旅行3日目 それでも人は夢を見る

 前話にも書いた通り、旅行3日目は朝から性行為にはげんでいる。ただ、そうすると大変になってくるのが勿論、事後である。


 性行為と言えどもやっている事は互いの身体を使った組体操なのだから、励めば励む程に汚れは溜まる。それは直接的な精液等による汚れがなかったとしても、生理現象として汗をかくのだから当然だろう。そして、その状態のままで1日を始めたいとは思えない。それならば、どうするか?


「朝はもう、時間ないんだからねっ!」

「それが分かっているから、こうやって2人で入って時短してるんじゃないの。」

「絶対嘘だ、ゆうさんが一緒に入りたいだけだ……。」


 当たり前だが、お風呂に入ればいいのである。つまりはそう……今回はお風呂サービス回にまつわるお話だ。


◇◇◇


 これはなにも僕だけに限った話ではないと思うのだけれど、恋人と過ごす上で『憧れるシチュエーション』と言うのが幾つかないだろうか。

 それは『コスプレ彼女との性行為』であったり、或いは『彼女の手料理を食べる』であったり。そして、それらと同様に代表的なのが『彼女と一緒にお風呂バスタイム』だろう。


 普段のみーこは恥ずかしがりである為、『一緒にお風呂入ろう』と誘っても入ってくれない。しかし、旅行も3日目となり、朝から痴態ちたいを晒したことでみーこの羞恥しゅうちのハードルは下がっていた。ここまで下がりきれば大抵の事はやってくれるのである。


「だいたい、なんでゆうさんは一緒にお風呂入りたがるの?」

「えぇぇ、分からないかなぁ?」

「分かんない。 だって、1人の方が落ち着いて入れるもん。」


 なんとまぁ性行為後の余韻が台無しになる冷たさであるが、例えホテルだろうと個室のお風呂場は何処もそれほど広くないのだからそう言われてしまうのも仕方がないだろう。それに1個しかないシャワーを交互に使う事になるので、実際にはあまり時間短縮になっていない。お風呂後のドライヤーでも順番待ちが発生する事を考えれば尚更だ。


「僕のことは気にせず、落ち着いて入って良いんだよ?」

「落ち着いて入るにはゆうさんの手が邪魔だから。」

「そんな馬鹿なっ! むしろ手伝っているつもりだったんだけど?」


 一緒のお風呂バスタイムには性行為とはまた違った楽しみがある。

 まずなによりも、『彼女を洗うため』と言う大義名分を掲げるだけでその裸体を明るい中でまじまじ見れるだけでなく、堂々と触って良くなるのだ。この時点でもう楽しくないわけが無い。

 ましてや、2人で共に浴槽に浸かるともなれば否応無く密着することになる。無論、密着することに否があるわけも無い。なんなら、敢えて『当ててんのよ』をやるのもやぶさかでは無い。そして、手を伸ばせば何時でも彼女の肢体に触れられるのだから、湯船に浸かって『極楽』と言った先人の気持ちがよく分かる。


「ゆうさん、また大きくなってるんだけど……。」

「みーこちゃんが刺激するから……。」

「してないけどっ!?」


 お風呂中は常に視覚が刺激されているのだよ、視覚が。第2ラウンドのゴングは早そうである。



 とまぁ、ここまで魅力的な彼女とのバスタイムをご紹介してきたが、ここで最後に重大な欠点をお伝えしようと思う。


 『彼女と一緒にお風呂』は誰もが憧れるシチュエーションの1つだと思うのだけれど、その発展形である『彼女とのお風呂中に性行為』は実の所……現実的では無い。

 と言うのも、性行為を気持ちよく楽しむための潤滑油精液が水に流されてしまうので、性行為できる状態ではないのだ。


 そんな状態で無理に出し入れしようものなら抵抗感が半端ないし、女性の膣内を傷付けてしまう可能性だってある。つまり、彼女とのお風呂中は彼女の裸体と触り心地を堪能しながらも、本番行為はお預けなのである。

 『お風呂での性行為』をサブカルチャーではぐくまれた紳士淑女にとって、この生殺しは相当堪えるだろう。残念ながらお風呂場での性行為は概ねフィクションなのである。



 ちなみに、同様の理由から恋人に挿入する際には男性の凸も濡れていた方が女性の負担は少ない。濡らす手段は幾つかあるが、直ぐに全部を入れようとするのでは無く、最初は女性の凹と男性の凸で軽いキスを交わすように浅瀬での逢瀬を重ねるだけでもいい。

 恋と同じでいつの間にか互いに惹かれ合うんじゃないかな。惹かれ合うと言うか、引かれ合うのは赤い糸じゃなくて精液だけど。



 尚、それでも『どうしてもお風呂場で性行為がしたい』と言うのであればローションを使用すれば可能ではあるが、そこまでしてしまうと体を綺麗にするためのお風呂場で汚れてしまうのだから本末転倒である。

 まぁ、それでも『それならお風呂場で性行為しないのか』と問われれば、勿論するわけだけど。仕方ないよ、だって憧れだもの。

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