大聖女エルサーシアの復活~その者、青きパンツを履きて金色の野に降り立つべし!

おじむ

第一部 第一章 聖母イリュパー

*第1話 精霊文明の崩壊

かつてこの星には精霊が居た。


人々は精霊と契約を交わし、魔法を行使していた。

日常の生活はもちろんの事、時には戦争に於いても魔法ありきの世界。


そんな世界に一人の少女が現れた。


彼女の名はエルサーシア。

人型の精霊ルルナと契約して史上初の聖女となった。

彼女の魔力は他に類を見ない程に強力であり、

尚且なおかつ多彩であった。


その力は容易たやすく国を亡ぼしてしまう。

人々は恐れると共に崇拝すうはいした。


彼女の娘たちもまた人型精霊と契約し、

聖女の血統けっとうは代々に受け継がれて行った。


数千年の時が流れ、幾つもの血脈けつみゃくに分かれて、

聖女と人型精霊の数も充分に増えた。


聖女や人型精霊と親しく触れ合う事で精霊との親和性が高まった人類は、

やがてこの世のことわりの根源である観念世界の存在を感じられる様になった。


社会は安定し、高次的な存在との直接対話を望む様になった人類は、

種の進化の最終段階に入ろうとしていた。


あと一歩であった・・・


あとほんの数万年で人類は観念世界のネットワークとコンタクト出来る筈であった。

生身の肉体を持ちながら精霊と同等の存在に。


もし彼女が生きていれば・・・


彼女の魔力ならば防げたかも知れない。

エルサーシアとルルナは特別だった。

けれど彼女達は遠い過去の物語。

伝説の中の存在だ。


超新星爆発によるガンマ線バースト。

同じ銀河系に属する恒星でそれが起こった。

その放射が太陽を直撃したのだ。

ほんの僅かだが太陽の活動が活発になった。


しかしそれだけでも十分な変化を起こす。

大規模な気候変動が百年単位で続いた。

気温は上昇し、大地から氷が消えた。


ガンマ線放射の余波でオゾン層が破壊され強烈な紫外線が地表を襲った。

それは遺伝子の損傷や変異を誘発する。


人と精霊とを結ぶ遺伝子。

ミトコンドリア精霊遺伝子が壊れてしまった。

人は精霊を認識する事が出来なくなった。


超大型の嵐で建造物は破壊され、

精霊の加護を失った人類は絶滅寸前に追い込まれて行った。


文明は崩壊した。


やがて激動期が終わり、数百年振りの平穏が訪れたが、

生き残った人類は僅かだった。


技術は殆ど失われた。

狩猟採集社会からのやり直しだ。


そして更に数千年が過ぎ去り、ようやく初歩的な文明社会が芽生えて来た。

国家と言えるものはまだ無い。

部族社会が中心の世界だ。


通貨と言うものも無く、物々交換が取引の基本となる。

特に重宝ちょうほうされるのは古代遺跡から発掘される武器や陶器類だ。


どうやって作るのか?

さっぱり分からない・・・

だから貴重なのだ!


遺跡を発見し、そこを占有する。

そこが部族の集落となる。

大きな遺跡は何世代にも渡ってその部族を養う。


その遺跡は、とにかく大規模であった。

また発掘品も多く、品質も高かった。

ここを拠点とするギヤマン族は大勢力となった。


***


いつものように水浴びをしようと泉にやって来た族長の娘

イリュパーは腰を抜かしてしまった。


う・・・浮いている・・・

泉の上に・・・人が・・・

浮いている・・・


「あ・・・貴女は・・・」

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16818093076968719731


見た事も無い服を着た女性だ。

でもとても奇麗で見惚れてしまう。

物凄く驚いたけれど怖くは無い。


「うん!大丈夫そうだね~ちゃんと見えてるね~」

「???」

「いやぁ~五千年も掛かったよぉ~

まだ不十分だけど使えるレベルだね~」


「あの・・・何を?」


「あぁ~自己紹介しないとね~私はハニー。

精霊のハニーって言うの。よろしくね~」


「精霊!!!」


おとぎ話で聞いた!

古代遺跡の時代に居たと言う精霊!

本物か?


でも浮いているし・・・


「どうして・・・」

「うん?何?」

「どうしてパンツ丸見えなんですか?」


だって精霊だもの~~~

お約束~~~~~~~~

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