛えればすぐにレベルが上がるほど成長も早い。


 何よりも、レベルが上がると目に見えて変化が起こるのが最高だ。腕力はメチャメチャ上がるし、動きもビックリするほど早く動けるようになった。これまでの俺に比べたら信じられないような身体能力が身についた!


 しかも、それだけじゃない。魔法だって使える! 漫画のように手から冷気のようなモノが出て、相手を凍らせることもできた。


 柊木や吾妻は俺よりももっと戦闘に有利な能力があるようだが、俺は俺ですげー能力があることがわかって興奮した。実際、周囲からも「すごい成長スピードだ」と褒められまくりだ!


 俺は正直この世界にきてよかったと思った。なんせ、俺がずっと求めていたを手に入れることができたんだからな! その上、俺には本来持っているうまいこと相手を利用できる話術や立ち回りのすべもある。


 周囲を利用して⋯⋯⋯⋯絶対に成り上がってやる!



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 転生から二週間経った頃、ダンジョンでの特訓が始まった。


 特訓開始後、しばらくすると吉村から『瑛二を殺す』という話を聞かされることになるのだが、俺はその時かなり驚いた。⋯⋯というのも俺の予想通り・・・・・・の展開となったからだ。


 実は吉村がその話をするから吉村が瑛二に対して『特別な恨み』を持っていることに気づいていたので、柊木に「もしかしたら吉村が瑛二に対して何らか・・・の制裁を加えるかも⋯⋯」と話をし、もし吉村から『協力』を打診されたら『吉村が主犯』という形で乗っかろうと話をしていたのだ。


 しかし、まさか『殺す』ということになったのは驚きだったが⋯⋯。


 結果、俺と柊木が吉村の話を聞いた時、柊木の方を見ると柊木も前に俺が話をした『吉村が主犯という形で乗っかる』ということを覚えていたようで、お互い、アイコンタクトをすると『吉村が主犯』という形で協力するという『理想どおり』の展開となった。


 そして、吉村は本当に瑛二を殺した。


 個人的には瑛二に対してムカつくことはあったが、別に殺すほどではなかった。


 しかし、吉村が異常に瑛二にムカついていたのと、あと、柊木も予想以上に瑛二に怒りを持っていたので、俺は「面白そうだな」と思って話に乗っかった⋯⋯その程度だ。


 ただ、驚いたのは、人を殺す・・・・というのはさすがの俺も引くと思っていたが、実際はそうでもなかった。


 まー、吉村がほとんど単独で瑛二を殺したってのもあると思うが、瑛二が吉村に崖から落とされたのを見た時、俺は「うお、マジで落としやがった!」くらいの反応だった。


 自分でも「麻痺しているのか?」とも思ったが、まあ、この世界は『魔物』とかいう人間を襲う生き物がいるくらい人は簡単に死ぬ世界⋯⋯『命の軽い世界』だ。


 そんな世界で、人を殺しても動じないことがわかった俺は「この世界で生きていけるな!」と、瑛二を殺したおかげで逆に自信を持つことができた。


 そういう意味では、瑛二の死は無駄じゃなかったということだ。


 まあ、あまりにも不憫だけどなw



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——吉村稔の場合


 俺は吉村稔。


 この召喚された異世界で『英雄ヒーロー』として、歴史に名を刻むものだ。


 俺がこれまでいた世界はクソゲーだった。


 そして、そのクソゲー世界での俺はただの一般人モブだった。


 しかし、クソゲー世界それもも、モブこれも、今のこの異世界へ召喚されるまでの『プロローグ』に過ぎなかったのだ!


 召喚された俺たちは『異世界の救世主』という存在で、日下部以外は皆、特別な称号と能力を持っていた。ゲーム、漫画、アニメ、ラノベを網羅する俺はすぐに皆の能力と自分の能力を『分析』した。


 その結果、今の時点・・・・で総合的に一番のチートはリア中の柊木拓海だった。その次が不良の吾妻翔太か委員長の古河美咲で『大魔道士』の俺はその次くらいだ。称号とステータスを見る限り、俺は『魔法特化』であることはすぐにわかった。


「いいぞ!」⋯⋯⋯⋯俺は自分のステータスを見て手応えを感じた。


 物理優先な称号やステータスだと、ゲームの中の話ならともかく、現実であれば、運動センスのない俺には不利だったからだ。しかし『魔法』なら⋯⋯⋯⋯俺のゲームやアニメなどの知識が活きるのは間違いない!


 ただし、今の『序盤』はまだステータスが低いし、集団行動なのでまずは慎重に進めるのが一番である。


『表ではできるだけ目立たないようにし、裏では周囲を出し抜いて力をつけていく』⋯⋯⋯⋯これが、俺のこの世界の序盤での攻略方法処世術となるだろう。


 序盤のレベルアップが終われば、クラスメートこいつらから離れ、俺の仲間を増やして勢力を拡大していく。そして、強大な組織を作っていき、最終的には⋯⋯。


 フフフ、最高だ。俺の理想の世界を作ってやる!



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「瑛二、あの無能⋯⋯マジで邪魔だっ!!!!」


 俺は日下部瑛二に猛烈にムカついていた。


 俺の『シャルロットたん』とやけに仲が良いのだ。


「はぁ? 無能なクズステータスのお前が何、チョーシこいてんの?」


 俺は、日に日にシャルロットに声をかけられ、ニヤニヤしている瑛二を見て、我慢できなくなっていた⋯⋯⋯⋯ああ、こいつはもう殺す・・しかないな、と。


 だって、そうだろ?


 俺のフィアンセ・・・・であるシャルロットたんとイチャイチャしてんだから。


 ということで、俺は瑛二を殺すことに決めた。


 あいつは無能な奴なので、あいつがいなくなったところで誰も困らないし、誰も悲しまない。むしろ、あいつのせいで俺はストレスを抱えていると考えれば、これは『国益を損なっている』と言っても過言ではないだろう。


 なんせ、俺は『救世主』であり、後に『この世界の英雄になる男』だからな。


 そうして、俺は同じように瑛二にムカついている柊木と小山田に「瑛二を殺す」ことを話した。すると、予想通り、話に乗ってきた。


 まだ非力な序盤は仲間との共闘が必要だ。それには、まずこの二人に信用できる仲間だと思ってもらう必要がある。


 こいつらがどんな人間か知らないからどういう扱いされるかわからんが、俺を害するような奴らならいずれ殺せばいいだろう。それまで辛抱すればいい。とにかく、今は共闘してくれる頭数・・が必要だ。贅沢は言ってられん!


 その後、ダンジョンで俺は計画通りに瑛二を殺した。


 柊木の小山田も俺の計画通りにちゃんと動いてくれた。やはり、二人とも使えるだ。しばらくはこの関係を維持しながら利用していこう。


 しかし、その後、瑛二の死をシャルロットたんに報告するところで、柊木がスタンドプレーに走った。


 柊木拓海あの野郎〜⋯⋯『瑛二の死』を利用して、うまいことシャルロットたんに取り入りやがった。ぐぅぅぅぅ⋯⋯柊木拓海、あいつは許さん。


 今はチートステータスで差が開いているが、いずれ、俺が出し抜いてあいつより強くなったら絶対に⋯⋯⋯⋯殺してやる。


 まあ、いずれ、シャルロットたんは俺のモノ・・になるのだ。今はあせらず、落ち着いて動いて行こう。


 待っててね、シャルロットたん。


 チート無双になったら迎えにいくからね。

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