しょの9「男子クラスと進少年の懺悔」について

むかし、昔。

私が高校三年生の時。


二学期の初め。

9月生まれの進少年は。


もうすぐ、18歳。

17歳の青春まっさかり。


ああ、17歳。

何と、甘美な響き。


あの頃に戻りたい。


話、変わって。

早っ・・・。


後期のクラス委員を決めていました。


前期のクラス委員は。

何と、私です。


それは。

決して、成績が良いわけではなく。


単に。

面倒だったから。


ここで。

我が校の男子クラスについて。

少し、説明します。


一応、進学校だったので。

当時は男子が多めでした。

今は、違うそうです。


10クラスの内。

2つが男子クラス。


進少年。

見事に。

1年から男子クラス。


1年の終わりころ。

私は職員室に日参しました。


「又、お前か?」

学年主任のイヤそうな顔。


「そんなの、約束できるわけ、ないだろ?」

「でもっすねぇ・・・。」


食い下がる私。

少し作ってますが、実話です。


進少年は、数学が得意科目でした。

今みたいに、おバカな小説を書いていたわけでなく。


シンプルに将来は理系の大学だと。

そう、思っていました。


だから。

3年生は理系のクラス。


何と、確率6割で。

男子クラスに当選。


「いやぁっ・・・・。」

異世界で襲われるヒロインの如く。

毎夜、悪夢にうなされるのです。


3年間。

男子クラスだと。


「進藤君・・・。」

上目遣いで見つめる女子も。


「進藤、これさぁ・・・?」

乱暴に声かけるツンデレも。


何もない。

ナッシングなのです。


結局。

学年主任がニヤついている前で。


掲示板を呆然と眺める進少年。

2-A。(A、Bが男子クラス)


「はいっ、おめでとう・・・。」

「これで修学旅行も男ばっか・・・。」


J組に移った安田が、幸せそうに肩をたたきました。


事実。

修学旅行の四国、九州では。


男だけのバス。

男だけの新幹線。

男だけの・・・。


まぁ、それなりに楽しかったですけどね。


話、変わって。

クラス委員。


いつもながらの長い前振りと脱線。


何故、私がクラス委員だったかというと。


どうして?

何も取り柄のない、平凡な私が?

(声を裏返して・・・)


・・・と。

昔の少女漫画の話ではなく。


単に、面倒だからだったのです。


だってねぇ。

4月ですよ。


他のみんなは、新鮮みたいで。

男子クラスが。


たっぷり、女子高生の匂いを嗅いだ少年たち。

(ちょっと、エロい?)


瞳を、輝かせてます。


「俺、男子クラスに、なっちたよ。」

「ヤバイ、ヤバイ・・・。」


男子校や女子高の方々なら。

わかってくれますよね?


何だかなぁ。

なのです。


「よし、窓際の席、とったぁ・・・。」

とか、はしゃいでいます。


卒業アルバムを見てもらうと。

私は最前列のど真ん中。


先生の教壇の真正面の席でした。

視力、悪かったしね。


大体、席替えで盛り上がる神経がわからない。

中学の時は、ときめきましたよぉ。


可愛いあの子の隣に。

結構、祈っていました。


でも。

男子クラスですから。


誰が、隣でも同じ。

同じなのです。


それで。

クラス委員選挙。


「では、まず推薦で・・・。」

担任が言うが、真っ先に手をあげました。


「はい、進藤君。」

「私、立候補します。」


はい。

それで、満場一致でクラス委員。


5秒で決まりました。

副委員は私が適当に決めて。


さっさと、終わらせました。

特に使命感でもなく。


3年だから、生徒会等の仕事もすくなくて。

「起立、礼。」

だけ、毎日やるくらいなので、良かったのです。


やっと、話が冒頭に戻ります。

二学期のクラス委員を決めなくては、いけません。


さすがに、後期もやる気のない私は。

「では、誰か、立候補する人は・・・。」


「ええっー・・・マジかよぉー・・・?」

「お前、やれよぉ・・・。」


暫らくざわついて、収拾つきません。

私のコメカミがひくひくしてます。


ここで。

業を煮やした私が。


ああ、神よ・・・・。

全てを思い出した私は。

懺悔をします。


「赤毛のアン」で主人公がしたように。

リンドおばさんの家のテラスで跪いたように。


今でも。

青春の傷跡が。

深く、心に残っています。


「スミマセン、スミマセン・・・。」

何度、数えきれないほど、後悔したことでしょうか。


今から話す。

極悪非道な行いは。


全国の進ちゃんファンを。

幻滅させることでしょう。


でも。

敢えて、告白します。


私の罪を。

私の非道を。


「では、誰かを推薦してください・・・。」

前期の私の時は5秒で終わったことが。


後期の今回は既に30分が経過していました。

しかし、ようやく二人の候補に絞られました。


無理やり、推薦されるくらいだから。

チョッと、地味目の二人です。


一人は角田君。

眉毛が濃い、中肉中背の男の子。


もう一人は。

荒川?荒谷?

えーっと・・・。


とりあえず、荒●にしておきましょう。

押し入れから卒業アルバム出すの、面倒だし・・・。


この時点で。

賢明な皆様は。


私の懺悔が。

いつものように。

いい加減なことに気づいたかもしれません。


でもでも。

後悔していることは、本当。


今でも。

胸が締め付けられるのです。


言い忘れたけど。

荒●君は、天然パーマ。

今から思うと、可愛い少年でした。


「それでは、角田君と荒●君のどちらかを選ぶ、選挙をします。」


黒板に二人の名前を書きつける私。

選挙用に投票用紙を作ろうか、少し考えました。


その時。

思ったのです。


「何で、そんな面倒なこと、する必要がある?」


挙手で済ませることも、あったのですが。

又、人の顔色うかがったり。

つまんないギャグ、飛ばす奴もいるかもしれません。


ここは男子クラス。

3年連続は私とあと、二人くらいしかいないのです。


他の奴らは。

JとかHとか変な名前のクラスで。

女子高生の匂いをクンカクンカ、嗅いでいた(エロい?)奴らなのです。


進少年の顔が変貌していきます。

悪魔の如く、口が裂け。

赤い舌をニョロニョロと。


ああ・・・神様。

(もう、ええっちゅうの・・・。)


お約束のボケはおいといて。

今から、罪を告白します。


悪魔に心を売った私は。

高々と右手を上げて、宣言したのです。


その手には。

黒板消しが握られていました。


「この黒板消しを先に取ってきた人が・・・・。」

ああ、今でも後悔する、あのセリフ。


ほんの、ほんの出来心。

無邪気なオフザケだったのです。

(テヘッ・・・。)


「クラス委員は、免除されまぁーす・・・。」

極悪非道の宣言。


何の、根拠もなく。

「ふざけんなよ、進藤!」


その一言で。

一笑にふされたハズ。


なのに。

ああ、なのに。


角田君と、荒●君は。

とても・・・。

素直、だったのです。


私が無常にも。

教室を出た廊下の窓から。

黒板消しを下に落としました。


3年生の教室は3階に位置します。

軽い放物線を描いた黒板消しは。


校舎前のアスファルトに一旦、跳ねた後。

校舎側の植え込みに。


ボソッと。

落ちました。


クラス中の生徒が。

廊下の窓から歓声を上げる中。


角田君と荒●君は。

ダッシュで階段を駆け下りていきました。


まるで。

ハリーポッターのフォグワース代表を。

応援するかのように。


クラスの奴らは。

歓声とヤジを飛ばしています。


よく、考えてみると。

こいつらも、相当ひどい。


私は、あまりのことに呆然と。

しなくて、一緒に窓から歓声上げていました。


みんな、ゲラゲラ笑っています。

他のクラスの生徒達が何事かと、出てきています。


そこで。

角田君と荒●君。


先に着いたのは、角田君。

黒板消しを拾って。

ガッツポーズをしています。


その時。

荒●君。


ナイスタックル!


植え込みに。

二人、倒れ込みます。


その後は。

二人、つかみ合うは、殴り合うは。


教室に戻った時の。

二人の姿は。


角田君の顔は血だらけで。

学ランのボタンは全部、取れてました。


荒●君のアフロは、

汗と涙でペッタンコに。


ああ・・・神様。

どうか、どうか、お許しください。


黒板消しを受け取った私は。

楽しそうな声で、勝者をたたえたのですから。


≪ひっでぇ~・・・。≫


皆様の心の声が聞こえます。


でも。

もっと、ひどい事は。


私は、どちらが勝ったのか。

覚えていないのでした~!


テヘッ・・・。(^o^)

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